11 / 25
デトゥック村
囚われの身-Ⅶ-
しおりを挟むそう言うと、老婆が俺らの前で小箱を開けて見せた。
中には、飾り気のない銀色の指輪が入っていた。
俺が聞くより先に、ナルシャが尋ねる。
「これを嵌めると、どうなるのですか?」
老婆は首を振り「分からん」と応えた。
続けて「試しに何度か自分自身で嵌めて見たものの、何も起こらなかった」と言う。
そこに当然、一つの手が伸びて指輪を掻っ攫った。
見ると大剣の少女が自分の左手中指にそれを嵌め、空にかざし眺めている。
「なんだ、やっぱり何も起きねぇな」
少女は暢気な声を発したが、ナルシャは直に少女の手を掴み強引に指輪を外すと困惑気味に叱責する。
「エリシア、あっあなた、何を考えているのですか!?」
「大丈夫だって、ナルシャ姉。婆さんが嵌めても何も起こらねぇんだから」
けれど少女は悪びれた表情一つ見せず、それよりも指輪を慎重に扱うナルシャを横目に、
「まぁ、こいつはどうか分からねぇけどな」と俺を鼻で笑った。
老婆が、ナルシャを見据えた。
「さあ、そやつにそれを嵌めておやり。それまでこの部屋からは出さないよ」
その言葉と共に、大男が静かに部屋の入口に身を寄せ仁王立ちした。
ナルシャが俺と指輪を交互に見ながら、どうすべきか迷っている。
意を決して「嵌めますよ」の声に、俺は思わず生唾を飲んだ。
するりと左手薬指に指輪が嵌められる。
しかし何も起きず、俺が安堵の息を吐いた時、それは起こった。
不意に激痛が指に走ると、指輪を嵌めている薬指から血が垂れてきた。
直後に指輪が眩い光を帯び、表面に数字や記号やらが夥しく流れ出す。
数泊置いてそれが止むと、今度は女性の声を模した機械的な警告音が鳴り響いた。
『血液認証エラー。
アクセスコード不可により、仮登録実行・・・・・・
新規ユーザー、長谷川ショウスケ、十七歳、男性。
出身地は日本。
仮登録者は能力スキルの使用が大幅に制限されますので、ご注意ください』
そう言い残し、警告音はピタリと止んだ。
一瞬の静寂、それを老婆のしわがれた声が引き裂く。
「やはり、お主は只者ではなかったようじゃな」
俺は言葉に詰まった。
そもそも、俺自身、この状況を理解していないのだから。
老婆の手が俺の指輪へと伸ばされる。
しかしナルシャの手がそれを阻み、老婆は訝しげな目で尋ねた。
「ナルシャよ、何じゃこの手は」
「ヤントゥム様こそ、この方をどうなさるおつもりですか?」
再びナルシャと老婆が対峙した。
互いに厳しい表情で見据え、老婆が困ったように息を吐く。
「お前も聞いたじゃろう?
こやつは日本から来た者だと。
しかも魔方陣無しで指輪を起動させるのは、あたしの経験上、普通の者であるはずがない。
故に、今のうちに処分せねばなるまいて」
処分という言葉に俺の顔は強張ったが、ナルシャは違った。
俺と老婆の前に入り、庇う様に両手を広げてみせる。
「そんな事、絶対に許しません」
ナルシャの強気な声に、とうとう老婆が声を荒げた。
「まさか、ナルシャよ。おまえ、この者に誑かされたのではあるまいな!」
真意が分からないナルシャが片眉を吊上げ異を唱える。
「誑かすとは、どういう意味ですか」
「男女の契を結んだのか、ということじゃ」
老婆が煩わしげに即答すると、意図を理解したナルシャの顔がみるみると赤くなった。
言葉がたどたどしくなるも、伏せ目がちに「そ、そのような事はしてません!」と応える。
老婆が尚も問う。
「なら何故、先ほど会うたばかりの男を庇うのじゃ」
「それは・・・」と言いかけて、ナルシャの目が急にぐるりと回り白目になった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる