SCRAP

都槻郁稀

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本編 19.04 - 20.03

猶予・気まぐれ/738/ファンタジー

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少しだけ、猶予をやろう。

ㅤ魔王はそういった。単独で最奥部まで乗り込んだものの、直前の戦闘で体力が削られていた勇者は、傷ひとつ負わせられずに捉えられた。魔素吸収の術がかけられた足枷を嵌められ、防具にもならない服を着て壁にもたれる。

ㅤ持ち前の元気さえ消えて、まるで別人のように“王”の前に座っていた。

猶予……?

「ああ、猶予だ。殺すまで3日だけ待ってやろう。何がしたい?」

……3日

「決めないなら今殺すぞ。別に先延ばしにしようがお前は死ぬ」

……殺す……お前を殺してやる

ㅤ勇者の首に片鎌槍が向けられる。しかし、彼が見ているのは魔王だった。目の前で胡座をかいて嗤う魔王を、ただ真っ直ぐに見ていた。

ㅤ大きな笑い声が響く。

「そうか、そんなに殺したいか。おい、手の縄を解いてやれ。」
「しかし……!」
「早くしろ」
「……はい」

「ここから7ギル離れた場所にゼオっていう街がある。」
「ナーダ王!」
「うるさい」

お前をそこに移す。人質として仲間を二人置いていけ。三日後の正午にこのアンクレットの呪いで殺す。
「誰を道連れにしたい?」

数秒の後、勇者は答えた。
「一人で来る。ここに戻って来たとき、仲間を開放しろ」

いいだろう。間に合わなければ殺す。

ㅤ転移魔法が展開され、勇者は光に包まれる。

「ナーダ王、何故……」
「あいつは俺だ……。いいか、よく聞け。まず最初に、火で攻めてくる。消火設備の点検と、兵を動かせるように準備しておけ。決行する日は、最後の夜の午前2時頃。それから一気に切り込んでくる。飛び道具の対策を練ったほうがいい。あいつがまともに戦うのは俺だけだ。どうせ勝てないから、体力を削れるだけ削れ。絶対殺すなよ。」

ㅤ最後の日、魔王城が朝を迎えた頃。勇者は死んだ。誰もいなくなった城は一週間、燃え続けたという。
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