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城門へ続く広場で、永和《ヨンハ》は後ろからぽんと肩を叩かれた。振り向くと驚いた顔の敏栄《ミンロン》が旅姿で立っていて、永和も驚く。
長寧を離れた町で偶然会った二人は顔を見合わせた。
「どうして、永和がここにいるんだ?」
「こっちの科白だ。お前こそ何をしてる?」
「俺は旅の途中なんだ」
敏栄が蘇家の館を出て二日が経っている。
「何を言ってる。お前の立場でそんなほいほいと旅に出ていいわけがないだろう」
呆れた顔をした永和に、敏栄は唇を尖らせた。
「人を箱入り娘みたいに言うなよ」
「お前みたいな箱入り娘がいるか」
「で、お前はどうした?」
「白雲観へ届け物に行くだけだ」
永和は言い捨てて背を向けた。
状況がよくわからないが、永和には永和の用事がある。馬を引いて門衛に身分証を見せる。城門を抜けると、敏栄もすぐに門を抜けてきた。
本当に旅に出たのか? 結婚が決まったはずなのに?
疑問に思いながらも馬を走らせると敏栄も追ってくる。
「婚約したんだろ? ふらふらしていいのか?」
「正直に言うとしばらく長寧を離れようかと思ってたところだったんだ。婚約のほうが寝耳に水だ」
「なぜ?」
「最近、身辺が物騒なんだよな」
「どういう意味だ?」
並走しながら会話が続く。
「出かけると偶然を装って刺されそうになったり、食事に毒物が入ってたり、他にも色々。なんか俺、命を狙われてるっぽいんだよね」
「それは明らかに狙われてるだろ!」
怒鳴られても敏栄は飄々とした態度を崩さない。埒があかないと黙々と追走してくる張康《ジャンカン》に目を向ける。
「張康も知ってたのか?」
「ええ。元々、歓迎されてたわけもなかったのですが、最近はあからさまですね」
「つまり相手が誰か、わかってるんだな?」
「さて、丞相家ともなれば敵は多いので」
張康は肩をすくめ、敏栄は「いちいち気にしてたらキリがないから実害が出ない限り放ってあったんだ」などとうそぶく。
永和は呆れた顔になり、速度を上げた。この二人のほら話を聞いていられないと思ったのだ。馬は嬉々として走り出す。
「あ、待てって」
敏栄が後を追いかけてくる。永和はそれを無視して先を急いだ。
すぐ後ろから同じ道を追ってくる二人のことは放っておくことにした。どうせ近隣の町に何か用事でもあるんだろう。
しかし半刻ほど経って雑木林に差しかかる頃、ふと気配に気づいた。
追手?
後方から複数の馬の蹄の音がする。すっと横に並んできた敏栄がさりげなくつぶやく。
「次の横道でお前は道をそれろ」
「バカを言うな。あれが敵か?」
「巻き込まれる気か? 奴らは結構、腕が立つぞ」
「おれがそんな奴らに負けるとでも?」
じろりと敏栄を睨む。見くびられてムっとした。会わない間、永和がどれだけ修行に打ち込んだか知らないくせに。
話している間にも蹄の音は近づいてくる。
「六騎ですかね」
耳をすませていた張康が言い「いや、馬車もいるようだ」と敏栄が答えた。
「永和、怪我はするなよ。いざとなったら迷わず逃げろ」
言ったと同時に敏栄は剣を抜いた。
「来るぞッ」
「ああ」
剣を構えた男六人が襲って来た。殺気を殺そうともしていない。
長寧を離れた町で偶然会った二人は顔を見合わせた。
「どうして、永和がここにいるんだ?」
「こっちの科白だ。お前こそ何をしてる?」
「俺は旅の途中なんだ」
敏栄が蘇家の館を出て二日が経っている。
「何を言ってる。お前の立場でそんなほいほいと旅に出ていいわけがないだろう」
呆れた顔をした永和に、敏栄は唇を尖らせた。
「人を箱入り娘みたいに言うなよ」
「お前みたいな箱入り娘がいるか」
「で、お前はどうした?」
「白雲観へ届け物に行くだけだ」
永和は言い捨てて背を向けた。
状況がよくわからないが、永和には永和の用事がある。馬を引いて門衛に身分証を見せる。城門を抜けると、敏栄もすぐに門を抜けてきた。
本当に旅に出たのか? 結婚が決まったはずなのに?
疑問に思いながらも馬を走らせると敏栄も追ってくる。
「婚約したんだろ? ふらふらしていいのか?」
「正直に言うとしばらく長寧を離れようかと思ってたところだったんだ。婚約のほうが寝耳に水だ」
「なぜ?」
「最近、身辺が物騒なんだよな」
「どういう意味だ?」
並走しながら会話が続く。
「出かけると偶然を装って刺されそうになったり、食事に毒物が入ってたり、他にも色々。なんか俺、命を狙われてるっぽいんだよね」
「それは明らかに狙われてるだろ!」
怒鳴られても敏栄は飄々とした態度を崩さない。埒があかないと黙々と追走してくる張康《ジャンカン》に目を向ける。
「張康も知ってたのか?」
「ええ。元々、歓迎されてたわけもなかったのですが、最近はあからさまですね」
「つまり相手が誰か、わかってるんだな?」
「さて、丞相家ともなれば敵は多いので」
張康は肩をすくめ、敏栄は「いちいち気にしてたらキリがないから実害が出ない限り放ってあったんだ」などとうそぶく。
永和は呆れた顔になり、速度を上げた。この二人のほら話を聞いていられないと思ったのだ。馬は嬉々として走り出す。
「あ、待てって」
敏栄が後を追いかけてくる。永和はそれを無視して先を急いだ。
すぐ後ろから同じ道を追ってくる二人のことは放っておくことにした。どうせ近隣の町に何か用事でもあるんだろう。
しかし半刻ほど経って雑木林に差しかかる頃、ふと気配に気づいた。
追手?
後方から複数の馬の蹄の音がする。すっと横に並んできた敏栄がさりげなくつぶやく。
「次の横道でお前は道をそれろ」
「バカを言うな。あれが敵か?」
「巻き込まれる気か? 奴らは結構、腕が立つぞ」
「おれがそんな奴らに負けるとでも?」
じろりと敏栄を睨む。見くびられてムっとした。会わない間、永和がどれだけ修行に打ち込んだか知らないくせに。
話している間にも蹄の音は近づいてくる。
「六騎ですかね」
耳をすませていた張康が言い「いや、馬車もいるようだ」と敏栄が答えた。
「永和、怪我はするなよ。いざとなったら迷わず逃げろ」
言ったと同時に敏栄は剣を抜いた。
「来るぞッ」
「ああ」
剣を構えた男六人が襲って来た。殺気を殺そうともしていない。
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