天空の蒼鷲 ーされど地に伏す竜 ー

すだちかをる

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デトゥック村

囚われの身-Ⅲ-

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「お前は駄目だ」

 じろりと睨まれる。
 萎縮する俺に代わってナルシャが事の説明を端的に伝えた。
 男が何度か頷き、ようやく片腕を下げる。
 そして俺とナルシャ、そのすぐ後ろを大剣の少女が続き、俺らは家の中に足を踏み入れた。
 家の中は、それなりに広かった。
 廊下が幾つか枝別れしていて、その度に「こちらです」とナルシャの案内を受ける。
 部屋を幾つか横切り、やがて大きな広間に出た。
 椅子や家具が何も無い空間。
 ただ中央に一人の老婆が座布団の上で胡坐をかいていた。
 白髪に痩せた体躯、背は低く、手や顔の深い皺が生きた年数を物語っている。
 老婆が両手の湯飲を一口含み、息を吐いた。
 こちらを一瞥すると、ナルシャと大剣の少女が頭を垂れる。
 
「ヤントゥム様、ただいま戻りました」

 大剣の少女がそれに続く。

「婆さん、今戻ったぜ」

 老婆の正面向かいにナルシャが正座し、その右隣で大剣の少女が荒々しく胡坐をかく。
 立ち尽くす俺にナルシャが「どうぞお座りになって下さい」と声をかけた。
 そう言われても、両手を後ろで拘束されていると座りづらいんだが・・・
 それでもゆっくりと腰を下ろし、俺はナルシャの左隣に座した。
 視線を戻すと、老婆がまた湯飲を一口。
 そして、しわがれた声で尋ねてきた。

「二人ともご苦労じゃったな。早速で申し訳ないが、小麦畑の方はどうじゃった?」
 
 尋ねられたのは、二人の方だった。
 互いを見合って、ナルシャが恭しくそれに応える。
 
「・・・はい。
 ヤントゥム様の仰っていた通り、この地域一帯の小麦畑がほぼ枯れていました。
 南地区は全滅、北地区は約半数程度ですが収穫高はあまり望めないでしょう」
 
「やはり、そうであった・・・」

 それを聞いた老婆が独りごちした。
 湯飲を床に置き、片手を顎に当てると何やら俯き考え込む。
 しばらくして視線をナルシャに戻すと、大きく息を吐いた。
 
「今年の収穫高が見込めんとなると、マズイな・・・」
 
 老婆の言葉にナルシャが小さく「はい」と呟き、目を伏せる。
 互いに無言となり、目に見えて場の空気が重くなった。
 そこへ調子の外れた声が横から飛んできた。
 大剣の少女だ。
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