トレーションソウル

コウキ

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教会の中で

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僕は、何もない殺風景な部屋の中で小説を読んでいた。話の内容は洗脳された親友を悪の組織から取り戻すという話だ。
この手の話は最後の方の落ちがすぐ分かってしまい好きではないが、今の僕の気分にとっては最高にフィットした本だった。
ペラっと次のページをめくったとき、床に置いてあったスマホが鳴り出した。誰からの電話だと思い画面を見るとあいつだった。
「もしもし、何か動きがあったか?」
僕の応答に対しての返事の声はとても、ごつく冷静な口調だった。
「はい。Yが、目覚めました。」
「ククク…ハーハッハハー」
思わず声が出てしまうほど嬉しかった。だってあいつがとうとう目を覚ましたから。
「で、どうしましょう?ロイド兵を一体で良いのですか?」
「ああ、いいよ。今の彼の力も見ておきたいからね」
「わかりました。では、失礼します。」
この言葉を最後に電話は切れた。
薄暗い部屋の中で僕は1人笑い続けた。そう、やっと助けられる。僕のたった1人の親友、嵐山ユイトを。

・・・・・


「ハアハア」
荒い息を吐きながら、俺は学園の前の坂を走りながら登っていた。上の方を見ると仁美ひとみが手を振りながら
「早く~」
と、言っている。というか、何故妹である仁美があんなに早いんだ?身長は確かに小さい、下手したら小学生に間違われるレベルだ。でもさすがにこんなに差がつくのはやべーぞ。そんなことを思いながらようやく学園の正門前まで登りつめた。
「兄さん遅~い。」
とてつもなく嫌味混じりな一言が飛んできた。
「お前は背が小さいから・・・」
そうボソッと言った瞬間だった。
バコッ!!
「ガフッ!!」
見事な一撃が俺の酸素を欲しがっている肺にヒットした。
膝から崩れ落ちて恐る恐る、殴った張本人の顔を見てみると、口は笑っているが目が完璧にヤバい奴の目だった。
「・・・なにか言うことある?」
その冷たい言葉を聞いた瞬間、心の中で『何もありませーん!』と、思いながら俺は首を横に振った。
「ならよろしい。」
そう言うと、仁美は振り返り先に進んだ。
・・・忘れていた。あいつが自分の身長にかなりのコンプレックスを抱いていることを。
他にも、貧相やぺったんこなど体の劣等部を表す単語はタブーだ。
やっと呼吸が整い前を見ると仁美の姿が見当たらなかった。
ついでに言うと、あいつはかなりの方向音痴だ。
「仁美ー」
叫びながら、探していると敷地内の教会の前に来た。まぁ中に入ることはないだろうが、念の為一度見てみようと思い扉を開けた。
すると、目の前のカラフルなステンドグラスが朝日に照らされとても幻想的な感じになっていた。
熾天使セラフィムの輝きよ」
その、涼しげな声が聞こえた瞬間ビクッとなった。
「な、何!?」
と、言いながら声がした前の方へ歩いて行った。すると席の最前列に声の本人がいた。
その髪はフランス人形を思わせる金色で艶やかな長い髪だった。
「あら?あなたが今日来る転校生?」
そう言いながら彼女が振り返る。
赤くどこか優しそうな瞳が印象的でこれぞ外国人というくらい綺麗だった。
「ああ、俺、嵐山ユイト」
「戸川シャーリーンよ。よろしく嵐山君」
そう言いニコッと笑った時もとても綺麗だった。
「ああよろしく。ところでさっきのセラフィムって?」
俺はさっき彼女が口にした単語について聞いてみた。
「嵐山君は天使についてどう思う?」
「え?」
質問を質問で返され俺は反応に困った。
しかも、質問の内容も内容だから余計に困り
「じ、実在しないもの」
というあやふやな回答になった。
まぁしょうがないよね。天使とか考えたことないもんね。
「そう」
と言い戸川は椅子から立ち上がって俺が入ってきた方へ歩いて行った。
「ちょ!俺の質問の答えは?」
そのまま帰りそうな勢いだったから、さすがに呼び止めた。
「そのうち分かるわ」
彼女はふわっと髪をかきあげながらそう答えた。そして扉を開け出て行った。
「嘘だろ!?」
と言い、走り出そうとした瞬間、携帯が鳴った。
「ったく誰だよこんな時に」
そう言いながら携帯の発信者の名前を見ると、仁美だった。
やべー完全に忘れとった。恐る恐る出て見ると
「兄さんどこ?」
完璧に 声がキレモードの時の冷たさだ。
「まぁそんなのどうでも良いわ。とりあえず1分以内の学長室の前に来ないとタダじゃ済まないから」
そう一人で話しを進められて切られた。
「えーーー!!」
叫んだ俺の声が教会の中をこだました。









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みんなの感想(1件)

lark
2016.07.31 lark

彼がなぜ殺し屋になったのか、そしてその後何が起きたのか。非常に1話から引かれる展開でした。しかし、ありきたりと言えばありきたりです。物語中にも出てきたシャドーバレットというのは能力なのか専門に開発された武器なのか。
もし前者ならば異能力者バトルになり能力者バトルとして王道の部類でしょう。後者なら科学力を駆使し戦うようになるのだろうと胸熱な展開を広げております。
続き楽しみにしております。

解除

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