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第1章 勇者の誕生
第一話
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ある日、一人の男が研究所に侵入した。
研究所の者は侵入者を殺そうとするも、男は手に持っている剣で次々と研究者達をなぎ倒していく。
研究所にいる者は全員、赤い目をしている。
「本当はこんなことはしたくないんだがな……。しかたない。」
それからも、男は敵を倒しながら、研究所の奥の方まで探索を始めた。
「ん?これは…?」
そのとき、男は右側に、不思議な水が入っている大きなカプセルのある部屋を見つける。
カプセルの中には一人の女の子が入っていた。それだけでなく、カプセルにはたくさんのチューブが接続されている。
「へんな研究してるなぁ。」
男はそう言いながら、カプセルの近くの机にある紙を読んだ。
どうやら、研究資料のようだ。ほとんど専門的でわからない部分が多いが、いくつかわかったことがある。
「これは……。」
パリーン
ガラスの割れる音がした。その音に警戒心を高める。スタスタと足音が男の方に近づく。
後ろから、女の子の声がした。
「あなたが、ご主人様ですか?」
後ろを振り向くと、女の子が立っていた。カプセルの中に入っていた、女の子だ。見た目でいうと、年は10才ぐらいだろうか。
男はその女の子に言った。
「ちがう。お前のご主人じゃない。」
そして、男が帰ろうと出口へ歩いて行くと、女の子も男の後ろについてきた。
「ついてくるなーー。」
男はその女の子から逃げようと、走って研究所を去った……。
俺は町はずれにある館の前に着いた。
結局女の子から逃げることができず、この子は後ろについてきてしまった。
思わずため息をつく。
「はぁ…。どうしようか、こいつ。」
「ご主人様、どうかしたのですか?」
「……。」
俺は女の子の方をちらりと見る。
女の子はずっと無表情だ。
俺はしばらく何も言えずにいたが、この子をこのままにしておくわけにはいかない。研究所に置いていきたかったが、それは俺の良心が痛むし、こいつが俺を「ご主人様」と呼んでいる以上俺についてくるつもりなのだろう。
もう、どうすることもできないと思ったので、とりあえず、「ご主人様」という呼び方を変えてもらうことにする。
「言っておくが、俺はお前のご主人様じゃない。俺の名前はアルバだ。」
「では、アルバ様?」
「……。それでいいよ、もう……。」
本当は、様呼びもやめてほしいのだが……。
俺は再びため息をついた。
「で、お前の名前は?」
「名前、ですか?アルバ様、私に名前はありません。ご自由にお呼びください。」
「そうだなぁ。」
名付けをあまりしたことがないので、深く長考してしまう。ペットではなく人間だから、慎重に考えなくては。
そこでふと、研究所の資料を思い出す。
「そうだ。シエルってのはどうだ?」
「はい。良い名前だと思います。」
名前をつけたとき、シエルが少し笑った気がしたので、俺もつられて笑った。
名前を気に入ってくれたのだろうか。
そして俺は、館の方を指す。
「あれは俺の家だ。まぁ、これからお前の家にもなる。」
「はい。アルバ様。」
俺はふり返り、シエルの方を向いて、笑顔で言った。
「これからよろしくな。シエル。」
「はい。」
二人で館の中に入っていった。
館の中はきちんと隅々まで清掃されていて、いつもきれいだ。さらに、いくつもの部屋があり、とてつもなく広い。
俺は空いている部屋を指さして言った。
「あの2階の一番右奥の部屋を使ってくれ。」
「承知しました。」
シエルはすぐに部屋の中へ入っていった。もちろん、中はきれいに整理整頓されていた。
これから、シエルとなる部屋には大きな本棚がある。その本棚には、魔物についての本や、魔法についての本、勇者の話などいろいろな本が置かれている。
俺がシエルの様子を見に行くと、勇者についての本を読んでいる姿があった。
最初からシエルは言葉を話すことができていたが、文字も読めるのだろうか。
しばらくすると、シエルが俺の近くに寄ってくる。
「アルバ様、これは何と書いているのですか。」
それを聞いて、俺は少しほっとした。さすがに、文字を読むことはできないのだな。
「わかった、俺が読むよ。」
そう言って、俺は勇者についての絵本を読み聞かせる。この本の内容を簡単に説明すると、
昔々、魔族と人間たちは仲良く暮らしていた。
あるとき、魔族が人間の村を襲ったため、人間と魔族は戦争をすることとなった。
魔族たちを治める魔王が現れ、魔族たちの勢いが増す頃、人間たちの王国にも勇者が現れた。
勇者は、悪い魔族を次々と倒していき、最後には魔王をも倒す。
そうして、ようやく世界に平和が訪れると誰もが思っていた。
しかし、人々の予想とは違い、約百年に一度、魔王と勇者が現れ、魔族と人間の争いは数千年経った今も続いている。
といった話だ。
この絵本を読み終わったあと、シエルが言った。
「今、この世界にも勇者は生まれているのですか。」
「あぁ、勇者と魔王が生まれてから、18年くらい経っているといわれている。今、勇者がどこで、何をしているかは誰にもわかっていないそうだが。」
「そうなのですね。」
そう言った後もシエルは、本を見つめていた。俺の読み聞かせをもとに文字を勉強しているのだろう。
俺がシエルから離れて、洗濯物を片付けに行こうとした、その時。
ガチャ、バーン
と勢いよく館の玄関の扉が開いた。
俺が玄関の方を見ると、俺の知り合いの青年が立っていた。それを見て俺は、はぁ、とため息をついて言った。
「お前なぁ、いつも言ってるだろ。扉を勢いよく開けるなって。」
「えー、だって、アルバの驚く顔が面白いんだもの。」
入ってきた青年は笑顔で言う。
そして、青年はシエルの方を見て指さした。
「誰、あの子?」
俺はシエルを青年の方まで連れてきた。
シエルにこの青年について紹介する。
「こいつはラルフ。この館に住んでいて、俺の友人だ。そして、弓の使い手でもある。ラルフは目が見えないから、『心眼』というスキルを常に使って、周りを見ているんだ。」
「そうなのですね。」
『心眼』は、その言葉の通り、心の目を使うことで、俺たちが目で見ている景色と、ほとんど同じように見ることができるという魔法だ。
まあ、これはラルフの場合で、一般的な使われ方は、壁の向こうや暗闇の中など肉眼では見えない場合に状況把握に使われる魔法である。
そして、俺はラルフの方を向いて言った。
「この子はシエルだ。この前のクエストでいろいろあって、この館の住人になった。」
ラルフは、シエルの方を向いて言う。
「よろしくね、シエル君。」
するとシエルも少し警戒を解いたのか、こう言った。
「よろしくお願いします、ラルフ様。」
3人で館の中でしばらくのんびりしていると、外から大きな物音が聞こえた。近くにある、森の方から聞こえるようだ。
俺は様子を見に、窓を眺めた。そのあと、ラルフを呼びに、ラルフのいる部屋に向かった。
部屋の扉を開け、中を見ると、部屋のソファで横になって、ラルフは眠っていた。
俺は、ラルフを起こす。
「外で少し大きめ暴れイノシシが出たみたいなんだが、倒してきてくれないか。」
「えー、めんどくさい。」
ラルフはそう言いながらも、部屋に置いていた弓矢を取り、森の方へ向かった。
その様子を見ていたらしく、シエルは部屋から出てきた俺に聞いた。
「ラルフ様1人で大丈夫なのですか?」
俺は少し考えてから、答える。
「まぁ、暴れイノシシくらいなら、あいつだけで充分だろ。あいつ結構強いし。」
そう、ラルフは強いのだ。何回も共闘しているから、ラルフの強さは俺がよく知っているし、とても信頼している。
シエルが心配そうな顔をしていたので、俺は言った。
「心配しなくてもすぐに帰ってくるよ。」
「そうですか。」
俺の言葉を聞いて安心したシエルは、部屋に戻っていく。
俺はラルフの帰りを待ちつつ、キッチンに向かった。
研究所の者は侵入者を殺そうとするも、男は手に持っている剣で次々と研究者達をなぎ倒していく。
研究所にいる者は全員、赤い目をしている。
「本当はこんなことはしたくないんだがな……。しかたない。」
それからも、男は敵を倒しながら、研究所の奥の方まで探索を始めた。
「ん?これは…?」
そのとき、男は右側に、不思議な水が入っている大きなカプセルのある部屋を見つける。
カプセルの中には一人の女の子が入っていた。それだけでなく、カプセルにはたくさんのチューブが接続されている。
「へんな研究してるなぁ。」
男はそう言いながら、カプセルの近くの机にある紙を読んだ。
どうやら、研究資料のようだ。ほとんど専門的でわからない部分が多いが、いくつかわかったことがある。
「これは……。」
パリーン
ガラスの割れる音がした。その音に警戒心を高める。スタスタと足音が男の方に近づく。
後ろから、女の子の声がした。
「あなたが、ご主人様ですか?」
後ろを振り向くと、女の子が立っていた。カプセルの中に入っていた、女の子だ。見た目でいうと、年は10才ぐらいだろうか。
男はその女の子に言った。
「ちがう。お前のご主人じゃない。」
そして、男が帰ろうと出口へ歩いて行くと、女の子も男の後ろについてきた。
「ついてくるなーー。」
男はその女の子から逃げようと、走って研究所を去った……。
俺は町はずれにある館の前に着いた。
結局女の子から逃げることができず、この子は後ろについてきてしまった。
思わずため息をつく。
「はぁ…。どうしようか、こいつ。」
「ご主人様、どうかしたのですか?」
「……。」
俺は女の子の方をちらりと見る。
女の子はずっと無表情だ。
俺はしばらく何も言えずにいたが、この子をこのままにしておくわけにはいかない。研究所に置いていきたかったが、それは俺の良心が痛むし、こいつが俺を「ご主人様」と呼んでいる以上俺についてくるつもりなのだろう。
もう、どうすることもできないと思ったので、とりあえず、「ご主人様」という呼び方を変えてもらうことにする。
「言っておくが、俺はお前のご主人様じゃない。俺の名前はアルバだ。」
「では、アルバ様?」
「……。それでいいよ、もう……。」
本当は、様呼びもやめてほしいのだが……。
俺は再びため息をついた。
「で、お前の名前は?」
「名前、ですか?アルバ様、私に名前はありません。ご自由にお呼びください。」
「そうだなぁ。」
名付けをあまりしたことがないので、深く長考してしまう。ペットではなく人間だから、慎重に考えなくては。
そこでふと、研究所の資料を思い出す。
「そうだ。シエルってのはどうだ?」
「はい。良い名前だと思います。」
名前をつけたとき、シエルが少し笑った気がしたので、俺もつられて笑った。
名前を気に入ってくれたのだろうか。
そして俺は、館の方を指す。
「あれは俺の家だ。まぁ、これからお前の家にもなる。」
「はい。アルバ様。」
俺はふり返り、シエルの方を向いて、笑顔で言った。
「これからよろしくな。シエル。」
「はい。」
二人で館の中に入っていった。
館の中はきちんと隅々まで清掃されていて、いつもきれいだ。さらに、いくつもの部屋があり、とてつもなく広い。
俺は空いている部屋を指さして言った。
「あの2階の一番右奥の部屋を使ってくれ。」
「承知しました。」
シエルはすぐに部屋の中へ入っていった。もちろん、中はきれいに整理整頓されていた。
これから、シエルとなる部屋には大きな本棚がある。その本棚には、魔物についての本や、魔法についての本、勇者の話などいろいろな本が置かれている。
俺がシエルの様子を見に行くと、勇者についての本を読んでいる姿があった。
最初からシエルは言葉を話すことができていたが、文字も読めるのだろうか。
しばらくすると、シエルが俺の近くに寄ってくる。
「アルバ様、これは何と書いているのですか。」
それを聞いて、俺は少しほっとした。さすがに、文字を読むことはできないのだな。
「わかった、俺が読むよ。」
そう言って、俺は勇者についての絵本を読み聞かせる。この本の内容を簡単に説明すると、
昔々、魔族と人間たちは仲良く暮らしていた。
あるとき、魔族が人間の村を襲ったため、人間と魔族は戦争をすることとなった。
魔族たちを治める魔王が現れ、魔族たちの勢いが増す頃、人間たちの王国にも勇者が現れた。
勇者は、悪い魔族を次々と倒していき、最後には魔王をも倒す。
そうして、ようやく世界に平和が訪れると誰もが思っていた。
しかし、人々の予想とは違い、約百年に一度、魔王と勇者が現れ、魔族と人間の争いは数千年経った今も続いている。
といった話だ。
この絵本を読み終わったあと、シエルが言った。
「今、この世界にも勇者は生まれているのですか。」
「あぁ、勇者と魔王が生まれてから、18年くらい経っているといわれている。今、勇者がどこで、何をしているかは誰にもわかっていないそうだが。」
「そうなのですね。」
そう言った後もシエルは、本を見つめていた。俺の読み聞かせをもとに文字を勉強しているのだろう。
俺がシエルから離れて、洗濯物を片付けに行こうとした、その時。
ガチャ、バーン
と勢いよく館の玄関の扉が開いた。
俺が玄関の方を見ると、俺の知り合いの青年が立っていた。それを見て俺は、はぁ、とため息をついて言った。
「お前なぁ、いつも言ってるだろ。扉を勢いよく開けるなって。」
「えー、だって、アルバの驚く顔が面白いんだもの。」
入ってきた青年は笑顔で言う。
そして、青年はシエルの方を見て指さした。
「誰、あの子?」
俺はシエルを青年の方まで連れてきた。
シエルにこの青年について紹介する。
「こいつはラルフ。この館に住んでいて、俺の友人だ。そして、弓の使い手でもある。ラルフは目が見えないから、『心眼』というスキルを常に使って、周りを見ているんだ。」
「そうなのですね。」
『心眼』は、その言葉の通り、心の目を使うことで、俺たちが目で見ている景色と、ほとんど同じように見ることができるという魔法だ。
まあ、これはラルフの場合で、一般的な使われ方は、壁の向こうや暗闇の中など肉眼では見えない場合に状況把握に使われる魔法である。
そして、俺はラルフの方を向いて言った。
「この子はシエルだ。この前のクエストでいろいろあって、この館の住人になった。」
ラルフは、シエルの方を向いて言う。
「よろしくね、シエル君。」
するとシエルも少し警戒を解いたのか、こう言った。
「よろしくお願いします、ラルフ様。」
3人で館の中でしばらくのんびりしていると、外から大きな物音が聞こえた。近くにある、森の方から聞こえるようだ。
俺は様子を見に、窓を眺めた。そのあと、ラルフを呼びに、ラルフのいる部屋に向かった。
部屋の扉を開け、中を見ると、部屋のソファで横になって、ラルフは眠っていた。
俺は、ラルフを起こす。
「外で少し大きめ暴れイノシシが出たみたいなんだが、倒してきてくれないか。」
「えー、めんどくさい。」
ラルフはそう言いながらも、部屋に置いていた弓矢を取り、森の方へ向かった。
その様子を見ていたらしく、シエルは部屋から出てきた俺に聞いた。
「ラルフ様1人で大丈夫なのですか?」
俺は少し考えてから、答える。
「まぁ、暴れイノシシくらいなら、あいつだけで充分だろ。あいつ結構強いし。」
そう、ラルフは強いのだ。何回も共闘しているから、ラルフの強さは俺がよく知っているし、とても信頼している。
シエルが心配そうな顔をしていたので、俺は言った。
「心配しなくてもすぐに帰ってくるよ。」
「そうですか。」
俺の言葉を聞いて安心したシエルは、部屋に戻っていく。
俺はラルフの帰りを待ちつつ、キッチンに向かった。
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