幽霊さんと私

アン

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幽霊さんと喧嘩して、何日か…
あれからずっと窓を開けてない
外も見ないし、お話も作ってない
…退屈だな

謝りたいけど、でも…大嫌いって言っちゃった
もう来てくれないよね…私、悪い子だもん

「…知り合いなのかな」

幽霊さんのあの言い方
まるで昔から、お母さん達の事を知ってるみたいだった
…私の知らない、大人の事情があるのかも知れない

だったら、なんて酷い事を言っちゃったんだろう
何も知らない癖に、私ばっかり喋って、幽霊さんの話を聞かないで…

…うん、やっぱりあやまろう
もしあそこに居なくても、何処に居たって…きっといつもみたいに聞き取ってくれる

…勇気を出して、窓を開けた

「あ…」

…居ない
でも良いの、私は謝るって決めたんだから

「幽霊さん!
酷い事言ってごめんなさい!
あのね、大嫌いは嘘だから…本当は大好きだよ」

ピュウピュウ、風の音
もうすっかり雪が積もって、私の声なんて全部吸い込まれちゃいそうで…
だから必死に叫んだ

「ごめんなさい、もう悪い事しないから!
寂しいの…ひとりぼっちは怖いの!
ごめんなさい…さよならはやなの…」

『…謝る事じゃない』

いつの間にか、あの、いつもの、大好きな姿

「うえ…んぇぇ…」

『泣か…嗚呼いや別に良い
君は寧ろ泣くべきだ』

黒い上着、すごく顔色の悪い…いつも通りの幽霊さん
ちょっと困った顔をしてるけどね

『君からしたら訳が分からなかっただろう
感情的になった僕が悪い』

「そんな事ないよ!
私が、何も知らない癖に…」

『そうだな、君は何も知らない
だから全て説明しようと思う
…家へ入れてくれないか?』

「えっ…でも、怒られちゃう…」

『大丈夫だ、僕から怒らないように言っておく
…君と、ちゃんと話がしたい』

真夜中…お友達だけど、知らない人
良いのかな、大丈夫かな

「…ちょっとだけだよ?
こっそりね?」

『ありがとう』

「待ってて、今鍵を…」

『大丈夫だ、そこで待っていてくれ』

「え、あ…分かった…」

鍵、持ってるの?
やっぱりお母さん達の知り合いなのかな

取り敢えず…幽霊さんに言われた通り、秘密基地の真ん中で座ってみた

でも…耳を済ませても、物音一つしない
本当にお家に入れてるのかな、大丈夫かな

心配になったから、やっぱり見に行こうと思って立ち上がったんだけど…

「きゃっ!」

いきなり床から手が生えてきてびっくりしちゃった!

『すまない、引き上げてくれるか』

「あ、うん!」

幽霊さんの声
言われた通り、その手を引っ張ってみると…
するするって…床から幽霊さんの全身が出てきたの
幽霊さん、本当に幽霊だったんだね

「大丈夫?」

『嗚呼、ありがとう
机やら乗ってみたけど、いまいち届かなくてね
すり抜ける物は選べるのに、浮けないなんて…
中途半端に不便な体だよ』

「ふふっ…そうなんだね」

上着を叩く幽霊さん
すり抜けるから、埃なんて付いてないんだけどね

「あれ?
だったらいつだってお家に入れたんじゃ…」

『誰かの家に入るには、住んでいる者の許可が要るんだ
でないと、こう…なんと言うか…透明な壁みたいな物に邪魔される』

「へぇ…だから、私に」

『そうだ
…全部教えてあげよう、おいで』

目の前に、差し出された手…
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