北欧フィンランド オーロラの下で

Peony

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極寒の地ならではの休日の過ごし方

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特に何も予定のない日曜日。
天気もいいし、気温も低いし、こんな日は海へ行くしかない!
防寒着(スノボウエア、スノボグローブ、マフラー&ニット帽&耳あて、ゴアテックスブーツ)に身を包み、颯爽と外へ出る。

マイナス17度の空気はパリッと冷たくて気持ちがいい。
しばらくすると睫毛に細かい氷がひっついて、若干視界が悪くなる。気付くと髪の毛にも霜がついて白髪状態に。
最初はそれが鬱陶しく感じたけれど、今では慣れっこ。最近は睫毛の凍り具合で気温がだいたいわかるようになったほどだ。


家から海岸までは徒歩10分。
海岸沿いには遊歩道が3km程続いていて、いつも地元の人たちが散歩したりジョギングしたりしているのだけど、海が凍るこの時期は、それに加えて海の上もがお散歩コースとなる。

地元の人曰く、この辺りの海水は塩分濃度が低いため凍りやすく、内海ではマイナス10度以下の日が1週間も続けば、人がその上を安全に歩けるくらいの氷の厚さになるそう。
ただ、毎年1人か2人は氷の薄い所を歩いて海に落ちて亡くなっているそうなので、海の上を散歩する時は次の点に注意するようアドバイスされた。

1. 他に人が歩いているか確認する。安全を確認するためと、万一海に落ちても助けを求められるように。
2. できるだけスノーモービルの跡や人の足跡があるところを歩くようにすること。


海へ着いてみると、海上で犬の散歩をする人、クロスカントリースキーをする人、アイスフィッシングの道具を抱えて歩いている人がちらほら。
海岸からかなり離れたところを歩いている人もいるので、安全と判断した。
海へ降りる場所は何ヶ所かあるのだが、一番無難な遊歩道沿いの小さなビーチへ向かう。
雪の積もった砂浜を海に向かって歩いていくと、波打ち際にひざの高さ程の三角屋根のような氷の造形物を発見した。
三角屋根の断面の厚みは10~15cmもあり、長さは1m以上になるものも。
あくまで想像だが、水面に出来た氷が風の力で砂浜側に押されて2つにパキッと折れて三角屋根を形成したようにも見える。


三角屋根の氷の間をすり抜けて、いよいよ海上へ足を踏み出す。
安全と分かっていても、一歩目はやっぱりいつもちょっと緊張する。
でもそれもつかの間、海岸から離れていくにつれ、いつしか不安が解放感へと変わっていく。

さえぎる物が何もない、まっさらな雪に覆われた海の上。
誰にも遠慮することなく、自分の思うまま、好きな方角にどこまででも歩いて行くことができる。
日本にいた時には感じたことのない「解き放たれた自由」の感覚が全身を駆け巡って、思わず両手を広げて空を見上げた。
これぞ、究極の解放感。
海一面に積もった雪があらゆる雑音を吸収して、辺りはしんと静まり返っている。
空の低い位置をゆっくり移動する冬の太陽を眺めながら、しばらく歩き続ける。


遊歩道の東の外れに、海沿いに建つ小さなサウナ小屋のような建物があるのだが、その近くで一匹の茶色い犬が楽しそうにぴょんぴょん飛び跳ねていた。
リードはつけておらず、少し離れた所で飼い主さんがその犬を呼んでいた。
しかし茶色の犬は何を思ったか、突然私を見つけると、こちらに向かって全速力で走ってきた。
そして私の目の前まで来ると、何度かピョンピョン飛び跳ねて、飼い主さんの方へ走って行った。
まるで、「あそこめっちゃ楽しいから行ってみて!」と言っているようだったので、犬と飼い主さんがその場を離れるのを待ってから、犬がはしゃいでいた辺りへ行ってみた。


そこで見つけたのは、大きな霜柱が埋まったエリア。
ざっと見積もって50平方メートルくらいはあるだろうか。
正確には霜柱とは呼ばないのかもしれないが、それ以外に思いつく言葉が見つからなく、一応説明すると、
海面の氷の上に、厚さ0.5ミリかそれ以下の薄い氷が無数に集まって縦方向に高さ10cmくらいの層を作り、さらにその上に厚さ2mmぐらいの氷が水平に乗っている状態。

表面の厚さ2mmの氷の上には一面に薄く雪が積もっているので、そこに霜柱があるなんて見た目では全く分からない。
足を踏み入れてみると、まるで霜柱を踏んだ時のようにザクザクっと音を立てて氷が割れ、できた穴に足が埋まった。
幼い頃、庭に出来た小さな霜柱を踏んだ記憶がよみがえり、楽しくなって、しばらく一人でぴょんぴょん辺りを飛び跳ねていた。
これは犬が夢中になるのもわかる。

今度はしゃがんで、表面の氷を手でそっと引き上げてみた。
手のひら1枚分くらいの大きさの割れた氷を退けると、その下に薄い氷の層を見ることができた。
薄い氷の層に触れてみると、シャリシャリと簡単に割れて崩れていく。
どんな自然条件がこんな手の込んだ氷の層を創りだしたのか、本当に不思議でたまらない。

また、あの犬が教えてくれなかったら、この不思議な霜柱に出会うこともなかったと思うと、奇跡のような出会いの連鎖に、セレンディピティ(予測していなかった偶然によってもたらされた幸運)を感じずにはいられなかった。


つづく・・


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