いつまでもここにいて 改訂版

ゆまは なお

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 その間に大人たちの間で会話が交わされ、リュカが優しい目をして言った。
「ひとまず、イノマタアオバの身柄は自警団で預かることになった。言葉も通じないし、外で暮らしていくのは無理だろう。獣人たちの中には気が荒いものもいるし、森で暮らすのは危険が大きい」
 その言葉で熊の男たちに乱暴されかけたことを思い出す。
 思い出すと恐ろしくて身が竦んだ。
 ここは安全なんだろうか?
「ここで?」
「ああ。三階に個室がある。一部屋をイノマタアオバにやるから使うといい」
「でも俺、ここで何をしたらいいんですか?」
 ただで置いてもらうわけにもいかないだろうと訊いてみた。
「そうだな……。イノマタアオバは日本では何をしていた?」
「高校生だったけど」
「こうこうせい?」
 リュカは何かわからないといった表情になる。
「ええと、学生です」
「学生? つまり学者の卵か? それとも占星術師か?」
「いえ、普通の学生……」
「普通の学生とは何だ?」
 学校の説明をしてみたけれど、どうも話が通じない。この世界では学生という身分は一般的ではないらしい。
 碧馬が生まれ故郷では小中学校は義務教育で、ほとんどが高校まで十二年間学校に通い、さらには大学まで行く場合もあることを説明すると、みんな驚いた顔になった。
「二十二歳まで学校に行くって?」
「そんなに長く何を学ぶんだ?」
 どうやらかなり日本とは事情が違うようだ。
「学校はないんですか?」
「あるが、通うのは三年ほどだ。ほとんどが十歳から十二歳で卒業する。仕事をせずにその先に進むのは占星術師か呪術師か魔道士か、いずれにしても師に弟子入りして学ぶものだな」
 その説明に碧馬はさらに途方に暮れた。 
 日本の一般的な高校生だった自分がどうやってここで生活したらいいんだろう。今日の食事だって泊まるところだって、ここに泊めてもらえなかったらどうしたらいいのかわからないくらいだ。
 野宿したらまた襲われたりするんだろうか。でも当分はここにいていいとしても、いつまでいられるかわからない。
 帰る時まで? それはいつ? 
 いや、帰れるかどうかもよくわからない。帰れる方法を探す術すらわからない。
 思わず泣きそうになってぐっと唇を噛みしめた。
 泣いてもどうしようもないし、この年になってこんな大勢の前で泣くのは恥ずかしい。
 碧馬の不安を読み取ったようにリュカが申し出た。
「とにかく言葉が通じないからな。掃除とか食堂の手伝いはできるか?」
「はい、俺にできるなら何でもします」
 どうやら仕事をもらえるらしいと、碧馬は勢いよくうなずいた。
 何もせずにここにいるくらいなら、とにかく体を動かしたほうがいい。
「じゃあひとまず言葉を学びながら、ここで自警団の雑用や手伝いをしてくれるか?」
 最終的に団長のガルダがそう決めて、碧馬は自警団の住込み雑用係となった。
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