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エピローグ
しおりを挟む魔王軍四天王のひとり、操血のガビルを倒した勇者ルークスはその場で佇んでいた。
勝てたという実感はまだない。塵となって消えたガビルが再び目の前に転移門を開いて現れないかとルークスは少し警戒していた。だがその心配は杞憂だった。操血のガビルは跡形もなく消滅したのだ。
「俺が、勝った…のか?」
「や、やったな! ルークス」
「凄い一撃だった。さすが勇者」
アドルフとレイラが駆け寄ってくる。
「ありがと。でも普通に戦っていたら、たぶん俺はアイツに勝てなかった」
全力でかかって来いと言ったガビルの圧は凄まじく、一方的に攻撃できるはずのルークスに強い恐怖を与えた。常人なら身動きができなくなるほどの威圧感。それでも神託を受けた勇者はその恐怖に打ち勝ち、剣を振り下ろした。
「俺はまだまだ弱い。しかもアイツは四天王の席を引き継いだって言っていた」
「確かにそうだが……」
「さすがに嘘じゃないかな」
「それは分からない。でも前に戦ったヴァラクザードと同じくらいの威圧感だったから、あのガビルって奴が四天王なのは間違いないだろう。そしてアイツの言葉が本当だった場合、俺たちがいくら魔王軍四天王を倒しても、別の魔人が四天王になるだけなんだ」
ルークスの言葉を聞いて、アドルフとレイラの顔に絶望の色が浮かぶ。
「あ、あのクラスの奴らと、俺たちは今後も戦わなきゃいけないのか」
「あれで四天王でしょ? 鋼の魔人は更に上の存在がいるって」
「そう言うことだ。つまり俺たちは、四天王級の敵を普通に戦って倒せるようにならなきゃいけない。それ以上の力を付けなければ、魔王討伐なんで出来やしない」
絶望がレイラたちの心を覆い尽くそうとしていたが、ルークスの声を聞いていると何故か心が軽くなった。希望の光が心を照らすように感じた。
「修行しよう。強くなるために」
「修行、か」
「あっ。それって、もしかして」
レイラには心当たりがあった。
「そう、以前から挑戦しようと言っていた『試練の塔』に入る」
それは神が作った塔。
勇者が更なる力を得るための存在だ。
「でもあそこは、クリアできる勇者パーティーがほとんどいないって聞いてるぜ」
過去千年の間に試練の塔を踏破して力を得ることに成功したのは、たった三組。何十何百という勇者パーティーが魔王軍との戦闘ではなく、試練の塔で命を落としていた。
「だが、今のままじゃダメなのは確実なんだ。少しでも可能性があるなら、俺はそれに賭けたい」
「……はぁ。アンタのその目、もう決めちゃったんだね」
意志の固まったルークスを見て、諦めたようにレイラが呟いた。
「仕方ねぇな。こうなるとルークスは、俺たちが何言っても心変わりしないから」
「レイラ、アドルフ。ついてきてくれるか?」
「ルークスひとりでいかせるわけないじゃん」
「もちろん俺もついて行く。クリアしてやろうぜ、試練の塔を」
「ふたりとも、感謝する!」
「セリシアと合流して、彼女にも確認取らなきゃだね」
「ついてきてもらわないと困るな」
「無理強いはしたくないが……。俺も、彼女の力は絶対に必要になると思う」
聖女セリシアが参加するかの確認はこれから取るつもりだったが、勇者パーティーは今後、試練の塔に向かうことがほぼ決定した。
──***──
「ルークスたちは試練の塔ってところに向かうらしいな」
勇者たちがいる獣人の街からは遠く離れた場所にある城の一室で、ケイトがルークスたちの相談内容を盗み聞きしていた。その様子をそばで見ていたフリーダが疑問を持つ。
「君の収納魔法は確か、音は拾えないんじゃなかったか?」
「ちょっと前まではそうだったんだけど、音って振動でしょ? 振動を収納魔法の取り出し口から拾って、それをちょっと増幅させると普通に離れた場所の音も拾えるって分かったんだ」
ケイトの収納魔法は日々進化し続けていた。
「私と四天王の所に乗り込む際も、事前にそれで情報収集していましたからね」
「……なぁ、ケイト。この獣耳美女はどこのどなただ?」
ケイトと獣耳の美女が城に帰ってきて、収納魔法の千里眼でルークスたちの様子をのぞき見している所にフリーダがやって来た。勇者たちが重要そうな会話をしていたから、その言葉を聞き洩らさないようにフリーダは質問したいのを我慢していた。
「初めまして、フリーダ様。私は元魔王軍四天王、九尾のカエデと申します」
「ま、魔王軍四天王!?」
「元、ですよ。今は従順なるケイト様の配下です」
「配下とかじゃなくて家族が良いな。フリーダも、それで良いよね?」
「すけこましな奴だとは薄々気づいていたが、まさか敵幹部である四天王まで取り込むとは……。ケイトは自分がだいぶヤバいって自覚を持った方がいい」
ケイトに対して文句を言うが、家族が増えることに関しては認めた。以前『ハーレムOK宣言』をして以来、フリーダの気持ちは変わっていないようだ。
「ようこそ、カエデさん。これから共にケイトを支えていきましょう」
「は、はい! よろしくお願いいたします!!」
こうして元魔王軍四天王のひとりがケイトの家族に加わった。
【あとがき】
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
まだまだ続きそうな感じですが、一旦完結にしています。
ファンタジーカップ向けに新作も投稿予定ですので、そちらもよろしくお願いします!!
ではでは~。
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