79 / 124
第2章の2 新天地
第70話 サイヤ王国へ
しおりを挟む
マサンが出て行ってから、俺とメディア2人きりの生活は、最初は気まずかったが、彼女の気さくな性格もあって、次第に打ち解けるようになっていった。
ポーチの中に食材が十分にあるから、食事の心配はない。
それに、メディアがご馳走を作ってくれるから、自分の母親の事を思い出してしまい、目頭が熱くなったりした。
彼女は、身の上を恥じる事なく話すから、俺も、次第に気を許し、自分の事を語るようになっていた。
その際に、メディアは、シモンがした事を、何度も謝罪した。
複雑な気持ちではあったが、メディアの優しい人柄に好感を持てるようになり、お互い辛い過去を抱えた身の上を理解し、同情とも取れる連帯感のようなものが芽生えるようになった。
マサンが居ない寂しさや不安もあったが、メディアのおかげで、それを考えないで過ごす事ができた。
魔法の水晶については、常に目につく場所に置いてあったが、マサンからの連絡はなかった。
しかし、それでもとメディアに言われ、マサンが出て行ってから3日目の夕方に、水晶を手に取って覗き込んでみた。
「ねえ、水晶の中に、小さく星のように光る点があるけど? 私は、歳を取って目が悪くなってるから、よく見えないけれど …。 これって、光ってるよね …」
「確かに光ってる。 何だろう? 魔道書で水晶の見方を確認して見るよ」
俺は、ポーチから魔道書を取り出した。
「イースも、この本を持っていたんだ …」
メディアは、懐かしそうに大きく重い書籍を手に取った。
「ああ。 マサンから貰ったんだ」
「凄く貴重な本よね。 マサンは必要ないのかしら?」
「全て、頭に入ってると言ってた」
俺の話を聞いて、彼女は目を丸くして驚いた。
その後、メディアと魔道書を読み解きながら水晶を触っていると、小さく光る点が次第に大きくなり、映像に移り変わった。
「エッ、これは …」
俺は、驚きのあまり息を呑んだ。
最初に、ビクトリアの怒りに満ちた表情が見えた。
また、マサンの、彼女を蔑むような音声も入っており、最後は、ビクトリアが発する、光の矢の攻撃を受けて映像が途切れた。
「ビクトリアが冷たくて薄情な人だと、マサンが言ってたけど …。 それに、戦っているように見える …。 これって、なに?」
メディアは、俺の顔を心配そうに見つめた。
「マサンが危ない! 直ぐに加勢しないと! これからマサンを助けに行く!」
俺が興奮して立ち上がると、メディアも立ち上がり、行く手を阻んだ。
「待って! これは、3日も前の映像なのよ。 今から行っても、間に合わない …。 マサンは、5日間待てと言った。 あと、2日あるから、彼女が来るのを待つのよ!」
メディアは、俺の手を握りしめ、大きな声で言い聞かせた。
◇◇◇
あれから、魔法の水晶を持ち歩き、マサンからの連絡を待ったが、結局、5日を過ぎても音沙汰がなかった。
俺が、落ち込んでいると、メディアが強く背中を叩き、大声で叱った。
「何をショボくれてるのよ! 男なんだから決断しなさい。 マサンの言いつけを守って、サイヤ王国に向かうのよ! 彼女は、伝説の魔道士ジャームの弟子なのよ! 負ける訳がないでしょ! 私は、ジャームの事を良く知ってるけど、よほど天賦の才がなければ弟子に取らないのよ! 私は、弟子になれなかった。 でもね、マサンは違った。 マサンは、ジャームに選ばれた娘なの。 3傑だろうが何だろうが、彼女に敵うはずがないわ。 先に行って、マサンを待ってれば良いのよ!」
「ああ …」
俺は、やっとの思いで返事をした。
結局、マサンをこれ以上待てず、サイヤ王国に向かう事にした。
俺が知ってる空間移動ポイントは、ベルナ王国にある「魔法の門」しかない。
しかし、メディアは、冒険者時代に、多くの空間移動ポイントを使っており、今でも覚えていた。
結局、メディアに案内されて、サイヤ王国の国都に、直接、出る事ができた。
マサンは、こうなる事を見越していたのだろうか …。
とても、敵わないと思った。
◇◇◇
サイヤ王国の国都は、人口が多く、立派な建物が密集していた。
また、道路の幅が広く、機能的に都市造りがされている印象だ。
それに、外国人も多く、様々な人種が見られた。
ベルナ王国のように、戦時色に染められた感じはなく、この国は大国なのだと、改めて感じた。
俺たちは、市街地の中心部に宿を取った。
部屋の中から、遠くの方に、白く美しい巨大な城が見える。
メディアは、冒険者時代に、何度かこの国に訪れたとの事で、懐かしむように城を眺めていた。
「遠くに見た感じだけど、サイヤ王国の城は、かなり規模が大きいよな」
この国は大国だけあって、全てにおいてベルナ王国を上回っているように思えた。
「そうね。 ベルナ王国の城とは比べ物にならない位大きいわ。 あの中にワムがいる」
「エッ、城に住んでるのか?」
「国王付きの魔道士で雇われているわ。 職責は、宰相クラスだそうよ。 王族の居住空間の近くにいると思うわ」
「そんなに偉いのか …。 ワムの面会だけど、いきなり行ってだいじょうぶかな?」
メディアの話を聞いて、俺は、少し不安になってきた。
「多分無理よ。 魔法のマントを被って透明になって行くしかないと思うわ」
「じゃあ、2人で被るか?」
「2人だと、動きが鈍くなって危険よ。 私は、ここで待っているから、一人で行ってらっしゃい。 それから …。 もしも、見つかって姿を現す場合は、イーシャになるのよ」
「どうしてだい?」
「ワムは、女性が苦手で恥ずかしがり屋なの …。 でも、女性に優しい」
メディアは、何かを思い出したのか、少し頬を赤くしていた。
◇◇◇
俺は、メディアに十分な滞在費を渡し、彼女を宿に一人残して、早速、城に向かった。
魔法のマントを被り、最初から透明になっている。
人混みの中を、すり抜けながら城を目指したが、かなりの距離があり、到着したのは夕方になっていた。
遠くから見えた、白く美しく巨大な城が、そびえ立っている。
思わず目を奪われる、圧巻の景色だ。
そして、正面には大きな門があり、衛兵が厳重に警備していた。
俺は構わず、門の方へ歩を進めた。
ポーチの中に食材が十分にあるから、食事の心配はない。
それに、メディアがご馳走を作ってくれるから、自分の母親の事を思い出してしまい、目頭が熱くなったりした。
彼女は、身の上を恥じる事なく話すから、俺も、次第に気を許し、自分の事を語るようになっていた。
その際に、メディアは、シモンがした事を、何度も謝罪した。
複雑な気持ちではあったが、メディアの優しい人柄に好感を持てるようになり、お互い辛い過去を抱えた身の上を理解し、同情とも取れる連帯感のようなものが芽生えるようになった。
マサンが居ない寂しさや不安もあったが、メディアのおかげで、それを考えないで過ごす事ができた。
魔法の水晶については、常に目につく場所に置いてあったが、マサンからの連絡はなかった。
しかし、それでもとメディアに言われ、マサンが出て行ってから3日目の夕方に、水晶を手に取って覗き込んでみた。
「ねえ、水晶の中に、小さく星のように光る点があるけど? 私は、歳を取って目が悪くなってるから、よく見えないけれど …。 これって、光ってるよね …」
「確かに光ってる。 何だろう? 魔道書で水晶の見方を確認して見るよ」
俺は、ポーチから魔道書を取り出した。
「イースも、この本を持っていたんだ …」
メディアは、懐かしそうに大きく重い書籍を手に取った。
「ああ。 マサンから貰ったんだ」
「凄く貴重な本よね。 マサンは必要ないのかしら?」
「全て、頭に入ってると言ってた」
俺の話を聞いて、彼女は目を丸くして驚いた。
その後、メディアと魔道書を読み解きながら水晶を触っていると、小さく光る点が次第に大きくなり、映像に移り変わった。
「エッ、これは …」
俺は、驚きのあまり息を呑んだ。
最初に、ビクトリアの怒りに満ちた表情が見えた。
また、マサンの、彼女を蔑むような音声も入っており、最後は、ビクトリアが発する、光の矢の攻撃を受けて映像が途切れた。
「ビクトリアが冷たくて薄情な人だと、マサンが言ってたけど …。 それに、戦っているように見える …。 これって、なに?」
メディアは、俺の顔を心配そうに見つめた。
「マサンが危ない! 直ぐに加勢しないと! これからマサンを助けに行く!」
俺が興奮して立ち上がると、メディアも立ち上がり、行く手を阻んだ。
「待って! これは、3日も前の映像なのよ。 今から行っても、間に合わない …。 マサンは、5日間待てと言った。 あと、2日あるから、彼女が来るのを待つのよ!」
メディアは、俺の手を握りしめ、大きな声で言い聞かせた。
◇◇◇
あれから、魔法の水晶を持ち歩き、マサンからの連絡を待ったが、結局、5日を過ぎても音沙汰がなかった。
俺が、落ち込んでいると、メディアが強く背中を叩き、大声で叱った。
「何をショボくれてるのよ! 男なんだから決断しなさい。 マサンの言いつけを守って、サイヤ王国に向かうのよ! 彼女は、伝説の魔道士ジャームの弟子なのよ! 負ける訳がないでしょ! 私は、ジャームの事を良く知ってるけど、よほど天賦の才がなければ弟子に取らないのよ! 私は、弟子になれなかった。 でもね、マサンは違った。 マサンは、ジャームに選ばれた娘なの。 3傑だろうが何だろうが、彼女に敵うはずがないわ。 先に行って、マサンを待ってれば良いのよ!」
「ああ …」
俺は、やっとの思いで返事をした。
結局、マサンをこれ以上待てず、サイヤ王国に向かう事にした。
俺が知ってる空間移動ポイントは、ベルナ王国にある「魔法の門」しかない。
しかし、メディアは、冒険者時代に、多くの空間移動ポイントを使っており、今でも覚えていた。
結局、メディアに案内されて、サイヤ王国の国都に、直接、出る事ができた。
マサンは、こうなる事を見越していたのだろうか …。
とても、敵わないと思った。
◇◇◇
サイヤ王国の国都は、人口が多く、立派な建物が密集していた。
また、道路の幅が広く、機能的に都市造りがされている印象だ。
それに、外国人も多く、様々な人種が見られた。
ベルナ王国のように、戦時色に染められた感じはなく、この国は大国なのだと、改めて感じた。
俺たちは、市街地の中心部に宿を取った。
部屋の中から、遠くの方に、白く美しい巨大な城が見える。
メディアは、冒険者時代に、何度かこの国に訪れたとの事で、懐かしむように城を眺めていた。
「遠くに見た感じだけど、サイヤ王国の城は、かなり規模が大きいよな」
この国は大国だけあって、全てにおいてベルナ王国を上回っているように思えた。
「そうね。 ベルナ王国の城とは比べ物にならない位大きいわ。 あの中にワムがいる」
「エッ、城に住んでるのか?」
「国王付きの魔道士で雇われているわ。 職責は、宰相クラスだそうよ。 王族の居住空間の近くにいると思うわ」
「そんなに偉いのか …。 ワムの面会だけど、いきなり行ってだいじょうぶかな?」
メディアの話を聞いて、俺は、少し不安になってきた。
「多分無理よ。 魔法のマントを被って透明になって行くしかないと思うわ」
「じゃあ、2人で被るか?」
「2人だと、動きが鈍くなって危険よ。 私は、ここで待っているから、一人で行ってらっしゃい。 それから …。 もしも、見つかって姿を現す場合は、イーシャになるのよ」
「どうしてだい?」
「ワムは、女性が苦手で恥ずかしがり屋なの …。 でも、女性に優しい」
メディアは、何かを思い出したのか、少し頬を赤くしていた。
◇◇◇
俺は、メディアに十分な滞在費を渡し、彼女を宿に一人残して、早速、城に向かった。
魔法のマントを被り、最初から透明になっている。
人混みの中を、すり抜けながら城を目指したが、かなりの距離があり、到着したのは夕方になっていた。
遠くから見えた、白く美しく巨大な城が、そびえ立っている。
思わず目を奪われる、圧巻の景色だ。
そして、正面には大きな門があり、衛兵が厳重に警備していた。
俺は構わず、門の方へ歩を進めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。
絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。
一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。
無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる