他力本願のアラサーテイマー ~モフモフやぷにぷにと一緒なら、ダークファンタジーも怖くない!~

雑木林

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六章 聖女の墓標攻略編

175話 スイミィ

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 ──私たちは新居を買ったその日に、家具も買い集めて、引越しを終わらせた。
 そして、夜。お屋敷での生活が始まってから、私、フィオナちゃん、スイミィちゃんの三人で、お風呂に入ることになったよ。スラ丸一号と三号も一緒だ。
 浴場の広さは六畳くらいで、十分に伸び伸び出来る。

「……姉さま。スイも、スラ丸ほしい。……フィオナだけ、ズルい」

 仰向けで湯舟に浮かんでいるスイミィちゃんが、突然そんなことを言い出した。
 湯船に肩まで浸かり、全身を弛緩させているフィオナちゃんは、そんな彼女に胡乱な目を向ける。

「ぼーっとしているあんたに、スラ丸のお世話が出来るの? こう見えても、スラ丸は繊細なんだから、お子ちゃまには無理だと思うわよ?」

「……スイ、お子ちゃまちがう」

 スラ丸って、繊細だったんだ。知らなかったよ。
 私はスラ丸をぷにぷにしながら、暫し考えてみる。

「うーん……。スイミィちゃんとリヒトくんはレベル1だし、パーティーを一軍と二軍に分けた方がいいよね? 二軍にもスラ丸が必要だから、スイミィちゃんにお世話して貰おうかな」

 新米冒険者がルークスたちに付いて行くのは、どう考えても難しい。
 だから、スイミィちゃんとリヒトくんは、黎明の牙の二軍メンバーだ。
 この機会に、ミケも冒険者になって貰って、二軍に入れよう。

「……姉さま、ありがと。好き」

「どう致しまして。このお屋敷にも、スラ丸を常駐させたいから、増員しないと……」

「あたしは三号と一緒がいいわ! 取り替えるんじゃないわよ!?」

 フィオナちゃんは三号を抱き締めて、絶対に離れないという強い意思を見せた。
 私も一号は手元に置いておきたいし、気持ちは分かるよ。

 一号は私の荷物持ち、二号は聖女の墓標、三号はフィオナちゃんの荷物持ち。
 四号はスイミィちゃんの荷物持ち、五号はお屋敷に常駐、六号は雑貨屋に常駐。
 七号は帝国に滞在、八号は王都に滞在。

「──よしっ、これで決まり! これなら、一匹増やすだけで済むね」

 私がパパッと決めたところで、フィオナちゃんがスイミィちゃんの身体を押して、こっちに流してきた。

「ねぇ、アーシャ。二軍って大丈夫なの? スイミィとリヒトだけって、かなり不安じゃない?」

 フィオナちゃんの危惧は尤もなので、私は深々と頷く。
 それから、スイミィちゃんの身体を押し返して、言葉も返した。

「不安だから、ミケとイーシャ、それからスラ丸以外の従魔も一匹、入れるつもりだよ」

「えっ!? イーシャはあたしたちと一緒じゃないの!?」

「一軍は戦力が整っているから、別にいらないと思うなぁ……」

「戦力の問題じゃないのよ! あんたと一緒に、冒険したいって話でしょ!」

 私とフィオナちゃんが言葉を交わす度に、スイミィちゃんは水面をユラユラして、私たちの間を行き来している。
 彼女はジト目で無表情だけど、楽しげな雰囲気を醸し出しているよ。

「もっと並列思考に慣れるまで、分身は増やしたくないかも……」

「じゃあ、本体で来なさいよね。それで、丸っと解決なんだからっ」

 どうしても私と一緒に冒険したいらしく、フィオナちゃんはグイグイと詰め寄ってきた。
 前にも言ったけど、その要求を呑むのは躊躇われる。私は安全圏で、のんびりしたい系の女子なんだ。
 ……とは言え、あんまり無下にするのも、申し訳ない気持ちになってしまう。

「一軍にはスラ丸三号とテツ丸を貸しているから、私たちの心はいつも繋がっているんだよ」

「そんな言葉じゃ、誤魔化されないわよ? 肩を並べて一緒に冒険するのと、覗き見して一緒に冒険した気になるのって、全くの別物じゃない」

「うっ、鋭い指摘だね……。まぁ、従魔たちを進化させたら、私の安全性も増すだろうし……うん、たまには本体で付き合うよ」

 一先ず、これでフィオナちゃんには納得して貰った。

 ちなみに、私、イーシャ、スイミィちゃん、リヒトくんの四人は、しばらく冒険じゃなくて、修行をする予定だよ。
 レベル10までは、修行で上げられるからね。
 修行方法を考えるために、スイミィちゃんとリヒトくんのスキルを確認しておきたい。
 お風呂から上がった後、私がお願いしてみると、スイミィちゃんはなんの躊躇いもなく、自分のステホを見せてくれた。

 スイミィ 水の魔法使い(1)
 スキル 【予知夢】【生命の息吹】【冷水連弾】【水壁】

「す、スキルが四つぅ……!? レベル1なのに、四つ!! あんたっ、ちょっと生意気じゃない!?」

 フィオナちゃんがスイミィちゃんの肩をガシッと掴んで、ガクガクと激しく揺さぶる。

「……姉さま、たすけて。……フィオナ、スイのこと、いじめる」

「フィオナちゃん、駄目だよ。可哀そうだから、やめてあげようね」

 私はスイミィちゃんを助け出した後、スキルの詳細を確認させて貰った。


 【予知夢】──このスキルは、睡眠中に見た夢が、現実でも起こるというもの。
 スイミィちゃんの先天性スキルであり、任意で使うことは出来ないんだ。
 彼女は自分が殺される夢を見て、一時は死の運命に囚われていたけど、それは超克済み。
 未来は頑張れば変えられるので、どんな悪夢を見ても、絶望することはない。


 【生命の息吹】──このスキルは、どんなモノにでも、自分の生命力を分け与えられるというもの。
 元々はドラゴンが持っていたスキルで、条件さえ整っていれば、死者を蘇らせることも出来る。
 竜殺しを成し遂げたリリア様が、スキルオーブを手に入れて、スイミィちゃんがそれを使ったんだ。


 【冷水連弾】──このスキルは、連続で冷たい水の弾丸を放つというもの。
 下位のスキルに【冷水弾】があって、そっちがセミオートの拳銃だとしたら、【冷水連弾】はフルオートの機関銃かな。
 スイミィちゃん曰く、ライトン侯爵から貰ったスキルオーブを使って、これを取得したらしい。

 この国に生息している魔物の多くは、水属性の攻撃が効き難いので、水の魔法使いは人気がない。けど、こんなスキルオーブがあるなら、水の魔法使いから始めても、全然いいと思う。


 【水壁】──このスキルは、動かせる水の壁を出すというもの。
 スイミィちゃんが職業を選択した際に、レベル1で取得したスキルだよ。
 流水海域の魔物、セイウチが同じスキルを使ってくる。物理攻撃を完全に防ぐことは難しいけど、動かせるというメリットは大きい。

 ここまで確認して、フィオナちゃんが勝ち誇ったように、フフンと鼻を鳴らした。

「これなら、あたしの方が強いわね! スキルの数では負けたけど、火力ならあたしの方が断然上よ!!」

「……スイ、フィオナに負けない。……これ、持ってる」

 スイミィちゃんはそう言って、ババーン!と一冊の本を掲げた。
 それは、高級感溢れる代物で、藍色の装幀が施されている。表紙絵には、海面から跳ね上がるシャチの、勇ましい姿が描かれているよ。

「そ、それは……っ、伝説級のマジックアイテム!?」 

「……そう。父さま、スイにくれた」

 私は慄きながら、頭の中でスイミィちゃんの戦闘力を上方修正した。
 この本は、流水海域の裏ボスのドロップアイテム、シャチの戦術指南書。
 魔導書という武器種で、水属性と氷属性の魔法の威力が二倍になり、消耗する魔力が半減するんだ。

 しかも、水属性と氷属性の魔法を使った際に、得られる経験値が二倍になって、戦局に応じて使うべき魔法が、直感的に分かるようになる。
 スキルオーブと魔導書。この二つをプレゼントするなんて、ライトン侯爵の愛を感じるね……。
 この後、フィオナちゃんとスイミィちゃんが、『ズルい!』『ズルくない』と言い争ったけど、私は放置して立ち去る。

 次はリヒトくんのスキルを確認させて貰おう。
 そう考えて、彼の姿を探してみるも──お屋敷の中には見当たらない。
 部屋にいないのに、窓が開いているので、心配になってしまった。誘拐とか、されてないよね?

「プライバシーの侵害かもだけど、ちょっと失礼して……」

 私はスキル【過去視】を使って、この部屋で起こった過去の出来事を覗き見してみる。
 すると、リヒトくんが自分で窓を開けて、お屋敷の壁を伝い、屋根の上へと向かったことが分かったよ。

 もう夜なのに、一体何をしているのか……。
 また中二病を拗らせて、変なことをしている可能性が高い。少しだけ、様子を見に行こう。
 私が窓から飛び降りると、透かさず影の中からティラが飛び出して、背中に乗せてくれた。合図がなくても、この程度は阿吽の呼吸で出来る。私たちは、心が繋がっているからね。

「ティラ、屋根の上まで跳んで」

「ワフっ!!」

 チェイスウルフのティラは、体長が四メートルもある黒い狼の魔物だよ。
 そんな巨体なのに、屋根の上まで一回の跳躍で辿り着けるんだ。
 
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