悪の組織によって改造された俺は失敗作として廃棄され、魔法少女に寄生する

重弘 茉莉

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24話目:奏矢の覚醒

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 奏矢は再度、銀色の瞳の双眸で二宮を睨みつける。そして手でシッシッと二宮をどこかへ行くように指示を出す。二宮は目の前の事態を飲み込めずに座り込んで呆然としていたが、ハッとしてマジマジと奏矢を見つめ返す。

「え、意味わかんないんだけど…? え、あの銀色のスライムが、え? アンタ、なに、これ。あれ、天野、さんは」


「早く失せろって言ったのが聞こえなかったのか? 俺が誰だって、お前には関係ない」


 二宮からしたらぼろぼろだったリリが一瞬で回復した挙句、ピンクの可愛いワンピースを着た状態で普段からは想像できないほどの荒々しい口調で喋っているのだ。そんな混乱する二宮の肩を、奏矢は小突く。

「消・え・ろ、早く」

 
「ひっ」


 二宮はテナント内にある試着室へと飛び込むと、カーテンを引いて息を殺す。その様子を見て奏矢は『あいつ、あんなところに隠れてどうするつもりなんだ?』と思いながらも、床に転がったテナント内に転がっているサボテン鉢と真っ赤なTシャツを拾うと割れたガラスを踏み越えてテナントから出る。


「…あのクソ牛」


 肺に溜まった血を口から床へと吐き出すと、首を左右に振って関節を大きく鳴らす。そして奏矢は離れたところを歩く牛型怪人ミノタウを見つけると、サボテン鉢を思い切り振りかぶり、投げる。サボテンは真っ直ぐにミノタウの後頭部へと飛んでいき、蜂が割れる大きな音を立ててミノタウの後頭部で砕け散る。頭にサボテンの針が突き刺さった状態で、ミノタウはイラついて振り返ると、手に持った赤いTシャツをひらひらと挑発するように降る奏矢の姿が小さく見えた。
 


「あァ?」


「早く来いよ、ほら。赤いヒラヒラもあるぞ? 一回、牛相手に、やってみたかったんだ」


  まるで闘牛士がするように、奏矢は両手で赤いTシャツを持ってミノタウを挑発する。ミノタウはそれを見ながら頭に刺さった針を頭を振って振り落とすと、奏矢を睨みつけ、そしてその場から消える。


「おっ?」


 ミノタウの姿が消え、そして一拍の間を置いて硬い蹄が床を蹴る音が聞こえる。そして一定の間隔を置いて奏矢に向かってその音は近づいてくる。奏矢は数メートル先で蹄の音がすると同時に、手に持っていた赤いTシャツを後ろへと投げ捨てる。次の瞬間、奏矢の背後に現れた拳を振り下ろすミノタウの顔に投げ捨てた赤いTシャツが張り付く。


「うォッ!?」


 ミノタウの視界が赤いTシャツによって赤く染まる。だが、拳を振り下ろす勢いは止められない。視界がないまま、奏矢が居た場所に向かって拳を振り下ろす。


 重い音が1つ。ショッピングモールに響き渡る。ミノタウの拳が床に突き刺さり、床が砕けてコンクリートが露出する。だが、砕けたのは床だけ。目標である奏矢にはかすってすらいなかった。


「遅いんだよっ!」


 奏矢は床に突き刺さったミノタウの拳をかかとで思い切り踏み潰す。そしてそのまま右腕の肘辺りを掴むと、本来曲がるべき方向とは反対の方向に叩き折る。ミノタウは咄嗟に折れた右腕を引き戻そうとしたが、奏矢に踏まれたままの拳が床から離れない。  

 1発、2発、3発。
奏矢の拳が折れた関節部に叩き込まれる。痛みで悲鳴をあげ、動く左手で奏矢を振り払えたときには右腕は肘から曲がってはいけない方向に曲がり、肘関節の骨は体の外へ飛び出していた。


「…お前、なんなんダ?  さっきのやつと似ているガ」


 ミノタウは奏矢から一瞬で離れる。そして距離を取り、右腕を押さえながら問いかける。『さっき殺したはず、いや、あんなにボコボコにしたのに元気に動いているのはありえない』、ミノタウは荒い吐息を漏らしながら奏矢を一瞬でも視界から離さまいと睨みつける。同時に荒れた息を整えていく。


 奏矢はその問いかけには返答せず、にっこりと笑顔をミノタウへと向ける。そして脚に力を込めると一気にミノタウの胸元へと飛び込んだ。反応が遅れ、その場から離れられなかったミノタウの胸の毛を思い切り掴みながら、奏矢は囁くように先程の問いに答える。


「俺がなんだって? お前には関係ない」


 
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