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第3章 魔王軍四天王 ルマアニ
第二十七話
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俺達は、フォレの様子を見に、馬に乗って向かっていた。
「アルバ様、その、フォレの近くにあるという町はどのような場所なのでしょうか?」
「ああ、サルトゥスという、狩猟が盛んな町だよ。前に訪れたことがあるが、肉を特産として売る店が並んでいて、人の往来が多く、賑わっていたよ。」
「そうなのですか、とても楽しみです!」
一応、遊びにではなく、調査に行くのだが………まあ、少しぐらい観光してもいいだろう。
そう、思っていたのだが……
着いて門番に馬を預け、中に入ると、そこにはかつての記憶と違う景色が広がっていた。
「一体、何があったんだ?」
かつての賑わいは幻だったのではないかと疑う程に、人が歩いていなかった。店の大半が閉まっており、開いていたとしても棚の商品はほとんどない。脇道を見れば、飢えた子供達が無気力な目で寝転がっている。
何があったか、話を聞きたいが、話せる人がいるだろうか。
「ねえ、あそこの人に聞いてみようよ。」
ラルフが示した先には、空いている棚を掃除しているおばちゃんがいた。
早速、俺は、近づいて話しかけてみる。
「こんにちは。」
「おや、冒険者なんて、珍しいねぇ。残念だが、今日はもう品切だよ。」
おばちゃんは、こちらも見ずに働きながらそう言った。
俺は気にせず、話しかける。
「昔はもっと賑わっていたと思うのですが、何があったか伺っても?」
俺がそう言うと、おばちゃんはジトリと迷惑そうにこちらを見た後、また作業に戻っていく。
「金にもならない話をするほど、こっちは暇じゃないよ。」
それならば、と俺はいくらかお金を取り出して言う。
「…これなら、どうですか?」
「………わかった。こっちに座りな。」
おばちゃんにお金を渡して、用意してくれた椅子に、俺達は座る。
奥に入って道具を片付けに行ったおばちゃんが戻ってきて、俺達の向かいに座る。
「さて、何があったのか、だったっけね?」
「はい。以前、この町を訪れたことがあるのですが、そのときはもっと栄えていたと記憶しています。」
「ああ、確かに、昔は活気があったさ。」
おばちゃんは頷きながらそう言って、そして、話し始めた。
「けどね……丁度1年前くらいだったかね、密猟者が現れ始めたのさ。それも、食べるためならまだしも、ただの娯楽のために。」
そう言った声には、怒りと嫌悪が滲み出ていた。
おばちゃんは一度深呼吸して、続きを話し始める。
「この町に住む人々はね、フォレで狩った肉を食料にしてたし、それを観光客にも振る舞ってたんだ。あの森に住む動物は、あたしらが生きるために必要だったのさ。でも、動物達にも生活がある。だからこそ、狩りすぎないように、命を粗末にしないように、制限しながら日々感謝して暮らしてた。
ほら、弱肉強食とか食物連鎖ってあるだろう? その自然の秩序の、一部だったのさ、あたしらは。」
おばちゃんは、膝の上で拳を握りしめる。
「でも、その秩序をあいつらが壊しやがった。森の生活のことを考えず、あいつらだけの利益と一瞬の快楽のために、捕らえたり、殺したりしてまわったのさ。おかげで、撃ち捨てられて腐った肉がゴロゴロ転がってるし、動物はいなくなって、あたしらは食う物に困る。しかも、今じゃ、人を拒むように森に瘴気が満ちてる。
この辺りを治める貴族様に、密猟者と瘴気をどうにかするように町で嘆願書を出したが、聞き入れてもらえるような素振りはない。
痺れを切らした町の代表が、王に直訴しに行ったが、一向に帰ってこない。
そうして、今のこの状況ってわけさ。」
まさか、そんなことが起きていたとは。
瘴気の原因の検討はつくが、密猟者か……。オークションにいた動物や魔物は密猟されたものだったのだろう。
おばちゃんは立ち上がって言う。
「これで十分かい?」
「ああ、ありがとうございました。」
シッシッと手を振られたので、俺達は店を出た。
町の門まで歩きながら、ラルフとシエルに話しかける。
「さて、これからどうする?」
「どうするって、僕達は瘴気をどうにかするしかないだろうね。」
「しかし、瘴気は一体誰が…?」
「おそらく、魔王軍四天王の一人、ルマアニだろう。以前、フォレの奥深くでの目撃情報がギルドに上がっていた。」
ただ、他の四天王とは違い、一番近い人間の町に、それこそ、サルトゥスに攻めてこないので、今まで様子見されていた。
しかし、森を瘴気で満たしてきた以上、様子見という訳にはいかない。
俺は振り返り、ラルフとシエルに言う。
「行こう、ルマアニのところに。」
「りょーかい。」
「はい、アルバ様についていきます。」
俺は頷いて、再び町の外へ歩き出す。
門番に見送られながら町の外へ出て、フォレに向かう。サルトゥスから少し歩いたところにあった。
おばちゃんが言っていた通り、森には外からもわかるぐらい、瘴気が満ちているようだ。
リベルタのときのように俺が剣をかざすと、その周囲から瘴気が消えていく。
「行こう。」
俺達は森の中へと足を踏み入れた。
「アルバ様、その、フォレの近くにあるという町はどのような場所なのでしょうか?」
「ああ、サルトゥスという、狩猟が盛んな町だよ。前に訪れたことがあるが、肉を特産として売る店が並んでいて、人の往来が多く、賑わっていたよ。」
「そうなのですか、とても楽しみです!」
一応、遊びにではなく、調査に行くのだが………まあ、少しぐらい観光してもいいだろう。
そう、思っていたのだが……
着いて門番に馬を預け、中に入ると、そこにはかつての記憶と違う景色が広がっていた。
「一体、何があったんだ?」
かつての賑わいは幻だったのではないかと疑う程に、人が歩いていなかった。店の大半が閉まっており、開いていたとしても棚の商品はほとんどない。脇道を見れば、飢えた子供達が無気力な目で寝転がっている。
何があったか、話を聞きたいが、話せる人がいるだろうか。
「ねえ、あそこの人に聞いてみようよ。」
ラルフが示した先には、空いている棚を掃除しているおばちゃんがいた。
早速、俺は、近づいて話しかけてみる。
「こんにちは。」
「おや、冒険者なんて、珍しいねぇ。残念だが、今日はもう品切だよ。」
おばちゃんは、こちらも見ずに働きながらそう言った。
俺は気にせず、話しかける。
「昔はもっと賑わっていたと思うのですが、何があったか伺っても?」
俺がそう言うと、おばちゃんはジトリと迷惑そうにこちらを見た後、また作業に戻っていく。
「金にもならない話をするほど、こっちは暇じゃないよ。」
それならば、と俺はいくらかお金を取り出して言う。
「…これなら、どうですか?」
「………わかった。こっちに座りな。」
おばちゃんにお金を渡して、用意してくれた椅子に、俺達は座る。
奥に入って道具を片付けに行ったおばちゃんが戻ってきて、俺達の向かいに座る。
「さて、何があったのか、だったっけね?」
「はい。以前、この町を訪れたことがあるのですが、そのときはもっと栄えていたと記憶しています。」
「ああ、確かに、昔は活気があったさ。」
おばちゃんは頷きながらそう言って、そして、話し始めた。
「けどね……丁度1年前くらいだったかね、密猟者が現れ始めたのさ。それも、食べるためならまだしも、ただの娯楽のために。」
そう言った声には、怒りと嫌悪が滲み出ていた。
おばちゃんは一度深呼吸して、続きを話し始める。
「この町に住む人々はね、フォレで狩った肉を食料にしてたし、それを観光客にも振る舞ってたんだ。あの森に住む動物は、あたしらが生きるために必要だったのさ。でも、動物達にも生活がある。だからこそ、狩りすぎないように、命を粗末にしないように、制限しながら日々感謝して暮らしてた。
ほら、弱肉強食とか食物連鎖ってあるだろう? その自然の秩序の、一部だったのさ、あたしらは。」
おばちゃんは、膝の上で拳を握りしめる。
「でも、その秩序をあいつらが壊しやがった。森の生活のことを考えず、あいつらだけの利益と一瞬の快楽のために、捕らえたり、殺したりしてまわったのさ。おかげで、撃ち捨てられて腐った肉がゴロゴロ転がってるし、動物はいなくなって、あたしらは食う物に困る。しかも、今じゃ、人を拒むように森に瘴気が満ちてる。
この辺りを治める貴族様に、密猟者と瘴気をどうにかするように町で嘆願書を出したが、聞き入れてもらえるような素振りはない。
痺れを切らした町の代表が、王に直訴しに行ったが、一向に帰ってこない。
そうして、今のこの状況ってわけさ。」
まさか、そんなことが起きていたとは。
瘴気の原因の検討はつくが、密猟者か……。オークションにいた動物や魔物は密猟されたものだったのだろう。
おばちゃんは立ち上がって言う。
「これで十分かい?」
「ああ、ありがとうございました。」
シッシッと手を振られたので、俺達は店を出た。
町の門まで歩きながら、ラルフとシエルに話しかける。
「さて、これからどうする?」
「どうするって、僕達は瘴気をどうにかするしかないだろうね。」
「しかし、瘴気は一体誰が…?」
「おそらく、魔王軍四天王の一人、ルマアニだろう。以前、フォレの奥深くでの目撃情報がギルドに上がっていた。」
ただ、他の四天王とは違い、一番近い人間の町に、それこそ、サルトゥスに攻めてこないので、今まで様子見されていた。
しかし、森を瘴気で満たしてきた以上、様子見という訳にはいかない。
俺は振り返り、ラルフとシエルに言う。
「行こう、ルマアニのところに。」
「りょーかい。」
「はい、アルバ様についていきます。」
俺は頷いて、再び町の外へ歩き出す。
門番に見送られながら町の外へ出て、フォレに向かう。サルトゥスから少し歩いたところにあった。
おばちゃんが言っていた通り、森には外からもわかるぐらい、瘴気が満ちているようだ。
リベルタのときのように俺が剣をかざすと、その周囲から瘴気が消えていく。
「行こう。」
俺達は森の中へと足を踏み入れた。
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