天空の蒼鷲 ーされど地に伏す竜 ー

すだちかをる

文字の大きさ
6 / 25
デトゥック村

囚われの身-Ⅱ-

しおりを挟む

 それにしても、殺風景だ。
 荒く舗装された一本道を車に揺られて、それなりの時間が経っているはずだが。
 行き交う馬車はおろか、人影さえ全く見えない。
 本当に、こんな場所に村なんてあるのか。
 相変わらず地を敷き詰める枯れた小麦畑に俺が飽き飽きしていると、
 道の先に何やら建物らしきものが見えてきた。
 近づくにつれそれが茅葺の集落だと分かり、周囲を古木の板で並べただけの簡素な外壁が現れる。
 その一部が大きく空いており、そこへ荷馬車が入って行く。
 馬が嘶き、村の広場で荷馬車が止まった。
 「着いたぜ」と言って大剣の少女が降り、続けてナルシャに連れ出された俺も荷馬車を降りた。
 村の端と端が見える。
 それほど大きい村ではないらしい。
 周囲を見渡すと、麻布の服を着た村人らしき男女ひとが数人いた。
 大剣の少女が、その中の一人と何やら話をしている。
 ・・・寂れた村だ。
 あまり裕福な村でもないらしい。
 
「ナルシャ姉、ヤントゥムの婆さんは丘の上に居るようだぜ」
 
 こちらに歩み寄って来た大剣の少女が、村で一際大きい高台の茅葺を指した。
 ナルシャが小さく頷き、俺の後ろに回ると拘束された両手を持つ。
 
「では、参りましょうか」
  
 言われるまま、俺はナルシャに付き添いながら歩き出した。
 後ろを大剣の少女が、「もたもた歩くんじゃねぇよ、ボケ」と野次りながら付いて来る。
 緩い坂道をしばらく歩くと、建物の入口が見えて来た。
 その門柱に誰か立っている。
 近づくにつれ、その容貌が鮮明になる。
 どうやら男のようだ。
 
「二人ともご苦労だった。おさが部屋で待っている、早く入れ」
 
 目前まで来ると、その男の激烈さに驚きを覚えた。
 全身が筋肉で出来たような体躯に、俺の頭二つほど高い壮年の大男。
 燃えるように赤い髪は無造作に伸ばされ、まるで野獣を彷彿とされる。
 体中に無数の刀傷があるが、何より特徴的なのは左目が完全に潰れていることだ。
 不意に男と目が合う。
 漆黒の片瞳が蔑むような目つきで俺を見下ろすも、直ぐに視線が外れ、大男は門扉を開いた。
 ナルシャが軽く会釈し、俺の背中を叩く。・・・中に入れて言うことか。
 促されるまま足を一歩踏み入れるも、男の太い片腕がそれ以上を阻んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

処理中です...