SCRAP

都槻郁稀

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本編 19.04 - 20.03

モノクロ・読みかけの本/304/ノンジャンル?

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ㅤいつの間にか、誰もいない。

ㅤ止まっているかのように静かな図書館に取り残される。どこを見ても、人の気配はなかった。貸し出しカウンターにも職員の姿はない。エントランスホールの喫茶店は、営業中にも関わらず誰もいなかった。
ㅤ街に出ても人の姿はない。数台の車が路肩にあるが、中には誰もいなかった。皆、どこかに逃げたのか?

ㅤ指をどこに挟んだなんてどうでも良かった。どこかへ逃げたかった。落とした本も拾わずに、走り続けた。足音と、呼吸だけがそこに生きていた。

ㅤ何時間と走っても雲は動かず、日は沈まない。静かな昼下りの一瞬が立ち往生して、額の中に収まっている。

ㅤ諦めて立ち止まったとき、私は、セピア色の世界に溺れて死んだ。
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