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第32話 拠点購入
しおりを挟む収納魔法でクノールと言う人族の国にやって来た。目的は商人ギルドでの情報収集。大人数だと目立ちそうだったから、移動してきたのは俺とフリーダのふたりだけ。子どもたちの面倒はテルーとミィに任せてある。
「付き合ってる期間をすっ飛ばしてケイトと結婚してしまったが……。やはりこうして君とふたりきりで出歩けるというのは嬉しいな」
俺の腕に抱き着いてくるフリーダ。
彼女の胸が俺に押し当てられる。
これは、狙ってやってますね?
俺がこーゆーの好きだって分かってますね?
はい。大好きです。
「俺もだよ。これからもたまには理由を付けてふたりでデートしよう」
そのためにも子どもたちに安全な拠点を用意してあげなきゃいけない。
俺は奴隷商人や貴族に喧嘩を売ったようなもの。俺が奴隷を解放した貴族の友人や親族が俺に報復しに来るかもしれない。証拠はほとんど残していないはずだが、かなり動き回っていたのでどこかでやらかしている可能性もある。
一番の不安要素は、俺より強い犬獣人の兄弟のことかな。彼らはまだ奴隷から解放できていない。俺の今の力じゃ絶対に無理。ふたりを買った子爵はそいつ自身もかなり強そうだったし、頭も回りそうな感じだった。フードで顔を隠していたとしても、俺のことをなんらかの方法で調べているかもしれない。
加えて俺は魔王軍四天王のヴァラクザードを倒したパーティーの元メンバーだ。今は追放されたとはいえ、そんなこと魔物や魔人には関係ない。俺を狙ってくる可能性があるんだ。
俺には敵がいる。俺を狙った敵が、俺の家族を人質にとることがあるかもしれない。そうなる可能性を少しでも低くするため、出来るだけ防衛しやすい拠点が必要だった。
クノールの王都にある商人ギルドまで移動してきた。
「フリーダさんじゃないですか! お久しぶりですね」
「ん? 前に来てから三年くらいしか経ってないぞ」
「いつも言ってるでしょう。人族にとって三年って期間は長いんです。もっと頻繁に来てくれないと、次に来た時に私はいないかもしれませんよ」
そんな感じでフリーダとギルドの受付のお姉さんが会話している。エルフのフリーダが年単位の時間経過を短いものと思ってしまうのはいつものことのようだ。
「それで、本日のご用は何ですか? ギルドカードの更新、ではないですね。フリーダさんは最高位の商人として登録がされていますから、更新期限はありませんし」
最上位の商人って何だろう? 普通の商人って確か、商人ギルドの認定をもらうのが毎年必要だったはず。その更新が無期限って……。フリーダさんって、俺が思っていたよりずっと凄いんじゃない?
そんな俺の思考を読んだのか、彼女はニヤッとしながら俺を見てきた。
「もしかして、そちらの方の追加登録ですか?」
「ケイトは商人になりたいか?」
「俺は別にならなくてもいいかな。俺も登録しないと商売できないとかなら登録する」
「ということだから、彼の登録はしなくていい。今日は買い物に来た」
「承知いたしました。目的のモノは何ですか?」
「城だ」
「……はい?」
「城を買いたい。予算は金貨三万枚」
最大で五万枚の予算だが、購入する城によっては修繕が必要になるかもしれない。その修繕費や、今後行う商売のための資金として金貨二万枚は手元に残すことにしていた。
「き、金貨に三万枚あればお城も買えるでしょう。ただ、取引の規模が大きすぎますので、私では対応しかねます。ギルド長に話しをお伝えしてきますから少々お待ちください」
そうして俺たちは商人ギルドのトップと直接商談することになった。
──***──
三階建ての商人ギルド。その最上階の部屋に通された。
「ここがギルド長の部屋か」
かつて座ったことのないぐらいふわふわなソファーに感動する。
俺は勇者一行として旅をしていた時、赤飛竜の牙を商人ギルドに持ち込んだことがあった。牙は金貨三十枚で買い取ってもらったが、その商談を行ったのはちょっとだけ豪華な応接室だった。
王族や公爵など、最上位の顧客だけを招くというギルド長の部屋は、まさに別格だった。
「正確には儂が対応する商談時のみに使う応接室です。儂の執務室はさすがにここまで豪華ではありませんよ」
この七十歳ほどに見える白髪の紳士が、クノールで商人ギルドの長を強める人らしい。優しそうな顔をしているが、その目の奥には鋭い光が宿っているような気がする。フリーダのように心を読まれてしまいそうで、あまり彼の目を見たくない。
「は、初めまして。ケイトです」
「フリーダという」
「フリーダさんのことは良く存じ上げております。質の良いエルフの魔具を何度か当ギルドで購入させていただきました」
直接の面識はないものの、ギルド長は彼女のことを以前から知っていたらしい。
「それで此度は城をお求めとのことですが」
「この国にあればそれを買いたい。ないのであれば、どこかの国で城が売りに出されているという情報でも良い」
最初はフリーダの家のそばに拠点をつくるつもりだった。だけどさすがに城は自分たちでは作れないので、購入した土地を俺たちの新たな拠点にすることにしたんだ。
「当ギルドに売却依頼がある城は三件ございます」
あるんだ!? てか三件も!?
城って、以外に売られてるんだな。
「うち一件は侯爵が住まわれていた古城で、売却希望額は金貨八万枚」
「は、八万枚……」
「予算が金貨三万枚とのことですので、こちらは除外させていただきます」
ギルド長が目の前に三本の指を立て、そのうちの一本を折る。
「二件目は男爵が見栄で建てた小さなお城。一般の住宅と同じように街の中にあります。城壁は薄いうえに低く、防衛面では優れているとはいえません。売却希望価格は金貨五千枚」
「おぉ、安いな」
「でも建ってるのは街の中かぁ」
できれば街から少し離れた場所にあった方がいい。この物件はギルド長が言うように、防衛面でも不安がありそうだ。
「では、こちらもなしと言うことで」
ギルド長の指がまた折りたたまれ、残るは一本。
「最後の物件です。こちらは売却希望価格三万枚。ファンメルという街から馬車で一日ほど離れた山中に建つ城です」
「予算ちょうどだ」
「街まで馬車で一日は遠いけど」
まぁ、日用品の買い物とかは俺の収納魔法で何とかなるだろう。
「城の状態としてはここが一番良く、内部に残された家具や調度品なども好きに使って良いと」
「えっ、家具とかもついてくるの!?」
俺としてはとても良い物件に思えたが、フリーダは手放しに喜んでいる様子ではなかった。
「城を持つような貴族が購入した家具や調度品がついているなら、金貨三万枚では安すぎないか?」
「良くお分かりで。実はこの物件、ひとつ問題があるのです」
「も、問題とは?」
「城の付近の山に力を持った盗賊団がアジトを構えまして……」
「まさか、そいつらが城を襲うのか?」
「でも盗賊団なら国の騎士団が討伐に行くんじゃ」
「元は国の依頼も受けていた傭兵団が盗賊になったのです。奴らが強すぎるため、討伐には騎士団も相当な覚悟が必要です。そこでこの国は、王都に奴らが攻めようとしない限り不干渉を決めました」
国に討伐を諦めさせるほどの戦力を持った盗賊団がいるってヤバい。国からの支援を受けられないなら、貴族が持つ私兵団くらいでは太刀打ちできないはず。
「じゃあ、その城が売りに出されたのは」
「……はい。城主であった白爵が逃げだしたのです。領民も連れて行きましたから、現在この城の周囲には盗賊団しかいません」
ガチでブラックな物件だった。
「そんな状態なら、城の中も盗賊団に荒らされているのでは?」
「そうならないよう、城主となった者にしか解けない強力な防衛魔法がかけられています。その魔法をかける費用もかさむため、本来の城や家具などの価値では考えられないほど低価格で売りに出されたわけです」
本当なら金貨三万枚以上の価値があるんだ。そう考えるとこの城が一層魅力的に思える。ただ問題は、国が討伐を諦めるほどの盗賊団の存在。
んー。どうしよう?
俺ひとりで討伐できるかな?
何日間かかけて少しづつ収納魔法で人数を削っていけば、割と安全に討伐はできると思う。もしこの城に決めるのであれば、盗賊団の壊滅は必須条件だが……。
とここで、俺はあることを思いついた。
「フリーダ、この城を買おう!」
「ほ、本気か? ケイト」
「あぁ! 俺に考えがある」
フリーダの耳元で俺の案を伝えた。
「そんなことが……。でももしそれが本当に可能なら、この物件はありだ。いや、ありなどころか、これほど良い条件はない」
少し考える素振りを見せた彼女は、俺を信じてくれたようだ。
「ギルド長。私たちにその城を売ってくれ!」
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