白銀の転生魔剣士

1000年後の世界

　結論から言えば、転生は成功だ。
　そもそも、転生には、いくつかのパターンがある。
　一つは別の器に魂を転生させ、生まれ変わる方法。だが、この方法は、どの器に生まれ変わるのか偶然性が高い。
　一つは器そのものを魔法によって生み出し、そこに魂を固定する方法。この方法は英雄の魂、人の魂を宿すに耐えうる器を生み出すのは魔法を使う技術が必要になるので困難。
　そして、もう一つは自身の肉体を一度、過去に戻し、再構築する方法。俺いや彼が取ったのは、この方法であった。
　死にかけた肉体を全盛期の状態で再構築し直し魂の器と為す。
　まるで、炎に包まれて復活する不死鳥のような方法である。

　兎にも角にも、彼は転生した。シリブル・バリオンは1000年後の世界に転生した。
　目に入り込んでくるのは太陽の光。その光に彼は目を覚まし、身体を起こした。肌から感じる地面の感触。風による肌触り。耳には風で揺らぐ葉っぱの音が木霊する。
　これだけで1000年後の世界なのかと疑ってしまうが、彼は自分の容姿を見る。
「なっ……これって、もしや……」
　彼は自分の手を見る。鏡とか水たまりとかないが、おそらく、彼は自分の姿に動揺している。
　何故なら、今の彼の姿は15歳か16歳の少年だからだ。
（ま、まさか…少年時代の姿に転生するとは…）
　彼が使用した転生魔法が、自分の肉体を過去に戻し、再構築させたとは思いもよらなかった。
（だが、まあ、ブスな体型の子供に転生しなかっただけマシだな）
　ほっと息を吐く。
「それにしても、ここは何処だ?　林か森の中だと思うけど…」
　彼は自分がどこにいるのか周囲を見渡す。見渡せば見渡すほど、彼が口にした通り、林か森の中にいるのがわかる。分かることはそれだけだ。彼が身につけている装備、服装は青年期に着ていた服装、装備だ。
いや、服だけは転生先、1000年後の服装になっている。
（変わっているのは服装だけか）
「さてと、それじゃあ…」
　少年は慣れた手つきで『気配探知』をする。
　少年の魔力は銀白色魔力。主に身体能力、精神力の強化、補助する魔法を得意とする。『気配探知』は感覚を鋭敏化。五感を鋭くさせるのが特徴だ。
　『気配探知』をする際、聴覚、聴力を強化させる。そうさせることで何キロメル(キロメートル)先の音も聞き取れる。
　少年は『気配探知』をして、耳に入ってくる音は鳥のさえずり。木々が風で揺らぐ音。それらが大半。
　だが、微かだが、魔物の唸り声が耳に入ってきた。
（魔物の唸り声?）
「穏やかじゃないが……確認に行ってみるか」
　少年はそう言って、身体強化の魔法を身体に掛けて、音がした方に走りだした。