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第6章:触れたくて、すこし怖い
秘密に触れるとき03
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「それよりこれはどうするんだい?」
ふと、今まで大人しかったセラジェルが、シェンと僕に声をかけた。
差し出された右手にはキラキラを発光する鱗が乗っかっている。
「……これは申し訳ないけどシェンの方で管理してくれないか?」
ううっ……。
好きな人の為に用意したプレゼントを返されるなど、男として悲しすぎる。
もし僕がスーちゃんに言われたら、苦い思い出となりトラウマになるだろう。
だからといって、シェンの顔を立てて「いただくね」とは言えなかった。
人間でも、龍人の鱗が貴重であることを知っている者は多い。それが厄介なのだ。
人間と他種族の関係が冷え切ってからかなりの時間が経過したのもあり、誤った知識を持ち、伝説のように鱗を特別視する者がいてもおかしくはないから。
それにまあ、実際にチートみたいなものだし?
執着した者達による争いが起きないためにも、返さざるを得ない。さすがに龍人を相手に強奪しようだなんて、愚かな者はいないだろうから。
どうやら僕の懸念はシェンやセラジェルも同じようで、二人が納得したように頷いた。
「そうだな。では、我が持つとしよう。……して、お主はもしや妖精族の泣き虫な子供——」
「うおっほん!」
セラジェルが言葉を遮るように大きく咳払いをする。ずっと静かだったのは、どうやら二人が既知の間柄だったからのようだ。
シェンは今なんと言った?
「妖精族の泣き虫な王子」とは物凄く気になるじゃないか。
ネズミを見つけた猫のように目を輝かせると、視線が交わるなりセラジェルはプイっと顔を背けた。
「何その面白そうな話。泣き虫ってどういうこと? シェン教えてよ」
「そうだな、あれは」
ふむ、と顎に手をあてたシェンが、思い出すように口を開く。
どうやら興味があるのは僕だけではないようだ。サナ皇后やレーヴ陛下も興味を示していた。
だが、続きを語ろうとしたシェンの鳩尾に、セラジェルの頭がめり込む。容赦のない頭突きを受けたシェンはくぐもった声を上げた。
体を折り曲げて悶えるシェンを、セラジェルが冷々とした微笑を浮かべて見下ろす。
「もしもキミが話したら、他の龍人がわざわざ妖精国にまで買いに来るお酒の販売を止めるとしよう。そして原因は水神に仕える君のせいだ、と言うつもりだ」
「なんて恐ろしいことを言うのだ! 我が一体何をしたという!」
「まだなにもしていないよ。これからの君次第だ」
セラジェルは本気のようだ。いつもならきゅるんとした瞳に、輝きがないのだから。
あーあ、これじゃあ、今は聞けないな。
後でこっそりと聞くことにした僕は身を引くことにした。そこでようやく輪の中にスーちゃんの姿がないことに気づく。
周囲を探すと少し離れた先で、なぜか馬車に乗り込もうとする姿を見つけた。僕もそっと会話から外れると、慌ててスーちゃんの元へと駆け寄った。
「スーちゃん! どうしたの?」
こちらに気づいて振り返る。その顔を見て、僕は思わず目を瞠った。
眉根を寄せたスーちゃんの眦は赤く染まり、気だるげな色香が表情を艶めかしく見せる。それだけでなく、本能を呼び起こすような甘い香りが、僕の鼻孔をくすぐった。
惹きつけるような香りにいざなわれて、知らぬ間にスーちゃんの顔へと手が伸びる。
しかし、あと少しで届きそうになった時、パンっと冷たい音をともない、僕の手は叩き払われた。
ふと、今まで大人しかったセラジェルが、シェンと僕に声をかけた。
差し出された右手にはキラキラを発光する鱗が乗っかっている。
「……これは申し訳ないけどシェンの方で管理してくれないか?」
ううっ……。
好きな人の為に用意したプレゼントを返されるなど、男として悲しすぎる。
もし僕がスーちゃんに言われたら、苦い思い出となりトラウマになるだろう。
だからといって、シェンの顔を立てて「いただくね」とは言えなかった。
人間でも、龍人の鱗が貴重であることを知っている者は多い。それが厄介なのだ。
人間と他種族の関係が冷え切ってからかなりの時間が経過したのもあり、誤った知識を持ち、伝説のように鱗を特別視する者がいてもおかしくはないから。
それにまあ、実際にチートみたいなものだし?
執着した者達による争いが起きないためにも、返さざるを得ない。さすがに龍人を相手に強奪しようだなんて、愚かな者はいないだろうから。
どうやら僕の懸念はシェンやセラジェルも同じようで、二人が納得したように頷いた。
「そうだな。では、我が持つとしよう。……して、お主はもしや妖精族の泣き虫な子供——」
「うおっほん!」
セラジェルが言葉を遮るように大きく咳払いをする。ずっと静かだったのは、どうやら二人が既知の間柄だったからのようだ。
シェンは今なんと言った?
「妖精族の泣き虫な王子」とは物凄く気になるじゃないか。
ネズミを見つけた猫のように目を輝かせると、視線が交わるなりセラジェルはプイっと顔を背けた。
「何その面白そうな話。泣き虫ってどういうこと? シェン教えてよ」
「そうだな、あれは」
ふむ、と顎に手をあてたシェンが、思い出すように口を開く。
どうやら興味があるのは僕だけではないようだ。サナ皇后やレーヴ陛下も興味を示していた。
だが、続きを語ろうとしたシェンの鳩尾に、セラジェルの頭がめり込む。容赦のない頭突きを受けたシェンはくぐもった声を上げた。
体を折り曲げて悶えるシェンを、セラジェルが冷々とした微笑を浮かべて見下ろす。
「もしもキミが話したら、他の龍人がわざわざ妖精国にまで買いに来るお酒の販売を止めるとしよう。そして原因は水神に仕える君のせいだ、と言うつもりだ」
「なんて恐ろしいことを言うのだ! 我が一体何をしたという!」
「まだなにもしていないよ。これからの君次第だ」
セラジェルは本気のようだ。いつもならきゅるんとした瞳に、輝きがないのだから。
あーあ、これじゃあ、今は聞けないな。
後でこっそりと聞くことにした僕は身を引くことにした。そこでようやく輪の中にスーちゃんの姿がないことに気づく。
周囲を探すと少し離れた先で、なぜか馬車に乗り込もうとする姿を見つけた。僕もそっと会話から外れると、慌ててスーちゃんの元へと駆け寄った。
「スーちゃん! どうしたの?」
こちらに気づいて振り返る。その顔を見て、僕は思わず目を瞠った。
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惹きつけるような香りにいざなわれて、知らぬ間にスーちゃんの顔へと手が伸びる。
しかし、あと少しで届きそうになった時、パンっと冷たい音をともない、僕の手は叩き払われた。
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