7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ

文字の大きさ
13 / 25

第十三話 殿下に朗報です

しおりを挟む
はあはあと息を切らせて走るものの、一体どこに行けばライト殿下に会えるんだろうと思って立ち止まったその時だった。

「アリシア!!」

聞き覚えのある声がして振り向けば、探していたライト殿下が何故か顔面蒼白で立っていた。
髪の毛と洋服が少し乱れていたからもしかして殿下も走っていたのかしら。

「殿下っ!丁度よかったわ、私殿下を探していたんです」

「何?俺を?君が?」

私の言葉に殿下の蒼白だった顔が一瞬で真っ赤になった。

走ってきた疲れが今頃出てきたのかしら?

殿下は乱れた息を整えながら私に近づいてきた。
私の前に来ると、何かを言いたげな表情で「あ、うっ・・・」と言葉を詰まらせている。
少し遅れて「殿下っ」と言いながら殿下のお知り合いの方もやって来た。

「そちらの方は?」

どこかで見たことがあるような無いような・・・・・・。

私の問いかけに殿下のお知り合いの方は「あ!」と言ってゴソゴソとポケットの中から眼鏡を取り出して顔にかけた。

眼鏡をそんな乱雑に扱って大丈夫?

そう思ったのも束の間、その顔を見て私は思い出した。

彼はティアラ嬢と席を変えてくれたあの人だわ。
眼鏡の下にこんなに整った顔があったとは。

今となってはあの時私がティアラ嬢と席を変わっていれば殿下は嬉しかったでしょうに。
私ったら気が利かなくて本当にだめね。

「ランドルフ・ジョハンです。父はジョハン伯爵ですが僕は三男坊なので自由気ままです。どうぞ気軽にランディとお呼び下さい」

ジョハン伯爵家と言えば騎士の家系。
きっと王国騎士団長の殿下とは密接な関係ね。
三男でも騎士として優秀な功績を残せば騎士爵位がもらえるんだから立派よね。

「よろしくお願いします。ランディ」

私がそう言うとランディがスッと右膝を屈めて右手を差し出した。
これはリガルド王国の貴族同士の挨拶で、未婚の男性が未婚の女性にするもの。

私は何も考えずにランディの手に自分の手をのせようとした時、グイッと思わぬ方向に体が引っ張られた。

「ランディに挨拶なんてしなくていい。それよりも僕を探していたって?」

引っ張ったのはライト殿下で、勢い余って殿下のよく成長した広く逞しい胸に顔からダイブしてしまった。

そして思い出すあの鍛え抜かれた逞しい上半身。

殿下の厚い胸板に思わずうっとりしていたら「大丈夫か?」と殿下が言った。
心配そうに私を覗き込む殿下の両方の瞳に私が見えて我に返った。

うわぁ、うっとりしてる場合じゃなーい!

「はい。殿下、朗報があるのです」

「朗・・・報?」

気のせいかしら、私の言葉に殿下が一瞬怯んだ気がした。

「それは本当に朗報なんだろうかと疑う気持ちが拭えないんだが、絶対に聞かなくてはいけない話なのか?」

「何を言うんですか 朗報ですよ?絶対に聞くべきです」

「分かった 聞こう」

「殿下喜んで下さい。私、後腐れなく婚約解消に応じます!」

「・・・・・・またか」

ボソッと殿下が呟くものの私の演説は止まらない。

「いいんですよ。昔助けたティアラ嬢との偶然の再会に運命を感じてしまったんですよね。多分私に対する真実の愛は勘違いだったんでしょう。殿下と恋をしてみたかったのにできない事が残念でなりませんが、殿下はどうぞ運命のお相手とお幸せになって下さ・・・・・・」
「アリシア待て!まさかそれが、婚約解消が朗報か?」

私が喋り終わらないうちに、頭を抱えて殿下が言った。
殿下の問い掛けに「はい」と笑顔で答えれば殿下が大きな溜息を付いた。

「聞くが、何故そんな考えに至ったんだ?」

「観劇を見たのです。それを見て私ピンときたんです。殿下の本当のお相手はティアラ嬢だったんだと」
「どんな内容の劇を見たのか知らないが話が飛躍しすぎだ。それにデフェル子爵令嬢の事は本当に覚えていないし思い出しもしていない。ただの部下の娘だ」

ただの部下の娘にしては随分一緒に行動を共にされてましたよね?

「じゃあ、どうしていつもティアラ嬢の事を優先していたんですか?ライト殿下の隣りにいるべき人物ってどういう意味ですか?」

ずいずいと殿下に詰め寄れば、殿下が真っ赤な顔を腕で隠して瞳で何かを訴えている。

普段は凛々しくてクールな感じなのに焦るとこんなに可愛らくなるなんて、ツボです。

私は調子に乗って殿下が顔を隠していた腕をそっと掴んでゆっくり顔から引き離した。

殿下と私の目が合って、次第に殿下の赤い顔がみるみる真っ赤になっていく。

「何を隠しているんですか、殿下?」

別に怒っていないのに叱られた子犬みたいに殿下はシュンとした。
隣でランディが「殿下、言っちゃえばいいじゃないですか」と言うと、殿下は観念したように一度空を見上げて言った。

「頼まれたのだ」

「はい?」

「ここでは話せない。もう少し落ち着いた場所で話そう」

殿下に言われて私とランディは殿下の後を付いて行った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

素直になるのが遅すぎた

gacchi(がっち)
恋愛
王女はいらだっていた。幼馴染の公爵令息シャルルに。婚約者の子爵令嬢ローズマリーを侮辱し続けておきながら、実は大好きだとぬかす大馬鹿に。いい加減にしないと後悔するわよ、そう何度言っただろう。その忠告を聞かなかったことで、シャルルは後悔し続けることになる。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

婚約者が私にだけ冷たい理由を、実は私は知っている

潮海璃月
恋愛
一見クールな公爵令息ユリアンは、婚約者のシャルロッテにも大変クールで素っ気ない。しかし最初からそうだったわけではなく、貴族学院に入学してある親しい友人ができて以来、シャルロッテへの態度が豹変した。

嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミリスは、婚約者ジノザに蔑まれていた。 侯爵令息のジノザは学園で「嫌いなところが多すぎる」と私を見下してくる。 そして「婚約を破棄したい」と言ったから、私は賛同することにした。 どうやらジノザは公爵令嬢と婚約して、貶めた私を愛人にするつもりでいたらしい。 そのために学園での評判を下げてきたようだけど、私はマルク王子と婚約が決まる。 楽しい日々を過ごしていると、ジノザは「婚約破棄を後悔している」と言い出した。

他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。    第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。  その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。  追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。  ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。  私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。

妹の嘘を信じて婚約破棄するのなら、私は家から出ていきます

天宮有
恋愛
平民のシャイナは妹ザロアのために働き、ザロアは家族から溺愛されていた。 ザロアの学費をシャイナが稼ぎ、その時に伯爵令息のランドから告白される。 それから数ヶ月が経ち、ザロアの嘘を信じたランドからシャイナは婚約破棄を言い渡されてしまう。 ランドはザロアと結婚するようで、そのショックによりシャイナは前世の記憶を思い出す。 今まで家族に利用されていたシャイナは、家から出ていくことを決意した。

私はあなたの前から消えますので、お似合いのお二人で幸せにどうぞ。

ゆのま𖠚˖°
恋愛
私には10歳の頃から婚約者がいる。お互いの両親が仲が良く、婚約させられた。 いつも一緒に遊んでいたからこそわかる。私はカルロには相応しくない相手だ。いつも勉強ばかりしている彼は色んなことを知っていて、知ろうとする努力が凄まじい。そんな彼とよく一緒に図書館で楽しそうに会話をしている女の人がいる。その人といる時の笑顔は私に向けられたことはない。 そんな時、カルロと仲良くしている女の人の婚約者とばったり会ってしまった…

その結婚は、白紙にしましょう

香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。 彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。 念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。 浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」 身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。 けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。 「分かりました。その提案を、受け入れ──」 全然受け入れられませんけど!? 形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。 武骨で不器用な王国騎士団長。 二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。

処理中です...