6人目の魔女

Yakijyake

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第三十八話 お別れ

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 どうにか落ち着いてようやくカトリナさんと交えた腕を解く。ようやく普通の思考ができるようになり、ここでフリッツさんやベールさんを置いてけぼりにしていることを思い出し、急いでダイニングに戻った。
 「ごめんなさい、私のせいでせっかくのお食事会が…」
 頭を下げて二人に謝った。でも、それより今日知ったことを伝えたかった。
 「でも、おかげで知ることができました。『優しさ』というものを。優しさがこんなにも温かく、穏やかなものだということを改めて知ることができました。本当にありがとうございます」
 母が隠していたつらい真実も知った。ずっと隠していたこと、ずっと嘘をついていたことを。それでも母は私に惜しみない愛情を注いでくれた。それは私の身に余るほどに。
 食事の続きをしたり、みんなでお茶を飲んでいるうちにすっかり夜も更けてしまい、ベールさんは帰ることになった。
 荷物をまとめるベールさんのお手伝いをしようと席を立つと
 「ベレッタさん大丈夫ですよ。自分ひとりでできますから」
 と実行する前に断られてしまったから、仕方なく自分の席に座り直した。
 ようやく準備が終わり、みんなで玄関まで見送った。私は、ベールさんに何を言うかは心に決めていた。
 「ベールさん」
 ベールさんはこっちに振り向いた。心なしか悲しそうにも見えた。
 「ありがとうございます。真実を教えてくれて。お陰様で大事なものを知ることができました」
 あまり暗い印象をつけたくなかったから、頑張って笑顔を作って言った。「ありがとう」は泣きながら言うものじゃない。
 ベールさんはそのまま振り返ることなく、ただ
「ありがとう。それと申し訳なかった」
ただそう言って出ていってしまった。「申し訳なかった」にはどんな意味が込められているのだろう。嘘をついたこと?それとも母を救えなかったから?どちらにせよベールさんには落ち度はない。あまりそれに関して気を張っていないといいけど。
「気にしないでください」
 そう伝えようと思ったころにはもう姿すら見えなくなってしまっていた。
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