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第20話 白い魔女と黒い魔女
1. 洋館の主
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その白い洋館は、小学校の通学路にある空地に、一晩のうちに建ってしまったようなのです。
屋根も壁も窓枠も全部が真っ白で、磨き上げられた窓には、白いレースで編み上げたカーテンがかけられていました。
工事がいつ始まったのか、いつ終わったのか、誰がそこに住んでいるのか。知っている者は誰もいません。
洋館の玄関にある桐の木だけが、空地にもともと生えていた木でした。その桐の木は屋根を軽く越えるほど背が高く、見事な釣鐘型の薄紫色の花をたっぷりと咲かせていました。
けれども、玄関を出た場所に建てられた西洋風の街灯は、絵本の挿絵そのもので、洋館のたたずまいは、平凡な住宅街にまったく不釣り合いなものでした。
だから、自然に小学生の間では、“白い洋館”は話題の的になっていたのです。
その館に二人の主がやってきたのは、
爽やかな5月の朝と、
まだ、肌寒い5月の夜。
実をいうと、館の窓に伸びる桐の枝に身を隠しながら、主たちも、もの珍しそうに、下校する小学生たちを眺めていたのです。
「スィートチョコをたっぷり溶かしたアーモンドチョコクッキー、果実の蜜をふんだんに生かしたアップルパイ、そして乳成分100パーセントのミルクティー。書庫で見つけたお菓子のレシピを上から順に作ってみたの。せっかく、上手く出来たんだから、あの子たちにも、ご馳走したいわ」
「子供にお菓子? 冗談じゃない。そんな栄養たっぷりのメニューで、太らせた子供を食べる趣味は持ち合わせていないよ」
「また、そんなことを言う。子供たちは可愛いわよ。特に笑った顔は素敵よ」
馬鹿げてる。子供は黒魔術の添え物か、魂を抜き取ると決まってる
信じられない。そんな言葉は白魔術の魔法書にはありもしない。
「あんたとは気があわない」
「お互い様だわ」
窓辺から、ぷいっと顔を背けた白いストールの女性。
テーブルに並んだお菓子の皿に、そっと銀の蓋をのせると、彼女は少しきつい口調で言いました。
「明日、学校が終わったら、私は、あの子たちをここに招いて、一緒にお菓子を食べるの。もう、決めたんだから、あなたは邪魔しないでね」
にゃあぁぁ
けだるそうな声をあげて、
窓から飛び降りたのは、夜のような瞳をもった黒い猫。
あの街灯に灯がともるまで、あんたは好きにすればいい。
でも、覚えておきなさい。夜が来たならば、
それは、私の時間なのだから。
~ 続く ~
屋根も壁も窓枠も全部が真っ白で、磨き上げられた窓には、白いレースで編み上げたカーテンがかけられていました。
工事がいつ始まったのか、いつ終わったのか、誰がそこに住んでいるのか。知っている者は誰もいません。
洋館の玄関にある桐の木だけが、空地にもともと生えていた木でした。その桐の木は屋根を軽く越えるほど背が高く、見事な釣鐘型の薄紫色の花をたっぷりと咲かせていました。
けれども、玄関を出た場所に建てられた西洋風の街灯は、絵本の挿絵そのもので、洋館のたたずまいは、平凡な住宅街にまったく不釣り合いなものでした。
だから、自然に小学生の間では、“白い洋館”は話題の的になっていたのです。
その館に二人の主がやってきたのは、
爽やかな5月の朝と、
まだ、肌寒い5月の夜。
実をいうと、館の窓に伸びる桐の枝に身を隠しながら、主たちも、もの珍しそうに、下校する小学生たちを眺めていたのです。
「スィートチョコをたっぷり溶かしたアーモンドチョコクッキー、果実の蜜をふんだんに生かしたアップルパイ、そして乳成分100パーセントのミルクティー。書庫で見つけたお菓子のレシピを上から順に作ってみたの。せっかく、上手く出来たんだから、あの子たちにも、ご馳走したいわ」
「子供にお菓子? 冗談じゃない。そんな栄養たっぷりのメニューで、太らせた子供を食べる趣味は持ち合わせていないよ」
「また、そんなことを言う。子供たちは可愛いわよ。特に笑った顔は素敵よ」
馬鹿げてる。子供は黒魔術の添え物か、魂を抜き取ると決まってる
信じられない。そんな言葉は白魔術の魔法書にはありもしない。
「あんたとは気があわない」
「お互い様だわ」
窓辺から、ぷいっと顔を背けた白いストールの女性。
テーブルに並んだお菓子の皿に、そっと銀の蓋をのせると、彼女は少しきつい口調で言いました。
「明日、学校が終わったら、私は、あの子たちをここに招いて、一緒にお菓子を食べるの。もう、決めたんだから、あなたは邪魔しないでね」
にゃあぁぁ
けだるそうな声をあげて、
窓から飛び降りたのは、夜のような瞳をもった黒い猫。
あの街灯に灯がともるまで、あんたは好きにすればいい。
でも、覚えておきなさい。夜が来たならば、
それは、私の時間なのだから。
~ 続く ~
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