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ー幕間ー

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「俺と付き合ってほしい」

女子生徒からのストーカー紛いの行為を受けており、考えた末に思いついた案だった。
浦田月乃。
目立つタイプではなく、クラスも一緒になったことはない。学年でも目立つタイプではなく、どちらかと言えばクラスに一人は必ずいる、ごくごく平凡な女の子。
学校生活を普通に送っていれば、恐らく関わることがない同級生の一人だっただろう。
付き合ってほしいと告げた俺に、彼女は大きく目を見開き、理由を聞かれ、クラスの男子に聞いたと答えたが、実は1年生の頃から知っていた。
話すことは無かったが、一方的に知っていて、彼女が困っている人を突き放せない性格と理解していての提案だった。
我ながら、すごく性格が悪いと苦笑する。案の定、彼女は提案を了承してくれた。こんな馬鹿馬鹿しい提案、なかなかに了承する人はいない。彼女のお人好しと優しさに付け込んだ。なんともひどい人間だ。

彼女と付き合い始めて次の日の放課後、彼女の幼馴染に呼び出された。彼は有名だ。中川翔太、弓道で全国大会で優勝したとかで、メディアの取材を構内で受けていた。容姿も相まって、目立つ存在でもある。そんな彼に呼び出される要件は一つだろう。
「月乃と付き合い始めたんだって?理由も聞いた。なんで月乃なんだよ」
やはり、と心の中で呟く。幼馴染の彼女を大切にしている様子は見て取れていた。急に付き合い始めたと彼女が報告すれば、こんな風に呼び出されるのも当然だろう。
「浦田さんが良いと思ったんだ。けして、短絡的に考えたわけじゃない」
「あのな、お前の都合に月乃を巻き込むなよ。事情は分かるけどよ、いきなりお前に彼女ができたなんて、お前のことが好きなやつらを挑発してるように見える」
「巻き込んで申し訳ないと思ってるよ。でも、他に方法が思いつかなったんだ」
危険が伴う可能性はあると思っている。しかし、この方法しか思いつかなかったのも確かだった。
好意を寄せてくれている子達に対話を求めたが、まるで話にならなかった。だから取った方法。




なんて、事実を交えた都合のいい理由。
俺の本当の想いや思考なんて、知る必要無いよね。




心の中で自分の腹黒さに笑みを浮かべた。














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