ヘンテコ魔法使いの非日常

KEFY

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白昼夢を見るサラリーマン 編

デイドリーム その②

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「さぁ、こちらへ……もう大丈夫だ」
 剣を持った男は、いつの間にか少女に近づいていた。女が炎を飛ばした時に移動したようだ。
 男は少女の手をとった。
「え、あ……」
 少女は少し不本意そうに、その男の後ろにつかされた。

 ゲツは二人に囲まれていた。
(あの子、剣の人の後ろに……いやまあ、さっき会ったばっかの人を信じるなんてできないよな)
「覚悟しなリザードマン……お前のLvレベルでは俺たちには敵わない」
 男が剣を上段に構えた。何か技を繰り出すつもりだろうか。
「油断はしちゃダメだぞ……依頼状に書かれていたステータスは、もっと高かったはずだ」
 女も何か魔法を使うつもりなのか、杖をこちらに向け、強く握り直した。

(レベル? ステータス?)
 ゲツはすぐに自分の今ハマっている物を想像した。
(ゲームの話してるのか? いや……真面目に現実の話なのかな……)
 彼らの顔は、おおよそホラを吹いているようなモノには見えなかった。


「いくぞ!」
「!」
 男が先に動き出した。ゲツもそれに反応する。
「ギガンティック・ブレイク!」
 男が大きく振りかぶりながら近づいてくる。

(……よし、今だ!)
 ゲツはこれを、左に避けようとした。

 しかし——
「ふっ……!?」
 足が動かない。
(何だ? 何かが……足に引っかかって……)
 スライム状の何かが、彼のふくらはぎあたりまでを覆っていた。
(何だこれ!? さっきまでなかったのに……!!)


「でりゃああああああ!!」
 男の振りかぶっていた剣が巨大化し、ゲツに振り下ろされた。
 ゲツが気付いたとき、それはもう目前に迫っていた。
「うわあああ!!」
 ゲツはどうしようもなく、腕を頭上でクロスさせた。


『『『ザシュ』』』


「がっ……」
 その大剣は、ゲツの肩から脇腹にかけて大きな傷を入れた。ゲツの体から血が吹き出る。
「あ……ああ……」
 ゲツは尻餅をついて倒れた。

「やっぱり『素早さ』が高い敵は、それを封じて一撃で倒す……っていうのが定石ね」
 女が言った。ゲツの足を固定したのは、彼女の魔法によるものらしい。
「うまくいってよかった……あとはコイツにトドメをさすだけだな」
 男がゲツの胸に剣先を向ける。剣の大きさは元に戻っているようだ。

 ゲツは息を荒くさせた。地面に血が滴り落ちている。
「はぁ……はぁ……そんな……」
 なんとか上半身を起こしていたが、それさえできなくなった。ゲツは手を横に、ドサリ、と仰向けになった。
「体が、動かない……」
 切られた影響か、体も徐々に動かなくなってきている。

(うぅ……まだここが何なのかもよくわからないのに……何かの勘違いで……)
 なぜこんなところで、とゲツは思った。あの時、騒ぎを見に行かずそのまま家に帰れば、こんな事にはならなかったのではないか?
「かは……っ」
 口から血が漏れた。もう口を開くのも難しい。

(くそ……やりたい事、いっぱいあるのに……)
 ゲツは、少し前の自分に少しだけ後悔した。また、少しだけ感謝した。
(でも、こんな未知な事を体験できたのってのは……いい事だったな、多分……)

「これで賞金もたんまりだな」
「ああ、早くやっちゃいな」
 女はそう言って、ゲツの方を見るのをやめた。
 男はゲツの胸に、剣先を当てた。
「……!」
 ゲツには、抵抗できるだけの力はなかった。


 ゲツが目をつむった、その時。



『『『バキィィィ』』』



 男の体が、乾いた音と共に倒れた。
「何の音!?」
 女が振り返った。
 そこには——黒い人間がいた。

「な、何……何がおこったの?」
 ゲツは目を開いた。目の前にが男の姿はなかった。
 そこにいたのは、黒いライダースーツのような服を身にまとった人間だった。かなりぴっちりしており、関節や胸辺りにはパッドのようなものもついている。スーツの上からわかる体つきから、どうやら女のようだ。

「ゲツくん……逃げますよ」
 黒服の女は、くぐもった声でそう言った。彼女は黒いフルフェイスのヘルメットのようなものをつけていおり、顔は伺えない。
 彼女はゲツを「よいしょ」とおんぶした。
「……?」
 ゲツは、自分の名前を呼ばれたことに困惑した。

「何だお前は!? そいつを離せ!!」
 女が指差ししながら叫んだ。
「そうはいきません」
「何……?」

「人違いって事ですよ、人違い。それでは」
 そう言うと、黒服の女はそこをさっさと立ち去っていった。



「このケガ……大丈夫じゃないですよね」
 黒服は背中にいるゲツに言った。
 ゲツは返答する事ができない。
「ここを、ひとまず安心です。そこで治療をしましょう」

(出る……? 出るって……)
 どこを出るんだ、とゲツは思った。
 が、その疑問はすぐに解決した。


 瞬きをした、そのちょっとの間だった。


「……!?」
 気付くと、そこは見慣れた景色だった。遠く広がる草原ではない、主に灰色で構成された世界だ。
「よし、ここでなら……」
 そう言って黒服は、ゲツを地面に寝かせた。


「この包帯を巻けば、もう大丈夫でしょう」
 黒服は、ゲツの上半身を裸にして、ケガをしたところに包帯を巻いた。
(いや、大丈夫じゃないでしょ……!?)
 すると、少しずつ痛みが引いてきた。声も出せるようになったようだ。
「な、何ですかこれ……!?」
「魔法ですよ、これも。私のじゃありませんけど」
 女は腰辺りのポケットを確認しながら言った。さっきはそこから包帯を取り出していた。

「あ、あ……あなたは、一体……」
 黒服はゲツの顔を見た。すると「あっ、そうだった」と言って、
「すみません、コレが邪魔でしたか」
 と、ヘルメットを脱いだ。

「……!」
 そこに現れたのは——リランだった。
「このヘルメットとスーツ、私の魔法なんですよ。顔が見えなくなるんで、外しておくべきでしたね」
「何で、リランさんが……」
 ゲツは上半身を起こして言った。ゲツの体のキズはすっかり治っていた。
「……私も、駅前のある場所に用事がありまして……そしたら、何か変な所にいたんです」

「あの場所は一体、何だったんです?」
「わからないです、が……私は何らかの魔法が働いているんだと思います」
 ゲツはあの少女の言葉が思い浮かんだ。
「魔法……? テレポートとかの?」
「いや、おそらくテレポートではありません。色々とおかしかったでしょう、あの世界は」

「じゃあ、あそこは——」
「おそらく、魔法で作り出したです。誰かが、あれを作ったんです」

 リランは地面を指差す。そこには、不自然に光る白い線があった。
「そこの光っている線を越えると、あの世界に行くようです。そしてあそこでは——」

「私達の常識は、通用しないと思った方がいいでしょう」



----------



「いてててて……何だアイツ、人違いって……」
「おい、今すぐ追っていく……ん?」
「どうした?」
「……どうやら人違いらしい」
「え? なぜだ?」
「さっきのヤツが言っていたのと……この子によると、あの鱗の体は魔法で作り出したものらしい」
「そうなのか?」
「……う、うん。そう言っていました……」
「……」
「……まぁ、切り替えていこう」
「そうだな」
(ゲツさん、大丈夫かな……)






続く

 
 
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