ヘンテコ魔法使いの非日常

KEFY

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白昼夢を見るサラリーマン 編

デイドリーム その④

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 リランから連絡を受けたアギハは、急いで駅前へ向かっていた。

「これは……」
 アギハは自転車にブレーキをかけながら、目の前を凝視した。今まで見た事もないような、おかしな事が起こっている。
「こんな大規模な魔法が、こんな人の多い場所で……!?」
 アギハはスマホを取り出し、リランに電話をかけた。
 しかし、繋がらない。
「……!!」

 アギハは歩道に自転車を止め、光る境界線へ近づいた。
「電話に出れないってことは……あいつらは、もうこの向こうにいるのか……ん?」
 アギハはしゃがんで、光る境界線に目を移した。なにかがように見えたからだ。
「今、動いてなかったか? これ……この線は」
 アギハはそう言って、光る線に触った。夏の熱いアスファルトの感触がした。

「……もしかして、これ……!」




----------




「しかし、ただっぴろい野原だなぁ……」
 ゲツが走りながら呟いた。かなりペースが速い。
「花も何も咲いてないし……一面緑でつまんない景色だな……」

「……ん? あれ? リランさんは?」
 さっきまで隣で走っていたリランがいないのに気がつき、ゲツは足を止めて振り返った。

「……あっ」
 リランは少し後ろの方にいた。



 リランは息を切らしながら、ゲツに追いついた。
「ゲツくん……ペースが速くて、追いつけないです……」
 ゲツはまだ体力が有り余っている。ゲツ自身の魔法によって、体力もかなり上がっているようだ。
「そ、そうですか……じゃあペースを落としましょうか」
「いや! それはいいです……先に行ってください」


「ど、どうしてですか?」
「さっさと行って、早く解決すべきだからです……一般の人をどれだけ巻き込んだのかわからないですが、これ以上そうさせるわけにはいきません」
 リランは前方——雲の発生源のような空の中央を指差した。
「あの真下です……そこに何かが、または誰かがいたら、慎重に接触してください」



 


「意外と遠いな……」
 ゲツはまた走りながら呟いた。景色はさっきと全く変わらない、何もない草原だ。
 最初にこの世界に来た時には、確か家があったはずだ、とゲツは思ったが、そこまで気に留めてはなかった。
「そういえば、あの子はどうなったのかな……」

 ゲツはあの猫耳の少女の事を思い出した。
「ちゃんと家に帰れたのか……いや、それより……」
 彼女があの後どうなったかも気になるが、彼女に関しては他にも色々あった。
「耳とかしっぽがあったのは……彼女がこの『世界を作り出す』魔法によって産み出されたって考えたら……まあおかしくはないよね」

「あとは……あの子、なんか突然現れたんだよな」
 ゲツは難しい顔をしながら独り言を続けた。
「というか……今までこの世界に出て来た人とか動物(?)とか全部、何もない平原に唐突に現れたよな……」
 ゲツはそう言って、いつのまにか下向きになっていた顔を正面に向けた。



「ん?」
 ゲツは真正面に何かがいるのを発見した。
「あれは……人だ。また突然……」
 なんでまた、と思うと同時に、ゲツはある事を思いついた。
(そうだ、あの人に聞いてみよう)





「う、うわあぁぁぁ!! 魔物だ!!」
「魔物じゃないって!!」
 ゲツは現れたその人にゆっくり歩いて近寄ったが、また魔物と間違えられてしまった。
 まあ彼の今の姿を見れば、人とは思われないのも分からなくもない。
「これ、魔法なんです」
「……あ、魔法なの?」


(そうだ……あと一つ、まだ疑問な事があったんだ)
 ゲツは彼——さっき現れた人——に質問を投げかけた。
「あの……すみませんが聞きたいんですけど」
「ん? なんだい?」
 もうこの場を離れようとしていたその男は、少し不意をつかれたようにこちらを見た。

「Lvって……見れるもんなんですか?」

 男はしばし沈黙し、
「見れるって……ああ、まあ見れるさ」
 と答えた。


(Lvってのはゲームみたいに強さを表すもののはず……なら、頭上に表示されてるとか、そんなんあるんじゃないか!?)
 ゲツはこの作られた世界を、ゲーム基準なのではないかと考えた。理由は……自分ならそうする、というものだ。
 何しろゲツがよくやっているものはゲームなので、それ以外に思いつかないのだ。
(まあ頭上はないかな、流石に……なら今、この人の頭上にも表示されてるだろーし)


「簡単さ。頭の上を見るんだ」
 ゲツは「へーそうなんですね」と言った後、思わずその言葉をもう一度頭の中でリピートした。
「へ!? え、見えませんけど!?」
 ゲツが男の頭上20cmくらいの所を指差して、そのままブンブン手を振りながら言った。予想通りすぎてかなり驚いている。
「あーそりゃそうさ。片目を閉じなきゃ見えないよ」
「か、片目を閉じる……?」
 言われるがままにゲツは、片目を閉じた。

「な、見えるだろ」
 ゲツは男の頭上に、数字が浮かんでいるのが見えた。20、と確認できた。
「ああ、確かに……見えました」
 ゲツはそのまま、真上を見た。数字が浮かんで見える。59。
「おー……なんか俺、レベル高くないか?」



「ありがとうございます、助かりました」
 ゲツは去っていく男に礼をした。
「おー……」
 そう男は返事をすると、ピタリ、と足を止め、
「そーいえば、なんであんたみたいな高Lvの人間もがそんな簡単な事を知らないのか、不思議なんだけど……」
 とゆっくり振り返りながら聞いて来た。
 ゲツは少し口ごもって、
「……それは、まぁ……新人だからというか……そんな感じです」
 と答えた。
 



----------




「よし、着いた……ここら辺だよな?」
 ゲツは立ち止まって空を見た。ちょうど真ん中に、雲の発生点があるのを確認した。
「……で、ここら辺もまた、全く景色がおんなじで何もないんだけど……お?」

 と言った矢先、ゲツはその草原にある物体が横たわっているのを見つけた。
「何だあれ? なんか黒いモンが落ちてる?」
 少し高い草で全体は見えないが、黒い何かが横たわっているように見えた。
 立ち止まってジッと観察してから、ゲツはそれに近づいていった。

 ゲツはそれの真隣に立った。
「これは……」
 それは人間だった。黒く見えたのはその人間が着ていた服だったのだ。
 ゲツはしゃがみ込んで、仰向けで寝るその人間の鼻に指を近づけた。
「息してる……ケガはないかな」
 ゲツはその人間の体を見た。見覚えのあるその服にキズなどはなさそうだ。


「何でこの人は、こんな所で、しかもスーツ着て寝てるんだろ……」
 その人間はスーツを着ていた。その格好から、彼はサラリーマンか何かなのでは無いかとゲツは思った。
「とりあえず起こそうかな、こんな所じゃ危ないし……」

 ゲツは寝ている男の体をゆすり始めた。
「起きてくださいー、危ないですからー」
 ……しかし、男はなかなか起きない。
「うーん、全然起きない……」
 ゲツはさらに揺すってみた。が、やはりダメだった。

「……うーん、ここじゃ危ないし……俺がおんぶして外まで運んでやろうかな……」
 ゲツは男の顔を見て言った。未だ目覚める気配はない。
 それを確認してから、ゲツは回りを見渡した。
「えーっと、あれ……俺どこから来たんだっけ……」




 ——その時。


「5」


「……ん?」
 ゲツは何者かの声を聞いた。反射的にゲツは、声が聞こえた方に振り向きながら、
「何だ? また人かな?」
 と言った。

 しかし——誰もいない。
「……??」
 何度も見た草原が広がっている。


「4」


 声が聞こえた。先程のと声質が同じだ。
「ま、また! 誰だ!」
 ゲツは立ち上がって、周囲を注意深く見渡した。
「な、何で見つからないんだ……?」


「3」


 ゲツは特に意図せず、自分の足元を見た。
「……もしかして、この人が……喋ってる……?」
 そこにはスーツ姿の男がいる。目を閉じて、眠っているような顔だ。
「お……起きたのか?」


「2」


「あっ……!」
 ゲツは目撃した。
 この声はこのスーツの男の声だ、と確信できる瞬間を。
(今、はっきりと……口を動かして……)


「1」


 ゲツはしゃがんで、男の頭を軽く持ち上げた。
「寝言……じゃないのか?」
 ゲツはこの男が言う謎のカウントダウンに、少し恐怖を覚え始めた。
(何のカウンドダウンなんだ、これ……!?)







続く
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