盲目エルフは異世界勇者と旅をする

茜色蒲公英

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堕ちた英雄

よくある変身

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合図もなしに攻撃してきたリトスに一度距離をとる隆。
リトスは追わずその場で構えていた。

「最初から不意打ちってまともに戦う気ないのか?」

「戦いに卑怯なんて言葉ないからね。ほら、早くかかってきなよ」

言われるまでもない。
と隆は声に出さずリトスに向かって走った。
声に出せば位置が分かって返り討ちに会うことを理解しているからだ。

しかし地面には草が生えていた。
ラルア達もリトスの邪魔にならないよう無言でいたため結果隆の拳は大きく外れ後頭部に重い一撃が入った。
倒れた隆に鉄球をまた振り下ろし動かなくなって決着がついた…かのように思われたが隆が人間ではできないような動きをして後ろへ跳んだ。

「ほぅ。頭を砕かれてもあのような動きができるのか」

(それもそうだけど以前よりも再生速度が速くなってる気がする。何かあったのかな)

隆はまたリトスに向かって走り、避けられないほど近づくがリトスは体を半回転させ武器を持っていない手で隆を殴った。
だが怯まなかった隆がリトスの腹へ回し蹴りをするとその場に崩れ落ちてしまった。

「あいつ!女の腹に蹴り入れやがったな!」

「行くでないヒメ。リトスが1対1でやると言ったのだぞ」

腹を押さえてせき込むリトス。
隆はリトスの首を持って持ち上げ、笑っていた。

「俺を倒すとか言った割には弱いな。どうせ見えてた時も離れたところから狩ってたんだろ?」

言葉を返そうにも苦しくて声が出ないリトス。
隆が投げつけて腹の上に乗りかかり、顔を殴ろうとしたその時、隆の鼻から上は消えてなくなり体は貫かれリトスの体はティアマトのいる場所へと引き寄せられた。

「そのくらいにしておけ。といっても聞こえておらんか。おぬしらやりすぎじゃぞ」

「クズ野郎にはこれでも甘いくらいだよ。再生したら柄頭で顔中の骨砕いてやる」

(あんなのが僕たちの仲間だったとはね…正直戻ってこなくてもいいんじゃないかって思えてきたよ)

ティアマトがリトスに回復魔法をかけている間に隆の再生が終わり、隆はポケットから何かを取り出した。
隆が何か独り言を言っているようだが遠くにいるためdれにも聞こえていない。
ラルアも心を読もうとしたが何も聞こえなかった。

「あいつ何か持ってない?赤い宝石みたいな…宝石にしたら大きすぎるけど」

「赤い宝石じゃと?それより妾回復が苦手だから手伝ってほしいんじゃけど」

(僕回復魔法本でしか読んだことないから無理だよ。それよりほら、隆の体が赤い煙に包まれていくよ)

「ほらと言われても集中しておるから見れないんじゃよ!もう大丈夫そうか?」

心配そうにリトスの顔を覗くティアマト。
リトスは小さく頷くと落としてしまった武器を聞いた。

「武器ならあやつの足元に…ってなんじゃアレ」

ラルアの見た赤い煙は雷を纏った竜巻となり、数分ほど消えなかった。
ラルア達を襲うわけでもなく、大きくなるわけでもなくその場にあり続けた。
やがて竜巻が消えるとそこに隆の姿はなかった。
代わりに赤く、大きなドラゴンが二本足で立ち剣を両手に持って佇んでいた。

大きく咆哮を上げ飛ばされそうになるリトス達。
ドラゴンから離れていてもティアマトとはまた違った威圧感を放っていた。

「どうするんじゃアレ?理性のりの字すらなさそうじゃぞ」

(いや、心はあるみたいだ。僕たちを確実に殺そうとしているね)

「困ったな…私武器持ってないんだけど」

「何言ってんのリトス。持っていてもそうでなくてもあんなのじゃ戦力外でしょうが。ラルア、リトスのことよろしく頼んだ」

(一人で行くのかい?)

「それでもいいんだけど……ね?」

ティアマトにウインクをするヒメ。
それに気づいて視線を逸らすティアマト。

「なんでウチの眼を逸らした?」

ティアマトの顎を持ち強制的に目を合わさせるヒメ。

「嫌じゃからに決まっておるじゃろ!」

「へぇ~魔王があんなのに勝てないの?」

「勝てるかそうでないかということではない。よいか?妾はリトスと友達じゃからここまで連れてきたんじゃ。決しておぬしと共闘するために来たわけでは…」

「お願いティアマト。ヒメ一人だと敵いそうにないから」

辛そうにお願いするリトスに一瞬心がおれそうになったティアマト。
しかしドラゴンの放った斬撃が地面を割り、リトス達の横を過ぎるのを見てため息をついた。

「しっっっかたないのぅ!ヒメ!パパっと終わらせるぞ!」

「そういうのウチのいた世界だと死亡フラグっていうんだよ」

駆け出した二人を見送ってなるべくドラゴンから離れるリトスとラルア。

一方ヒメはティアマトから加速魔法をかけられいち早くドラゴンに接近していた。
ヒメに反応してドラゴンは剣を振り下ろし、容易く避けると片腕を切り落とした。

「まずは片腕!」

しかし数秒で再生し、落ちた剣を拾い邪魔だと言わんばかりに薙ぎ払う。

「不死身なのはそのままか。やたら切ってもこっちが疲れるだけだしなぁ…」

「やつの強さは不死身を活かした持久戦にある。じゃから短期戦に持ち込みたい」

「不死身相手に短期戦ね…弱点があればいいんだけど」

「お互いそれを探せばよい。片方が狙われていたらもう片方が弱点探しといこうかの」

ヒメは「了解」と言う代わりにドラゴンの腕に上って駆け上がり、片腕を落とし火を噴いた首も斬り落とす。
ドラゴンは首がない状態でも見えているのかヒメを正確に狙い両腕を切られるのを阻止する。

「頭がないときくらい動かなくてもいいだろうに…」

ヒメが引きつけている間、ティアマトは密かに長い呪文を唱えていた。
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