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第八話 ライト殿下の隣の席

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「・・・・・・であるからしてこのリガルド王国に更なる発展をもたらすべく、君達若者に多くの期待をしています。皆さん、良く勉学に励んでください」

アカデミーの学園長の挨拶が終わって入学式は無事に終了した。

各自発表されている自分のクラスに移動するようにとアナウンスがかかり皆が席を立ちだした。
私も立ち上がりSクラスの教室に向かうことにした。

「アリ~シア!」

いきなり名前を呼ばれて足を止めた直後に、後ろからガバっと飛びついてきたのはオルガだった。

「ヤッホ!私Sクラス。アリシアは?」
「私もSクラスよ。良かった、オルガも一緒なのね」

ライト殿下に続きオルガも同じクラスなんて嬉しいわ。知り合いがいるってありがたいもの。

「あれ!?殿下は?」
「・・・・・・それがね。朝会ったのだけどちょっと用事があるそうで一緒に入学式の会場には行けなかったの。会場は前からどんどん詰めて座っていたから殿下と離れ離れになっちゃって今に至るってわけ」
「そうだったんだ」

ガラッとSクラスのドアを開け室内を見渡したところまだ一人しか来ていなくて、ライト殿下はいなかった。

黒板に貼られた座席表を頼りに自分の席を探す。
ライト殿下の席は窓際の一番後ろね。
オルガとは少し席が離れてしまったけど、私の席はなんとライト殿下の隣だった。

嬉しくて少しもじもじしながら着席しようとしたその時だった。

「どいて下さる?」

その声と共に私は後ろから来た誰かにぶつかってよろけて後ろにあったロッカーに肩が軽くぶつかった。

「そこはティアラの席ですわ」

見れば、今朝の御令嬢が自分の机をどこからか運んできて私とライト殿下の机の間に無理やり自分の机を差し込んできた。

「ちょっと あんた何やってるの?」

御令嬢にそう問いかけたのはオルガ。
オルガはよろけた私の手を引いて立たせてくれた。

「私は殿下の横にいるべき人物です。それにちょっと机を移動しただけで何が悪いと言うの?」

既に座席は決まっているにも関わらず何も悪びれる様子もない御令嬢が、オルガと睨み合っている。

「あんた、名前は?」
「ティアラ・デフェルよ。父は王国騎士団の副団長のデフェル子爵ですわ」

フン、と片手で赤い髪をサラッとなびかせながら御令嬢は言った。

なるほど、彼女のフルネームはティアラ・デフェルね。ティアラ嬢もSクラスだなんて、何だか悪縁を感じるわね。

「たかが子爵風情が偉ぶるんじゃないわよ。とにかく、あんたが誰だって構わないけど、ここは元々アリシアの席よ。風紀を乱すような行為は控えてちょうだい」

おおっ。
風紀を乱すような発明品ばかり開発しているオルガがそんな事を言うなんて、と私は見当違いの感心をしてしまった。

それよりも殿下の隣にいるべき人物ってどういう事なの?本当に、ティアラ嬢・・・・・・謎だわ。

「何を騒いでいるんだ?」

その声は紛れもないライト殿下の声で、私達は一斉に声のする方を向いた。

「ライト殿下・・・・・・」
「ライト様ぁ~。私は実は近くより遠くの方が黒板がよく見えるので席を後ろにして欲しくてアリシア様に席を交換してもらおうとお願いをしていたところだったのです」

何ですってー!?
そんなの初耳ですけどっ。

ライト殿下の後ろにはたくさんの生徒がいて、ごそっと入室してきた。
途端に教室がザワザワしだした。
皆が自分の席を確認しては座っていく。
一旦皆が席に着いた時、スッと灰色の髪の眼鏡をかけた地味目の男性が「あの・・・・・・」と言って手を上げた。

「それなら僕、変わりましょうか?僕はどこでもいいので」

手を上げたのは廊下側の一番後ろの席の男子生徒だった。


ティアラ嬢は「え?」と嫌な顔をした。

「君の提案は素晴らしい。デフェル子爵令嬢、後ろがいいなら変わって貰えばいい」

ライト殿下がそういえば誰も何も言えなくて、ティアラ嬢も「ううっ」と納得のいかない表情ではあったけど、自分の発言を無いことにすることも今更出来ない様で、渋々廊下側の一番後ろの席に着いた。

「さあ、アリシア。座って」

既に着席していた殿下に促され私は殿下の隣に座った。私が着席したのを確認したオルガも自分の席に座った。

「朝は済まなかった。君に誤解をさせたのではないかと気が気でなかったよ。今日、放課後グラウンドで待っていてほしい。全部話すから」

窓から光が差して金色の殿下の髪の毛がキラキラしている。
強い風が吹いてカーテンがザザッと揺れて一瞬世界が私とライト殿下だけになった。

整った殿下の顔がうっすら赤くなっている。私も同じく顔が火照って赤い顔になっていると思う。

「はい。分かりました」

ティアラ嬢が殿下にとってどんな存在なのか全く分からないけど、ライト殿下の真っ直ぐな気持ちを聞けて私の不安な気持ちはどこかに消えていった。


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