本当の最強チートは妹のパンツをテイスティングすることだった件。

加賀いるか

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9話「異世界生活っていいな」

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「兄さん!!  また私のパンツを盗みましたね!?  この世界では下着は貴重なんですから、本当にやめてください!」

「え? ソウタったらまたサキのパンツを盗んだの? ソウタってパンツを喉に詰まらせて死んだんじゃなかったっけ? 学習能力無いの? ばかなの?」

本日の朝は義妹の早希にしかられる所から始まった。
つーかエア、お前にだけはバカとか言われたくない。
俺は先日のクエストからどうもこの女神、頭が弱いんじゃないかと疑っている。

「盗んでないよ?」

「じゃあそのポケットからはみ出してるストライプの布はなんですか!」

俺は自分のポケットを確認し、改めて早希の顔を見てこう言った。

「ちがうよ?」

「ごまかすならもっとうまくごまかして下さい!  冷や汗だらだらじゃないですか!  もう、返してくれないなら朝食抜きですよ!」

「お返しします」

早希に胃袋をしっかり握られているため、こう言われると逆らえないのだ……
俺は即座にその場に跪(ひざまず)き、王に貢物を献上するような体制でしまぱんを返還した。
なんでエアまで腕を組んでふんぞり返ってんだよ。お前ちげえだろ。





「で、今日はどうするんですか?」

朝食を食べながら早希がそう聞いてきた。
ちなみに本日の朝食のメニューは食パンの上に目玉焼きを乗せて塩こしょうをふったもの、そして野菜のスープだ。
この世界ではもといた世界とほぼ食べ物は同じのようで、異世界の食事に順応する手間がはぶけた。
ただ卵は何故かとても高かったので、手に入れるためにちょっとした苦労がありそうだ。

「ちょっと強めのモンスターを討伐するクエストを受けようと思う」

「いいわね! あたしの力でちょちょいのちょいよ!」

俺の言葉を聞いたエアが沸き立ったが、俺は首を横に振りこう言った。

「いや、今回も俺たちは早希の補助に回る。エアは回復役、俺はおとりになる」

「ええー……じゃあいつあたしの力を見せる時が来るの?」

「アンデット系モンスターの討伐で頼む……つーかお前普通のモンスターに通用する攻撃手段もってねえだろ?」

「あるわよ! ゴッドストーンとか!」

「お前それただ石投げつけるだけだったろ……」

そう、この女神、攻撃手段がほぼないのだ。
戦闘で役立つスキルは回復魔法などの補助魔法だけで、唯一の攻撃魔法といえば対アンデット用攻撃魔法くらいだった。
まあプリーストだし、攻撃手段が少ない事は予想ついてたことだが。

「攻撃面ではほんっとくそ役にたたねえな……回復魔法もどうか怪しいぞ……」

「ああ! 今役にたたないとか言ったでしょ! あたしの心が著しく傷つけられました! あやまって!」

「うるせえなクソ女神! いいから黙って飯食ってろ! 早希たんの飯が冷めちゃうだろうが!」

「クソ女神!? 今クソ女神って言った!? 女神に暴言をはくとバチがあたるわよ!!」

「兄さんもエアさんもうるさいです! いらないならもうご飯さげますよ!!」

「「ごめんなさい」」

どうもエアも早希に頭が上がらないようだ。
台所を握る女は強し。





「よっしゃ今だ、早希、頼むッ!」

「はいっ!! 『メテオ』ッ!!」

ドコココココココココココココココココココッ!!!!

俺がおとりとなってモンスターを集めた場所に早希の『メテオ』が降り注ぐ。
モンスターは断末魔を上げる事も無く、隕石に蹂躙されその姿を消滅していった。

「よっしゃ! 『デビルフロッグ』討伐完了だ! よくやった早希! 最高だ早希!」

「はあ、はあ、えへへ、やりましたっ」

「相変わらずアホみたいな威力ねこの魔法……一応最強の攻撃魔法なんだっけ?」

「そうらしいですね、まだまだ威力も精度もあげられるそうですけど、そもそも『メテオ』を覚えることができる魔法使いはほとんど居ないらしいです」

いやー、やっぱ早希の存在チートだな。早希の力だけで魔王討伐余裕なんじゃね?
ん? あ、お、俺も多分早希のパンツを食べたらパワーアップするし! 多分。

「よっしゃ、ギルドに戻って討伐報告に行こうぜ。今回の報酬は確か20万リアルだ! いいもん食えるぞー!」

「わーい! あたしデビルフロッグの洗いがいい!」

「お前あんまり趣味よくねえなあ……」

前回も討伐したモンスターの料理食べてたろ。





「いやー、食った食った、もう食えねえわ」

ギルドに戻った俺たちは、受付のお姉さんに討伐を報告して確認してもらった後、報酬を受け取っていいもんを食べまくった。

「おいしかったわねぇ……でも、デビルフロッグの洗いはあんまりおいしくなかったわ。メニースライムを見習ってほしいわね」

「お前頼んでおいて文句言うなよな……安かったからいいけど……」

「たまにはこういう食事もいいですねえ……」

食事を終えた俺たちは、食事の余韻を味わいながら満腹感を堪能していた。
あー……やばい、寝そう……

「あ、兄さん寝ちゃだめですよ。寝るなら宿に戻ってからにしましょう」

「だなあ、そろそろ戻るか……おいエア寝るな、帰るぞ」

「やー、あと5分……」

「テンプレやめろや……いやーしかし、異世界に来て本当によかったな、元の世界の時よりやりがいあるし、自由だし大分幸せだわ……」

「あの……」

「だから寝んなって、オラ!」

パシィン!

「いだー! なにすんのよ! 女神の頭をそんな簡単にパンパンパンパンはたかないで!」

「あの……」

「あれ、兄さん人が……」

「てめえが寝るのがわりいんだろうが! 帰るぞって言ってんだよ、子供か!」

「あのっ!!」

「「!?」」

すでに睡眠状態に陥っていたエアを叩き起こし、宿に帰る準備を……いや、エアと言い争いをしていた俺は、突然の小さな訪問者に気付かなかった。

「あ、はい、なんでしょう?」

俺は訪問者に向き合い、何用かと訪ねた。
俯いているせいで顔は見えないが、美人であろうことは見てすぐわかった。

「え、と、あの、その」

「?」

どうしたんだろう。何かしたかな、この女神が。
やべ、口に出てたか。女神がまた何か言いたそうにこっちを見てる。
そんなことを考えていると、意を決したように訪問者が軽く深呼吸をし、言葉を紡いだ。

「ぼ、募集の紙を見て来たのだが、まだパーティーメンバーの募集はしているか!?」
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