夜明けの冒険譚

葉月

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オ・マ・ケ

おまけ①

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 これは、本編では語られない、しかし、確かにあったアルバ達の日常の1ページ。



  ◇ ◇ ◇



 シエルは、次に読む本を数冊持って、館の1階の廊下を歩いていた。
 シエルの部屋にも、本棚にたくさん本が置いてあったが、他にもこの館には図書室がある。

 学校の友達から魔法の歴史の面白い話を聞いて、読んでみたいと思ったのだが、シエルの部屋には、それに関する本が置いていなかった。
 それで、シエルがラルフに聞くと、図書室にあるかもと言うので、先ほどまで探索していたのだ。

 本をいくつか抱えて、シエルが自身の部屋に向かって廊下を歩いている途中、どこからか、いい匂いがしてきた。
 すぐ近くにある、厨房からのようである。
 シエルが厨房を覗くと、ちょうど、アルバがオーブンから何かを取り出しているところであった。
 アルバがこちらの気配に気づいたらしく、こちらを見る。

「どうした? シエル、何かあったのか?」

 シエルがアルバに近づく。
 アルバは、様々な形をした茶色く平たいお菓子を持っていた。
 シエルには知らないものがたくさんあり、現にアルバが何を作ったのかわからない。

「アルバ様、これは何ですか?」
「これは、クッキーって呼ばれるお菓子だよ。1つ、食べてみるか?」
「良いのですか?」
「あぁ。」

 アルバが笑顔で頷くので、シエルは星形のクッキーを1つ手にとって、口に入れる。
 歯で噛むと、サクッときれいな音をたてる。さらに、焼きたてホクホクの温もりと、ほのかな甘みが口の中に広がる。

「とても美味しいです。」
「それは、よかった。シエルが良ければ、一緒に作るか? といっても、生地はあるから、型抜きだけだが……。」
「作ってみたいです。」

 シエルの返事の早さに、アルバは驚き、微笑んだ。
 そして、アルバは冷蔵庫から平たい生地と、棚から型抜きの道具を取り出す。

「この道具を、こうやって生地に垂直に立てて、上からぐっと押すんだ。できそうか?」
「はい、わかりました。」

 一度、アルバが実演してみせて、シエルがそれの真似をする。
 ただの平らで大きな四角だった生地が、様々な形に彩られていく。
 シエルの手によって、ハート、星、丸などに、次々と抜かれていった。できるだけ、生地に切れ端が残らないように、シエルは抜いている。
 その一生懸命な姿に、アルバは微笑んだ。

「あとでラルフを呼んで、3人で食べよう。」
「はい。」

 その後も、シエルは順調に型抜きをし、ついに、最後ににっこりした顔の型に抜く。

「できました。」
「よし、後は焼くだけだから、机を拭くのを頼めるか?」
「はい、わかりました。それが終わったら、ラルフ様をお呼びしましょうか?」
「あぁ、頼む。」

 シエルは布巾を持って、すたすたと歩いて行く。クッキーの完成に、期待を膨らませながら。



 その後、オーブンでクッキーが焼き終わる頃に、シエルがラルフを連れてきた。
 アルバがクッキーを1つの皿にまとめ、机の真ん中に置く。早速、3人は席につき、1枚ずつ取って口に入れる。
 そのあまりの美味しさに、3人とも思わず頬が落ちそうになった。
 完成したクッキーは、良い焼き加減であり、これ以上のものは無いぐらいに絶品である。

「シエル、今度、また一緒に作ろうな。」
「はい、喜んで。」
「今度は僕も一緒に作りたーい!」
「へぇー、お前料理できるのか?」
「なっ、僕も少しぐらいはできるよ! ……たぶん。」
「ハハッ、本当かぁー?」

 美味しい料理で、会話も弾む。

 彼らの食卓は、今日も笑顔で溢れている。


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