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プロローグ:鱗肌の少年 編
目覚めたその力
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日本のとある街で、それは起こった。
ここにすむふつうの17歳の少年は、突如として起こった自身の体の変化に驚いていた。
「なにこれ……なにこれ!?なんだこの緑っこいやつは!」
少年の腕や足は人にはありえないような緑色の鱗のようなもので覆われていたのだ。
「これは病気かな……なんかテレビでこんなの見たことあるような……いやないな」
しかし少年は「はっ!」と気づいた。
「これが病気なら……俺は病院に行かなくちゃあならないじゃないか!そ、それはだめだ!」
こう思った少年は、この鱗をどうにかして隠そうと考えた。少なくとも、学校に行っても違和感が無いレベルにはしなくてはならない。
病院というのは、注射嫌いな彼にとっては恐怖の対象だった。
「…………」
黙って真剣に考えるのは少年にとって久々であった。元気のいい少年は常に楽観的に物事を捉えていたので、真剣に考える必要がなかった。
しかし今この時は違った。おそらく過去最大級の危機が今、少年に迫っているのである!
「……今夏だし、長袖なんてきてられないし……うーん」
一生懸命に考えて、ああでもないこうでもないと頭が痛くなるほど考えを巡らせたが、この少年は頭があまり良くなかった。
「……ああ、もういいや!寝たら解決するよきっと!うん!」
頭がオーバーヒートした彼は、ベットに寝転がって、考えるのをやめてしまった。
うだるような暑さで目覚めた彼は、自分の今の状況を確認した。
「……やっぱり、治らないよなぁ……ああ……」
次の日の朝になっても、全く状況は良くなってなかった。それどころか、
「なんか目がおかしいし、髪色も変になってる!……どうなってるんだ!」
鏡で自分を見てみたところ、さらなる異変に気がついた。
まず目。まるで蛇のような目をしていた。
それでいて金色に輝いていて、中学生くらいならちょっとカッコいいとも思えるような綺麗な目だったが、しかし明らかに人のものではなかった。
そして髪色はこげ茶色から鮮やかな深緑へと変化していた。コスプレイヤーがするカツラのようにも見えたが、体を覆う鱗が、それはリアルなものだ、地毛なのだ、と証拠づけているようにも見えた。
「これは……病気、なのかな?もうなんか、人じゃなくなって行ってる気がする……」
病院に行くべきか、と再度思ったが、やっぱりやめた。
「人に見つからないようにしなければ……バレたらどうなるか……」
既に制服を着て登校し始めた少年は、物陰に隠れてながら移動していた。彼は別に皆勤賞を狙っているわけではないのだが、何故かこの時、学校に行くことに固執していた。
思えば、これが運命の分かれ道だったのかもしれない。
人を見つけると、サッと身を隠し、行ったのを確認すると、そそくさと出てきて、また隠れて……を繰り返した。
そのうち少年は何故だか少し楽しくなってきていた。
本当は「マジでヤバイ状況」なのだが、普通の学生生活を送るこの少年には、逆に非日常的で楽しく感じられたのである。
「ふう……これで住宅街を抜けれるけど……」
10分程かけて進んだ距離はいつもの二分の一程度だった。ここから先は開けた道だし、どうしようか、と電信柱の陰にうずくまりながら考えていた。
「今は……7時45分……時間は全然余裕だけど、どうしようかな、ここから」
ふっと顔を上げたその時、
「あの、何してるんですか?あなたは」
「うぶっ!!!」
女の人がいた。
「や、やば……えっとえっと、これは……違くて!!」
ゲツは思いっきり慌てた。
「あのーそのなんかちょっと暑さで体がおかしくなったんだと思うんですけど、あの、なんか人外とかトカゲとかそんなんじゃないですまじでで、あわあああ」
「……言ってる意味がわからないんですけど、あなたの体は、どこもおかしくないですよ」
「へ?」
「だから、あなたの体は正常に見えますし、トカゲにも見えませんよ。あなたの頭はわかりませんが」
「そ、そんな訳が!見てみろこのう……で?」
少年の肌は、鱗がなくなって、人らしい肌色が露出していた。
「あれ、マジだ……気のせいだった? いやそんなわけない! 昨日と今日の朝はおかしかったのに!」
その人は、はぁとため息をついてこう言った。
「……とりあえず深呼吸でもして落ち着くといいですよ。私はもう行きます、しなくちゃいけないことがあるんで」
長い黒髪をなびかせながら、彼女は歩き始めた。
「あっ、ちょっとまって!……ください!」
目撃した女の人はこちらに振り向いた。その制服から、少年と同じ学校の生徒のようだ。
「なんですか」
「あの! えーと、すみません! なんか俺の頭がおかしくなっただけだったみたいです! 変なことに付き合わせてしまってすみません!」
「……?」
彼女は少し不思議そうな顔をして、こちらを見ていた。
「……ふっ、ふふ」
彼女は突然笑い出した。
「な、なんですか?」
「いや、あなたに話しかけたのは私なんです、あなたが謝る必要はありませんよ」
「えっ、でも」
「私があなたに興味をもって話しかけたので、これは私の責任ですよ。わかりましたか?」
口元が少し笑っていた。
「わ、わかりました」
「よろしい」
彼女は進路方向を向いて歩きはじめた。
「またどこかで会いましょうね、魔法使いさん」
「?……なんか言いましたか?」
「なんでもないですよ」
そう言って立ち尽くす少年を尻目にスタスタと歩き去っていった。
その後、特に変わったことなく学校に着いた。
「よかった~どうなるかと思ったー! ……いや、俺の頭がおかしかっただけで、あれは全部想像なのか。そう思うと、なんてアホだったんだろうな~」
教室の席に着くと、ダラーっと半身を机に投げ出した。
(登校してきただけなのに、もうこんなに疲れるなんて、思いもしなかったよ~)
しばらくそのままでーっと考えごとをしていた。
(でもまあもうすぐ夏休みだし、これからは好きなだけ寝れるし遊べるぞー)
(何しようかなー、まずは音ゲーで今度あるイベントの上位目指すかなー)
(うーむ……)
少年は少し眠たくなってきたので、ちょっとだけ眠ることにした。
#####
「あれが、リランが“魔法使い”だと思う人か?」
「そうです、彼です。朝見たとき、鱗のようなものが全身を覆っていましたからね。しかもそれが一瞬でなくなったんです」
「また新しいタイプだな。……わかった、あとで話しかけてみる」
「よろしくです」
「うん」
続く
ここにすむふつうの17歳の少年は、突如として起こった自身の体の変化に驚いていた。
「なにこれ……なにこれ!?なんだこの緑っこいやつは!」
少年の腕や足は人にはありえないような緑色の鱗のようなもので覆われていたのだ。
「これは病気かな……なんかテレビでこんなの見たことあるような……いやないな」
しかし少年は「はっ!」と気づいた。
「これが病気なら……俺は病院に行かなくちゃあならないじゃないか!そ、それはだめだ!」
こう思った少年は、この鱗をどうにかして隠そうと考えた。少なくとも、学校に行っても違和感が無いレベルにはしなくてはならない。
病院というのは、注射嫌いな彼にとっては恐怖の対象だった。
「…………」
黙って真剣に考えるのは少年にとって久々であった。元気のいい少年は常に楽観的に物事を捉えていたので、真剣に考える必要がなかった。
しかし今この時は違った。おそらく過去最大級の危機が今、少年に迫っているのである!
「……今夏だし、長袖なんてきてられないし……うーん」
一生懸命に考えて、ああでもないこうでもないと頭が痛くなるほど考えを巡らせたが、この少年は頭があまり良くなかった。
「……ああ、もういいや!寝たら解決するよきっと!うん!」
頭がオーバーヒートした彼は、ベットに寝転がって、考えるのをやめてしまった。
うだるような暑さで目覚めた彼は、自分の今の状況を確認した。
「……やっぱり、治らないよなぁ……ああ……」
次の日の朝になっても、全く状況は良くなってなかった。それどころか、
「なんか目がおかしいし、髪色も変になってる!……どうなってるんだ!」
鏡で自分を見てみたところ、さらなる異変に気がついた。
まず目。まるで蛇のような目をしていた。
それでいて金色に輝いていて、中学生くらいならちょっとカッコいいとも思えるような綺麗な目だったが、しかし明らかに人のものではなかった。
そして髪色はこげ茶色から鮮やかな深緑へと変化していた。コスプレイヤーがするカツラのようにも見えたが、体を覆う鱗が、それはリアルなものだ、地毛なのだ、と証拠づけているようにも見えた。
「これは……病気、なのかな?もうなんか、人じゃなくなって行ってる気がする……」
病院に行くべきか、と再度思ったが、やっぱりやめた。
「人に見つからないようにしなければ……バレたらどうなるか……」
既に制服を着て登校し始めた少年は、物陰に隠れてながら移動していた。彼は別に皆勤賞を狙っているわけではないのだが、何故かこの時、学校に行くことに固執していた。
思えば、これが運命の分かれ道だったのかもしれない。
人を見つけると、サッと身を隠し、行ったのを確認すると、そそくさと出てきて、また隠れて……を繰り返した。
そのうち少年は何故だか少し楽しくなってきていた。
本当は「マジでヤバイ状況」なのだが、普通の学生生活を送るこの少年には、逆に非日常的で楽しく感じられたのである。
「ふう……これで住宅街を抜けれるけど……」
10分程かけて進んだ距離はいつもの二分の一程度だった。ここから先は開けた道だし、どうしようか、と電信柱の陰にうずくまりながら考えていた。
「今は……7時45分……時間は全然余裕だけど、どうしようかな、ここから」
ふっと顔を上げたその時、
「あの、何してるんですか?あなたは」
「うぶっ!!!」
女の人がいた。
「や、やば……えっとえっと、これは……違くて!!」
ゲツは思いっきり慌てた。
「あのーそのなんかちょっと暑さで体がおかしくなったんだと思うんですけど、あの、なんか人外とかトカゲとかそんなんじゃないですまじでで、あわあああ」
「……言ってる意味がわからないんですけど、あなたの体は、どこもおかしくないですよ」
「へ?」
「だから、あなたの体は正常に見えますし、トカゲにも見えませんよ。あなたの頭はわかりませんが」
「そ、そんな訳が!見てみろこのう……で?」
少年の肌は、鱗がなくなって、人らしい肌色が露出していた。
「あれ、マジだ……気のせいだった? いやそんなわけない! 昨日と今日の朝はおかしかったのに!」
その人は、はぁとため息をついてこう言った。
「……とりあえず深呼吸でもして落ち着くといいですよ。私はもう行きます、しなくちゃいけないことがあるんで」
長い黒髪をなびかせながら、彼女は歩き始めた。
「あっ、ちょっとまって!……ください!」
目撃した女の人はこちらに振り向いた。その制服から、少年と同じ学校の生徒のようだ。
「なんですか」
「あの! えーと、すみません! なんか俺の頭がおかしくなっただけだったみたいです! 変なことに付き合わせてしまってすみません!」
「……?」
彼女は少し不思議そうな顔をして、こちらを見ていた。
「……ふっ、ふふ」
彼女は突然笑い出した。
「な、なんですか?」
「いや、あなたに話しかけたのは私なんです、あなたが謝る必要はありませんよ」
「えっ、でも」
「私があなたに興味をもって話しかけたので、これは私の責任ですよ。わかりましたか?」
口元が少し笑っていた。
「わ、わかりました」
「よろしい」
彼女は進路方向を向いて歩きはじめた。
「またどこかで会いましょうね、魔法使いさん」
「?……なんか言いましたか?」
「なんでもないですよ」
そう言って立ち尽くす少年を尻目にスタスタと歩き去っていった。
その後、特に変わったことなく学校に着いた。
「よかった~どうなるかと思ったー! ……いや、俺の頭がおかしかっただけで、あれは全部想像なのか。そう思うと、なんてアホだったんだろうな~」
教室の席に着くと、ダラーっと半身を机に投げ出した。
(登校してきただけなのに、もうこんなに疲れるなんて、思いもしなかったよ~)
しばらくそのままでーっと考えごとをしていた。
(でもまあもうすぐ夏休みだし、これからは好きなだけ寝れるし遊べるぞー)
(何しようかなー、まずは音ゲーで今度あるイベントの上位目指すかなー)
(うーむ……)
少年は少し眠たくなってきたので、ちょっとだけ眠ることにした。
#####
「あれが、リランが“魔法使い”だと思う人か?」
「そうです、彼です。朝見たとき、鱗のようなものが全身を覆っていましたからね。しかもそれが一瞬でなくなったんです」
「また新しいタイプだな。……わかった、あとで話しかけてみる」
「よろしくです」
「うん」
続く
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