7 / 28
1-7
しおりを挟む
その間に大人たちの間で会話が交わされ、リュカが優しい目をして言った。
「ひとまず、イノマタアオバの身柄は自警団で預かることになった。言葉も通じないし、外で暮らしていくのは無理だろう。獣人たちの中には気が荒いものもいるし、森で暮らすのは危険が大きい」
その言葉で熊の男たちに乱暴されかけたことを思い出す。
思い出すと恐ろしくて身が竦んだ。
ここは安全なんだろうか?
「ここで?」
「ああ。三階に個室がある。一部屋をイノマタアオバにやるから使うといい」
「でも俺、ここで何をしたらいいんですか?」
ただで置いてもらうわけにもいかないだろうと訊いてみた。
「そうだな……。イノマタアオバは日本では何をしていた?」
「高校生だったけど」
「こうこうせい?」
リュカは何かわからないといった表情になる。
「ええと、学生です」
「学生? つまり学者の卵か? それとも占星術師か?」
「いえ、普通の学生……」
「普通の学生とは何だ?」
学校の説明をしてみたけれど、どうも話が通じない。この世界では学生という身分は一般的ではないらしい。
碧馬が生まれ故郷では小中学校は義務教育で、ほとんどが高校まで十二年間学校に通い、さらには大学まで行く場合もあることを説明すると、みんな驚いた顔になった。
「二十二歳まで学校に行くって?」
「そんなに長く何を学ぶんだ?」
どうやらかなり日本とは事情が違うようだ。
「学校はないんですか?」
「あるが、通うのは三年ほどだ。ほとんどが十歳から十二歳で卒業する。仕事をせずにその先に進むのは占星術師か呪術師か魔道士か、いずれにしても師に弟子入りして学ぶものだな」
その説明に碧馬はさらに途方に暮れた。
日本の一般的な高校生だった自分がどうやってここで生活したらいいんだろう。今日の食事だって泊まるところだって、ここに泊めてもらえなかったらどうしたらいいのかわからないくらいだ。
野宿したらまた襲われたりするんだろうか。でも当分はここにいていいとしても、いつまでいられるかわからない。
帰る時まで? それはいつ?
いや、帰れるかどうかもよくわからない。帰れる方法を探す術すらわからない。
思わず泣きそうになってぐっと唇を噛みしめた。
泣いてもどうしようもないし、この年になってこんな大勢の前で泣くのは恥ずかしい。
碧馬の不安を読み取ったようにリュカが申し出た。
「とにかく言葉が通じないからな。掃除とか食堂の手伝いはできるか?」
「はい、俺にできるなら何でもします」
どうやら仕事をもらえるらしいと、碧馬は勢いよくうなずいた。
何もせずにここにいるくらいなら、とにかく体を動かしたほうがいい。
「じゃあひとまず言葉を学びながら、ここで自警団の雑用や手伝いをしてくれるか?」
最終的に団長のガルダがそう決めて、碧馬は自警団の住込み雑用係となった。
「ひとまず、イノマタアオバの身柄は自警団で預かることになった。言葉も通じないし、外で暮らしていくのは無理だろう。獣人たちの中には気が荒いものもいるし、森で暮らすのは危険が大きい」
その言葉で熊の男たちに乱暴されかけたことを思い出す。
思い出すと恐ろしくて身が竦んだ。
ここは安全なんだろうか?
「ここで?」
「ああ。三階に個室がある。一部屋をイノマタアオバにやるから使うといい」
「でも俺、ここで何をしたらいいんですか?」
ただで置いてもらうわけにもいかないだろうと訊いてみた。
「そうだな……。イノマタアオバは日本では何をしていた?」
「高校生だったけど」
「こうこうせい?」
リュカは何かわからないといった表情になる。
「ええと、学生です」
「学生? つまり学者の卵か? それとも占星術師か?」
「いえ、普通の学生……」
「普通の学生とは何だ?」
学校の説明をしてみたけれど、どうも話が通じない。この世界では学生という身分は一般的ではないらしい。
碧馬が生まれ故郷では小中学校は義務教育で、ほとんどが高校まで十二年間学校に通い、さらには大学まで行く場合もあることを説明すると、みんな驚いた顔になった。
「二十二歳まで学校に行くって?」
「そんなに長く何を学ぶんだ?」
どうやらかなり日本とは事情が違うようだ。
「学校はないんですか?」
「あるが、通うのは三年ほどだ。ほとんどが十歳から十二歳で卒業する。仕事をせずにその先に進むのは占星術師か呪術師か魔道士か、いずれにしても師に弟子入りして学ぶものだな」
その説明に碧馬はさらに途方に暮れた。
日本の一般的な高校生だった自分がどうやってここで生活したらいいんだろう。今日の食事だって泊まるところだって、ここに泊めてもらえなかったらどうしたらいいのかわからないくらいだ。
野宿したらまた襲われたりするんだろうか。でも当分はここにいていいとしても、いつまでいられるかわからない。
帰る時まで? それはいつ?
いや、帰れるかどうかもよくわからない。帰れる方法を探す術すらわからない。
思わず泣きそうになってぐっと唇を噛みしめた。
泣いてもどうしようもないし、この年になってこんな大勢の前で泣くのは恥ずかしい。
碧馬の不安を読み取ったようにリュカが申し出た。
「とにかく言葉が通じないからな。掃除とか食堂の手伝いはできるか?」
「はい、俺にできるなら何でもします」
どうやら仕事をもらえるらしいと、碧馬は勢いよくうなずいた。
何もせずにここにいるくらいなら、とにかく体を動かしたほうがいい。
「じゃあひとまず言葉を学びながら、ここで自警団の雑用や手伝いをしてくれるか?」
最終的に団長のガルダがそう決めて、碧馬は自警団の住込み雑用係となった。
10
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました
ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。
落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。
“番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、
やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。
喋れぬΩと、血を信じない宰相。
ただの契約だったはずの絆が、
互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。
だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、
彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。
沈黙が祈りに変わるとき、
血の支配が終わりを告げ、
“番”の意味が書き換えられる。
冷血宰相×沈黙のΩ、
偽りの契約から始まる救済と革命の物語。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
人気者の幼馴染が俺の番
蒸しケーキ
BL
佐伯淳太は、中学生の時、自分がオメガだと判明するが、ある日幼馴染である成瀬恭弥はオメガが苦手という事実を耳にしてしまう。そこから淳太は恭弥と距離を置き始めるが、実は恭弥は淳太のことがずっと好きで、、、
※「二人で過ごす発情期の話」の二人が高校生のときのお話です。どちらから読んでも問題なくお読みいただけます。二人のことが書きたくなったのでだらだらと書いていきます。お付き合い頂けましたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる