他力本願のアラサーテイマー ~モフモフやぷにぷにと一緒なら、ダークファンタジーも怖くない!~

雑木林

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三章 スライム騒動編

89話 新スキル

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 流水海域でのレベル上げが終わった次の日。
 私はお店の入り口に『閉店中』の看板を出して、早朝から従魔たちを裏庭に集合させた。
 薔薇の下半身を蕾の状態にして、先端から頭だけを出しているローズが、眠たげな様子で私に質問する。

「アーシャよ、これから何をするつもりかのぅ……? 妾、まだ眠いのじゃ……」

「色々と検証したいの。新商品が増えるかもしれないし、情報を共有しないと」

「ふぅむ……。新商品のためであれば、仕方ないかの……。うむっ、分かったのじゃ! 早う話を進めてたも」

「それじゃあ、まずはゴマちゃんのスキルから検証だね」

 子供アザラシのユニーク個体、ゴマちゃん。
 この子はかなり興味深いスキルを持っていたから、今日一番で検証するって決めていたんだ。
 私はゴマちゃんを抱き寄せて、スキル【花吹雪】を連発させる。四種類の花弁がランダムで出るから、全種類集まるまでね。

「スラ丸、出番だよ。試食して」

「!?」

 全種類の花弁が集まったところで、私はそれらをスラ丸に押し付けた。
 スラ丸は愕然としているけど……ほら、どれくらいの効力があるのか、調べないといけないからね。
 ご褒美の葡萄を用意してあげるから、お願い。

 ──こうして、私はスラ丸に【感覚共有】を使い、自分自身に実害がない状態で、それぞれの花弁の効力を体感した。

 麻痺状態を誘発させる黄色い花弁は、痛み止めの麻酔薬として使えそう。
 遅効性で持続時間は一分程度。身体もそこそこ動くから、あんまり強力じゃないね。

 睡眠状態を誘発させる桃色の花弁は、不眠症のための睡眠薬として売れるかな。
 持続時間は一時間もあったけど、眠りが浅いから、軽い衝撃ですぐに目が覚めてしまう。

 毒状態を誘発させる紫色の花弁は、全身が鈍痛に苛まれて、細胞がとても緩やかに壊死していった。……これだけは危ないから、売り物にしたくない。
 持続時間は不明。怖くて途中で治しちゃった。

 状態異常を治す緑色の花弁は、きちんと効き目があったよ。こういうアイテムって、誰にとっても重要なものだから、良い感じに売れると思う。

 全ての花弁をステホで撮影してみたところ、これらを素材にして薬品を作れば、効力が高まると判明した。
 花弁の名前は、一つ目から順番に『イエローリリー』『ピンクリリー』『パープルリリー』『グリーンリリー』となっている。形は全て、百合の花弁っぽい。
 これらの情報をローズと共有したところで、彼女は一つ提案する。

「なるほどのぅ……。これはそろそろ、ポーション作りを学ぶべきではないかの?」

「あー、ローズの花弁もあるし、そうだよね」

 ポーションの納品に携わることで、国からの強制依頼の貢献度が稼げるから、素材の生産とポーション作りを同時に担えば、かなりのポイントが期待出来る。
 土の魔法使いのレベルも上がったことだし、今後はポーション作りを優先した方が良いかもしれない。
 そうなると、ポーションの作り方を調べないとね。

「さて、これで話は終わりかの? 妾は二度寝しても──」

「まだだよ。次は私の新スキル、【従魔召喚】のお披露目だから」

 私はスラ丸の中から、数本の硝子瓶を取り出して、地面の上に並べた。
 昨日のダンジョン帰りに、魔法陣を描くためのインクを買っておいたんだ。
 それが、硝子瓶の中に入っている銀色の液体だよ。少しだけ青みを帯びていて、外気に触れると固まり始めるらしい。

 このインクの主な素材は、幻想金属と呼ばれるミスリル。かなり高価な代物だったけど、これで描いた魔法陣は長期間使えるみたいだから、奮発してしまった。

「むむむ……。これ全部で、幾らしたのじゃ?」

「金貨二十枚だよ。これだけ使って、ようやくスラ丸用の魔法陣が描けるくらいだから、ローズたちのはまた今度ね」

「否、妾たちのは不要であろう。スラ丸だけ召喚出来れば、それで十分なのじゃ」

 ローズの意見を聞いて、それもそうかと私は納得した。みんなはスラ丸の【転移門】を使えばいいからね。
 早速、庭の地面に溝を掘ってインクを流し込み、魔法陣を完成させたよ。
 試しに使ってみると、スラ丸が魔法陣の真ん中にポンっと召喚された。

 【従魔召喚】に追加されている特殊効果、召喚直後のパワーアップによって、スラ丸の身体からは三十秒間ほど闘気が立ち昇る。

「──よしっ、これで魔法陣の設置は終わりだね」

「今度こそ話は終わりじゃな? 妾は二度寝しても──」

「まだだよ。今度は私のもう一つの新スキル、【耕起】のお披露目だから」

 私は魔力を漲らせながら、庭の片隅に向かって【耕起】を使った。
 すると、地面が仄かに緑色の光輝を放って、モコっと数センチだけ盛り上がる。


 …………えっ、終わり? 地味だ。物凄く地味なスキルだよ。


 土に触ってみると、柔らかくなっていることが分かった。けど、私には土の良し悪しなんて分からないから、どう評価したものか……。
 私がなんとも言えない気分を味わっていると──ローズが突然、この土に頭から突っ込んだ。

「ふおおおおおおおおおおっ!! な、なんじゃこの土は……ッ!? こんなっ、こんな土が存在してよいのか……ッ!? ふおおおおおおおおおおおっ!!」

「ちょっ、いきなりどうしたの!? 落ち着いて! だらしない顔で地面に頬擦りしないで!」

 ローズが人様にお見せ出来ない表情で、地面に思いっきり頬擦りしている。
 私の制止も虚しく、ローズの行為はどんどんエスカレートして、全身を泥だらけにしながら、そこに根を下ろした。

「ふぅぅぅぅ……っ、堪らんッ!! これは途轍もなく極上の土なのじゃ!! 見よっ、妾の全身が艶々になっていく!!」

 ローズは土から栄養を吸い取って、魅力が三割増しになった。泥だらけなのに、なんだか全身が輝いて見えるよ。
 このタイミングで【草花生成】を使って貰うと、今までよりも上質な花弁と葉っぱが生成された。艶々の光沢を帯びているから、素人目にも一目瞭然だね。

「す、凄い……っ!! これなら貢献度爆上がりだよ!!」

「そうであろう、そうであろう! 今後はアーシャの【耕起】と、妾の【草花生成】を併用するのじゃ!!」

「うんっ、そうしよう! ……あ、併用と言えばさ、【竜の因子】と【草花生成】は一緒に使えないの?」

 ふとした私の疑問に、ローズは腕組みして難しい表情を浮かべた。
 ほんの僅かでも、ドラゴンの生命力がローズの花弁に宿ったら、素材の格が上がりそうだけど……。

「実はそれ、試したことがあるのじゃよ。しかし……まぁ、見て貰った方が早いかの」

 ローズはそう言って、スキル【竜の因子】を使った。
 すると、彼女の頭に赤い角、肩や背中に赤い鱗が生えてくる。
 花弁の表面には、揺らぐ炎のような橙色の模様が現れて、神秘的で力強い姿に変身したよ。

 この状態で、花弁を一枚だけブチッと引っこ抜くと、花弁に現れていた模様が消えて、普通の花弁に戻ってしまった。

「なるほど、こんな感じになるんだ……」

「うむ、そうなのじゃ。この方法では、品質を向上させるのは無理であろう」

「うーん……。あのさ、二つのスキルって、きちんと混ぜ合わせてる? 【竜の因子】と【草花生成】、別々に使ってない?」

「むぅ? 確か、複合技というやつじゃな……? 正直、自分でも出来ているかどうか、よく分からん」

 二つのスキルを混ぜ合わせる技術は、バリィさん曰く、高等テクニックらしい。
 私は呆気なく出来るようになったけど、ローズは出来ていないかもしれない。

「それなら、教えてあげる。よーく感じ取ってね」

「教える? 感覚的なものじゃから、教えられないと記憶しておるが……」

「私とローズの間でなら、感覚的なものを教えられるでしょ? いくよ」

 私は【感覚共有】を使って、ローズに私の感覚の全てを共有させた。
 この状態で、【光球】+【再生の祈り】の複合技、女神球を使う。

「胸の中で──否っ、魂の中で、何かを混ぜておるのじゃな……!? こ、これが、スキルを混ぜ合わせるということ……ッ!!」

 ローズはカッと目を見開いて、自分も複合技を使おうと試みる。
 一回、二回、三回と失敗したけど、四回目で【竜の因子】+【草花生成】の複合技を完成させた。

 ローズが自分の身体から、再び花弁を引っこ抜いた。表面の揺らぐ炎のような模様は、消えないまま残っている。
 ステホで撮影してみると、アイテム名が『未登録』で、効果や用途も不明だったよ。こんなことがあるんだね。

 第一発見者の私が書き込めるみたいだから、アイテム名は『ドラゴンローズの花弁』にしておいた。用途は確かめてから書き込もう。
 多分だけど、ステホで調べられる情報って、過去から現在に至るまでの色々な人たちが、少しずつ集めたものなんだ。
 私もステホにはお世話になっているから、一つくらいは貢献しておきたい。

「──よしっ、これで検証は終わり! この後、私は図書館に行ってくるね。ローズは花弁を出来るだけ用意しておいて」

「お店はどうするのじゃ? ミケに店番を任せるかの?」

「ううん、今日はお休みにするよ。もう閉店中の看板も出しておいたから」

「ふぅむ、分かったのじゃ。では、お互いに頑張ろうぞ!」

 おーっ、と声を上げてから、私は外出する準備を整えた。
 アクアヘイム王国の名前で出された強制依頼。貢献度を稼がないと罰せられるから、それが嫌で頑張っていたけど……今なら、貢献度一位だって夢じゃないかも!

 そうなれば、一体どんな褒賞が貰えるのかな?
 どうしようっ、欲が出てきちゃった!
 
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