いつまでもここにいて 改訂版

ゆまは なお

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 異変は突然だった。
 自警団の裏には畑があって、そこでお昼に出すためのトマトを収穫していた時だった。
 朝からなんか少し熱っぽいかも……と思っていたが、急激に体温が上がった気がした。くらくらとめまいがして、目がかすんだように視界が揺れた。
 それが発情したのだとは碧馬にはわからなかった。
 一旦戻ろうとふらつく足を建物に向けたとき、突然足元が崩れた。地面にへたり込んで、何か病気なのかと思う。
 気分は悪くないが、とにかく体がほてっている。
 今まで感じたことのない熱さと体のむず痒さに戸惑っていると、畑の柵の向こうから声が聞こえた。目がかすんでよく見えない。
「ここか、なんだ人族の子供じゃねーか」
「発情してんな、こっちに来いよ」
 その言葉で、この状態が発情なのだとようやく気がついた。
 近づいてくるのは大柄な男二人だ。
 抑制剤は常に身に着けるように言われてペンダントに入れて持たされていたけれど、とても出せる状態ではなかった。
 見知らぬ相手はαなのだろう、ぐっと碧馬を引き上げるとどこかへ連れて行こうとする。
「嫌だ、離せっ」
「んなこと言って、そんな状態で治まらねーだろ?」
「ほらほら、俺らが相手してやるから」
「嫌だってば、離せよっ」
「ほっそい腕だな。ほら、いいから来い」
 男たちは暴れる碧馬をなんなくあしらい、引きずられて畑から連れ出された。
 精一杯足を突っ張って抵抗する。ここに来た日に、熊族の男たちに襲われかけたことを思い出した。
 あの時は、意味がわかっていなかったが、今の碧馬にはどんな状況なのか理解できていた。ここで犯されたら、妊娠するかもしれないのだ。
 あるいはうなじを噛まれて無理やり番になるなんてことになったら。
 それを想像した途端、ぞっと嫌悪感が全身を走った。
 嫌だ、それだけは絶対に嫌だ。
 とにかく必死で手足を振り回し、全身で暴れて抵抗した。
「嫌だ、嫌だっ、離せって」
 意外に暴れまくる碧馬に、男たちは手を焼いていた。
「おい、大人しくしろよ」
「こんなに発情してんのに、何抵抗してんだよ」
「いやだーーーーーーーっ」
 その時、とても甘くていい香りが辺りに漂った。
「おい、その手を離せっ」
「なんだ、お前」
 息を弾ませたリュカが立っていた。
 香りの元は彼だった。
 全力で走って来たのだろう。肩が上下して大きく胸を喘がせている。
「その子の番だ。お前たちもαなら、首輪に俺の魔力が入れてあるのがわかるだろう」
 その言葉に、男たちはちっと舌打ちして碧馬を突き飛ばした。
 いつんのめって転びかけるのをリュカが受け止めてきつく抱きしめた。ほっとして一気に涙があふれる。
「お手付きなら発情期くらい管理しとけよ」
 男たちはそう捨て台詞を残して去っていった。
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