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ある医師の伝記
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ヴェニア・シェンローザ
不治と恐れられた病の治療法を編み出し、多くの命を救った人物である
しかしながらその行動理念、功績については不可解な点が多く、ヴェニアを「偉人」と呼ぶべきか否か、議論の余地が残されて居る
時は、先の戦争が終結した直後
復興の途上にある人々を、新たな脅威が襲った
白自病
特定の地域から帰還した者の間で初めて確認されて以降、急速に罹患者数が増加した病
主な初期症状としては発熱や倦怠感、記憶の混濁等が見られる
患者は徐々に自らを他人だと思い込み、軈て昏睡状態に陥り死亡する
発症後の死亡率は10割
様々な分野の医師や研究者達が、その仕組みや根本的な治療法を解明しようと尽力したものの、一向に成果を得る事は叶わず
人々はいつ襲い来るとも分からぬ不治の病に怯えながらも日々を過ごす他無かった
そんな状況を打開したのが、ヴェニアである
当時ヴェニアは軍を除隊後、童話作家として暮らして居た
戦場に於いて壮絶な経験を重ねた彼は、人間の死と身近な仕事に戻る事に抵抗を示したものの、近隣住民達に懇願される形で比較的軽症段階にある患者の診察を担当した
患者家族の言葉
「最初、彼は怯えて居る様子だった
しかし、いつからだったか…とても熱心に診てくれる様になってね
助手の方曰く、診察以外の時間も研究に費やして居たらしい
当時は何も希望が無かったからね
助かった者は勿論…助からなかった者も、皆が感謝して居たと思うよ」
ヴェニアによる治療は戦場での経験で身に着けた知識や勘、彼独自の発想に基づき進められ、明確な根拠や手順がある訳ではなく、他者による再現性も無かった
到底医療とは呼べぬその行為が公的な補助を得る事は叶わなかったのだが
しかし、それ故にヴェニアは常識や利害関係に囚われる事無く研究を進める事が出来たのだ
発症したが最後、心身共に死を迎える他無かった白自病
その治療に着手して僅か数ヶ月
ヴェニアは病の進行を停滞させる事に成功する
更には、極少数ではあるものの根本的な治療にも成功
その患者達は徐々に自我を取り戻し、日常生活を送れるまでに回復した
一年間の経過観察を経ても再発の兆候は見られず
これにより彼等は、白自病発症者で初めての寛解例として公的に認定された
この時点に至り国は漸くヴェニアが齎した成果に目を止め協力を打診
彼の感覚頼りとされてきた曖昧な治療法を理論的なものとして構築する為に、資料の提供等を要請した
しかし、その返事を待つ最中
事態は急転する
ある日の朝方
書斎で倒れて居るヴェニアを、治療方針の相談に訪れた患者家族が発見
既に息は無く、相当の時間が経過しているものと推測された
周囲には物が散乱し、幾つかの書類には欠損が見られ、何者かによって処分された形跡が認められた
同時にヴェニアの助手も姿を消して居た事等から、この一件は多くの憶測を呼ぶ事となるのだが
以降、詳細は不明である
不幸中の幸いと呼ぶべきか、残された患者達は皆快方へと向かった
ヴェニアが直接治療を施した者のみならず、遥か遠方の患者までもが
極度の衰弱状態にあった者を除き、皆が皆、全員、一人残らず、余りにも急激な回復を遂げ
ヴェニア・シェンローザの死後
国中を恐怖の渦に陥れた病は、忽然と姿を消した
不治と恐れられた病の治療法を編み出し、多くの命を救った人物である
しかしながらその行動理念、功績については不可解な点が多く、ヴェニアを「偉人」と呼ぶべきか否か、議論の余地が残されて居る
時は、先の戦争が終結した直後
復興の途上にある人々を、新たな脅威が襲った
白自病
特定の地域から帰還した者の間で初めて確認されて以降、急速に罹患者数が増加した病
主な初期症状としては発熱や倦怠感、記憶の混濁等が見られる
患者は徐々に自らを他人だと思い込み、軈て昏睡状態に陥り死亡する
発症後の死亡率は10割
様々な分野の医師や研究者達が、その仕組みや根本的な治療法を解明しようと尽力したものの、一向に成果を得る事は叶わず
人々はいつ襲い来るとも分からぬ不治の病に怯えながらも日々を過ごす他無かった
そんな状況を打開したのが、ヴェニアである
当時ヴェニアは軍を除隊後、童話作家として暮らして居た
戦場に於いて壮絶な経験を重ねた彼は、人間の死と身近な仕事に戻る事に抵抗を示したものの、近隣住民達に懇願される形で比較的軽症段階にある患者の診察を担当した
患者家族の言葉
「最初、彼は怯えて居る様子だった
しかし、いつからだったか…とても熱心に診てくれる様になってね
助手の方曰く、診察以外の時間も研究に費やして居たらしい
当時は何も希望が無かったからね
助かった者は勿論…助からなかった者も、皆が感謝して居たと思うよ」
ヴェニアによる治療は戦場での経験で身に着けた知識や勘、彼独自の発想に基づき進められ、明確な根拠や手順がある訳ではなく、他者による再現性も無かった
到底医療とは呼べぬその行為が公的な補助を得る事は叶わなかったのだが
しかし、それ故にヴェニアは常識や利害関係に囚われる事無く研究を進める事が出来たのだ
発症したが最後、心身共に死を迎える他無かった白自病
その治療に着手して僅か数ヶ月
ヴェニアは病の進行を停滞させる事に成功する
更には、極少数ではあるものの根本的な治療にも成功
その患者達は徐々に自我を取り戻し、日常生活を送れるまでに回復した
一年間の経過観察を経ても再発の兆候は見られず
これにより彼等は、白自病発症者で初めての寛解例として公的に認定された
この時点に至り国は漸くヴェニアが齎した成果に目を止め協力を打診
彼の感覚頼りとされてきた曖昧な治療法を理論的なものとして構築する為に、資料の提供等を要請した
しかし、その返事を待つ最中
事態は急転する
ある日の朝方
書斎で倒れて居るヴェニアを、治療方針の相談に訪れた患者家族が発見
既に息は無く、相当の時間が経過しているものと推測された
周囲には物が散乱し、幾つかの書類には欠損が見られ、何者かによって処分された形跡が認められた
同時にヴェニアの助手も姿を消して居た事等から、この一件は多くの憶測を呼ぶ事となるのだが
以降、詳細は不明である
不幸中の幸いと呼ぶべきか、残された患者達は皆快方へと向かった
ヴェニアが直接治療を施した者のみならず、遥か遠方の患者までもが
極度の衰弱状態にあった者を除き、皆が皆、全員、一人残らず、余りにも急激な回復を遂げ
ヴェニア・シェンローザの死後
国中を恐怖の渦に陥れた病は、忽然と姿を消した
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