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第2章の2 新天地
第55話 フィアスの指令
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俺は、思わずガーラとの事を喋ってしまったが、直ぐに言ってはならないと気づいた。正直に話すと、お尋ね者のイースである事がバレてしまう。
だが、フィアスの疑う目を見て、もう、誤魔化すのは無理だと思った
とっ、その時である。
「この娘は、勘が鋭くて困ってるんだよ。 夢に見た事を、現実と混同してしまう所があるんだ。 心眼の素質があるが、上手く使いこなせていないようで …。 コラっ! イーシャ、気をつけるんだよ」
マサンは、わざと、俺を睨みつけた。
「なんか、腑に落ちない気がするが …。 マサンが言うなら、その先は聞かないでおこう。 だがな、組織に入ったからには、我らに忠誠を誓い、手足となって動かねばならない!」
今度は、フィアスがマサンを睨みつけた。
「早速だが、指令を出す」
フィアスは、俺とマサンを見据えた。
「それで、何をすれば良い?」
「シモンの父、グラン伯爵の身辺を調べてほしい。 もし可能なら、暗殺してくれ」
フィアスは、無表情で事も無げに言ってのけた。
「引き受けても良いが、いくつか質問に答えてもらう」
「なに!」
フィアスは、一瞬、不機嫌な顔をして怒ったが、少し考え込んだ後に続けた。
「本来であれば、質問には答えないが …。 まあ、マサンの言う事だから大目に見よう。 聞きたいことは、なんだ?」
「グラン伯爵の身辺調査をする理由を教えろ。 あと、組織は、奴の事をどこまで把握してる。 それから、奴は、高名な魔法使いで、若い頃は冒険者として名を馳せた男だぞ。 それに、かなり用心深いと聞く。 暗殺と言うが無理じゃないのか?」
マサンが睨みつけると、フィアスは嫌そうな顔をした。
「まず、暗殺の件だが …。 既に、グラン伯爵の屋敷に潜入させている者がいる。 その者の手引きにより近づけば、マサンであれば、倒すのは不可能じゃない。 それから、グラン伯爵を狙う理由だが …。 倅のシモンに知恵を授けているが、そのやり取りの中に弱みとなる証拠があるはずだ」
フィアスは、グラン伯爵について語り出した。
「シモンの父であるグラン伯爵は、現在、53歳だ。 奴は、ムートの創設をベネディクト王に進言した張本人であり、ナーシャを統括者に推薦したのも彼だった。 マサンが言った通り、20代前半の若い頃は、Sクラスの冒険者として名を馳せていた。 3名でチームを組んで活動していたが、周囲からはダンジョンマスターと呼ばれていた。 紅一点の女性であるメディアは、美貌の魔法使いで、回復魔法を得意としていた。 グランは後に彼女と結婚し、シモンが産まれた。 残りの1名は、魔法剣士の男だが、誰か分かるか?」
フィアスは、意味ありげな顔でマサンを見た。
「もちろん、師匠から聞いてる。 私の兄弟子のワムだ。 但し、その頃、私はまだ生まれて無かったがな …」
マサンは、顔の前で手の平をパタパタさせて、露骨に嫌な顔をした。
「そうだ。 ワムは、グランを上回るSSSランクだった。 なら聞くが、メディアを、射止めようとして、グランとワムが仲違いをした事は知ってるか?」
「知らない。 兄弟子と言っても、25年も歳が離れてるんだ。 私は師匠に拾われて育ったが、最初からワムは居なかった。 小さい頃に、数回、会った事はあるが、皆が言うほどに、悪い人には見えなかったがな …」
マサンは、抑揚のない感じで早口に喋った。兄弟子ワムの事を、あまり話したくないようだ。
「マサンは、ひいき目に見ているようだな。 最も、ワムも孤児だったから、お互い同じ境遇で、シンパシーでも感じているのか?」
「その点は、否定しないさ …」
フィアスに言われ、マサンは不機嫌そうな声を出した。
ジャームの二人の弟子が孤児だと聞き、自分も野垂れ死にするところを助けられた事を考え、師匠ジャームの優しい人柄を思い出し、目頭が熱くなった。
「話を戻すが …。 メディアは、ワムと同じタント王国の出身で、ジャームの家の近くに住んでいたんだ。 ワムが来てからは、二人は親しく育った。 いわゆる幼馴染というやつだ。 ワムはジャームの一番弟子として、本格的に剣と魔法を学んだが、近くに住んでいるメディアも魔法の手解きを受けていた。 ちなみに、メディアは、冒険者のBランクだった。 最初、二人はペアで冒険者として活動を始めた。 そして、途中からベルナ王国のグランが加わった。 俺は、ワムがメディアに恋心を抱いていたと考えている。 結局、その恋は実らなかった。 メディアは、貴族のグランと結婚した。 それが、どういう意味か分かるよな!」
「もしかして …。 ワムが、サイヤ王国の魔導士となった理由なのか?」
マサンは、驚いたような声を出した。
「そうだ。 恋心を抱いていた幼馴染を、貴族に取られて絶望したのさ」
俺は、フィアスの話を聞き、恋人のビクトリアをシモンに奪われた事を思い出した。だから、ワムに同情してしまった。
「そこで、『感情の鎖』が出てくるのさ。 シモンが持っている、この魔道具は、元々は、父親のグランがダンジョンで見つけたと考えている。 そして、彼には、この魔道具を使う理由があった」
「グランは、奥方に『感情の鎖』を使ったと言うのか? 何と、汚らわしい!」
「ああ。 似たもの親子なのさ」
フィアスは、マサンの問いかけに対し、呆れたような顔で答えた。
だが、フィアスの疑う目を見て、もう、誤魔化すのは無理だと思った
とっ、その時である。
「この娘は、勘が鋭くて困ってるんだよ。 夢に見た事を、現実と混同してしまう所があるんだ。 心眼の素質があるが、上手く使いこなせていないようで …。 コラっ! イーシャ、気をつけるんだよ」
マサンは、わざと、俺を睨みつけた。
「なんか、腑に落ちない気がするが …。 マサンが言うなら、その先は聞かないでおこう。 だがな、組織に入ったからには、我らに忠誠を誓い、手足となって動かねばならない!」
今度は、フィアスがマサンを睨みつけた。
「早速だが、指令を出す」
フィアスは、俺とマサンを見据えた。
「それで、何をすれば良い?」
「シモンの父、グラン伯爵の身辺を調べてほしい。 もし可能なら、暗殺してくれ」
フィアスは、無表情で事も無げに言ってのけた。
「引き受けても良いが、いくつか質問に答えてもらう」
「なに!」
フィアスは、一瞬、不機嫌な顔をして怒ったが、少し考え込んだ後に続けた。
「本来であれば、質問には答えないが …。 まあ、マサンの言う事だから大目に見よう。 聞きたいことは、なんだ?」
「グラン伯爵の身辺調査をする理由を教えろ。 あと、組織は、奴の事をどこまで把握してる。 それから、奴は、高名な魔法使いで、若い頃は冒険者として名を馳せた男だぞ。 それに、かなり用心深いと聞く。 暗殺と言うが無理じゃないのか?」
マサンが睨みつけると、フィアスは嫌そうな顔をした。
「まず、暗殺の件だが …。 既に、グラン伯爵の屋敷に潜入させている者がいる。 その者の手引きにより近づけば、マサンであれば、倒すのは不可能じゃない。 それから、グラン伯爵を狙う理由だが …。 倅のシモンに知恵を授けているが、そのやり取りの中に弱みとなる証拠があるはずだ」
フィアスは、グラン伯爵について語り出した。
「シモンの父であるグラン伯爵は、現在、53歳だ。 奴は、ムートの創設をベネディクト王に進言した張本人であり、ナーシャを統括者に推薦したのも彼だった。 マサンが言った通り、20代前半の若い頃は、Sクラスの冒険者として名を馳せていた。 3名でチームを組んで活動していたが、周囲からはダンジョンマスターと呼ばれていた。 紅一点の女性であるメディアは、美貌の魔法使いで、回復魔法を得意としていた。 グランは後に彼女と結婚し、シモンが産まれた。 残りの1名は、魔法剣士の男だが、誰か分かるか?」
フィアスは、意味ありげな顔でマサンを見た。
「もちろん、師匠から聞いてる。 私の兄弟子のワムだ。 但し、その頃、私はまだ生まれて無かったがな …」
マサンは、顔の前で手の平をパタパタさせて、露骨に嫌な顔をした。
「そうだ。 ワムは、グランを上回るSSSランクだった。 なら聞くが、メディアを、射止めようとして、グランとワムが仲違いをした事は知ってるか?」
「知らない。 兄弟子と言っても、25年も歳が離れてるんだ。 私は師匠に拾われて育ったが、最初からワムは居なかった。 小さい頃に、数回、会った事はあるが、皆が言うほどに、悪い人には見えなかったがな …」
マサンは、抑揚のない感じで早口に喋った。兄弟子ワムの事を、あまり話したくないようだ。
「マサンは、ひいき目に見ているようだな。 最も、ワムも孤児だったから、お互い同じ境遇で、シンパシーでも感じているのか?」
「その点は、否定しないさ …」
フィアスに言われ、マサンは不機嫌そうな声を出した。
ジャームの二人の弟子が孤児だと聞き、自分も野垂れ死にするところを助けられた事を考え、師匠ジャームの優しい人柄を思い出し、目頭が熱くなった。
「話を戻すが …。 メディアは、ワムと同じタント王国の出身で、ジャームの家の近くに住んでいたんだ。 ワムが来てからは、二人は親しく育った。 いわゆる幼馴染というやつだ。 ワムはジャームの一番弟子として、本格的に剣と魔法を学んだが、近くに住んでいるメディアも魔法の手解きを受けていた。 ちなみに、メディアは、冒険者のBランクだった。 最初、二人はペアで冒険者として活動を始めた。 そして、途中からベルナ王国のグランが加わった。 俺は、ワムがメディアに恋心を抱いていたと考えている。 結局、その恋は実らなかった。 メディアは、貴族のグランと結婚した。 それが、どういう意味か分かるよな!」
「もしかして …。 ワムが、サイヤ王国の魔導士となった理由なのか?」
マサンは、驚いたような声を出した。
「そうだ。 恋心を抱いていた幼馴染を、貴族に取られて絶望したのさ」
俺は、フィアスの話を聞き、恋人のビクトリアをシモンに奪われた事を思い出した。だから、ワムに同情してしまった。
「そこで、『感情の鎖』が出てくるのさ。 シモンが持っている、この魔道具は、元々は、父親のグランがダンジョンで見つけたと考えている。 そして、彼には、この魔道具を使う理由があった」
「グランは、奥方に『感情の鎖』を使ったと言うのか? 何と、汚らわしい!」
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