SCRAP

都槻郁稀

文字の大きさ
65 / 83
本編 19.04 - 20.03

反転/1265/ファンタジー

しおりを挟む
ㅤ目を見ろ、と主人は言った。きっと、何か策があるのだろう。途端に視界は暗転し、次に目を開けたとき、私は彼女の身体の中にいた。一方、私の身体は二本の剣で敵を斬っている。次々に死体が増え、血が流れる。気がつけば十数の肉塊が泥に転がっていた。背中を見せて逃げる数人は見逃すらしい。刃についた血を服で拭きながらこちらを見る。私の意識は元の身体に収まった。

「さすがです」

赤く染まった服と腕に不快感を示しながら言う。彼女は「取り逃がしてしまったがな」と、少し不満そうに答えた。華奢な身体に似合わない言葉だ。戦闘狂な部分は、長年付き添っても慣れそうにない。

ㅤ薄暗い森を抜けると街が姿を現す。その奥には真っ青な海があり、二つの塔の影を映していた。

「あの」
「何だ?」

血で汚れた大男を通すとは思えないと言うと、笑いながらこう返した。

「君は私の父親だ。愛する娘を守るために、賊を殺したに過ぎない。何度もそれで通してきただろう?」

目があった。透き通った青色に私の意識は吸い込まれる。

「丁度いい、手本を見せてやろう。君はあどけない女の子でも演じていなさい」

そんな子供は知らない。この身体の主は、狡猾な戦闘狂だったはずだろう。

ㅤ彼女の能力は三つある。他者の心を読むこと、言葉を現実にすること、それから、私と目が合うと入れ替わること。何の疑いもなく番人は私達を親子と認め、苦笑いしながら着替えるようにと言った。

ㅤここの主に合うことなく安全に観光終えた私達は、別な門で出国手続きを終えた。しかし、「通すな」と声がし、突然ツタのようなもので動きを制限された。

「名を名乗れ。貴様も、魔法師だろう」 

と男は言った。恐らくここの主だろう。

「名を名乗れと言うのなら、自分から名乗ったらどうだ」

捕らえられているというのに上から目線である。

「いいだろう、俺はフォーマルハウトだ」
「私はシリウス。君を殺すと私の活動に支障が出るのは理解したよ」

「随分と偉そうな物言いだな。自分の状況を考えたらどうだ?」
「それはこっちのセリフだ。その名前のくせに私のことも知らないとはな」

「知らないはずがないだろう?ㅤあのシリウスだぞ」

さらに強く絞められる。そろそろ骨が折れてもおかしくない。

「話を変えるが、『スタラー・コア』について心当たりは?」
「知らないな。それが――」
「なら用はない。アオ」

名を呼ばれ振り向く。当然のように目が合い、今度は意識が途切れてしまった。

ㅤ気がつけば彼女の前に立っていて、フォーマルハウトの首を持っていた。

「殺したの?」
「殺したら困るとは言ったが殺さないとは言ってない。それに、再生不能になるほど壊したわけじゃないから、3日も経てば復活するんじゃないか?」

彼女は首を取り上げ、胴に向かって投げつける。

「新しい服、買わなきゃね」

私の服は隅々まで血で染まっていた。

ㅤ私の能力は三つ。あらゆる存在に姿を変えること、血から能力を写し取ること、彼女と目が合うと入れ替わること。

ㅤいつの間にか私は「使われる」側になっている。かつての彼女のように心を失ってしまうのも時間の問題だろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

処理中です...