2 / 22
『第1章 転落、紅き龍との契約』
転落、闇を突き抜けて
しおりを挟む
蒲生 悠は底が見えない闇の中を落下していた。
振り返ると、見る間に小さくなっていく自身が落ちてきた洞窟の入り口を見ながらぼんやりと思う。
(ああ、あんな洞窟なんて覗き込むんじゃなかった)
気晴らしにやってきた人気のない、山間の渓流。 夕間詰めを過ぎ、夕日も落ちかけて薄暗くなった渓流の釣り帰りから、ふと目についた洞窟。それをほんの少しだけ覗き込んだ結果、足を滑らせて闇の中へと転げ落ちたのだ。
悠は浮遊感を感じながらも、帽子と背に掛けたロッドケース、そしてたんまり中身の詰まったクーラーボックスを離さないように体に巻き込みながら闇の中に落ちていく。そして主水の脳裏に浮かぶのは、人生の走馬燈。母子家庭の一人っ子で育ち、平凡な学生生活を送り、そして工場の隅で働いてきた10年間の記憶。
(俺は、俺はいつまで落ちるんだ)
走馬燈が4回目に突入した頃、悠はいつまでも体に来ない衝撃に辺りを見渡す。
先ほどまでは底すら見えぬ闇の中。だが、いつの間にか辺りには小さく輝いていた。まるでそれは 天の川のように、小さいがはっきりとした光を放っていた。
(なんて、綺麗なんだ)
そう、悠が思ったのもつかの間。
顔に当たる、小さな砂粒。その砂粒に気を取られたと同時に体のあちこちに石が何個もぶつかり始める。
「痛ってぇっ!?? 何だ!?」
遠くに小さい粒が見え、痛みから一瞬だけ目を閉じる蒲生。次に眼を開けた瞬間、視界いっぱいに迫る大きな岩。それは岩と言うよりもまるで隕石。
幾重もの隕石群が、悠に迫っていたのだった。
「ああああっ!??」
蒲生は大きな叫びを上げて身をこわばらせる。
眼前に大岩が迫り、ぶつかるかと思った瞬間。
(……えっ)
先ほどまで凄まじい勢いで迫って大岩が、ゆっくりとした速度になっていた。
頭からぶつかる体勢だったのを宙返りすることで、足から隕石に”着地”する。
(えっ、何がっ!?)
理解出来ないままに着地をしたと同時に、周囲の速度も元に戻る。
隕石は弾丸の様に飛び、隕石同士がぶつかることで生じた破片が頬のギリギリの所を掠める。
破片が掠った頬から血が重力に逆らって宙に舞い、次々と降り注ぐ破片を両の手で必死になって身を守る。
(夢ならっ、早くっ、覚めてくれっ!)
腕や肩、背中から走る痛みに耐えながら祈るようにうずくまる。
そうして悠が少しばかりの時間、その痛みに耐えた頃。辺りが急に眩く光り輝き始める。
「まぶしっ!?」
と同時に大きな衝撃が悠の体を包み込む。
深い、深い闇の底。底には眩い、眩い黄金の輝き。悠は隕石群と一緒になって黄金の海へと落ちていく。
「うおぉぉぉっ!???」
黄金の海にぶつかる瞬間、再度悠の視界はスローモーションになる。
ゆっくりした時間の中で黄金の海をよく見ると、それらは小さな黄金の硬貨であった。『金貨がクッションになるかもしれない』と、乗ってきた隕石を蹴飛ばすと、できる限りの力で少しでも遠くへと跳躍する。
「死にたくねぇええええっ!!!」
悠が金貨の海へと飛び込むと同時に、ちょうど金貨が山のようになっている離れた場所に隕石がいくつも落ちる。
大きく重い音が辺りに響き、悠の額には冷や汗が滴り落ちる。そして冷や汗を拭いながら、辺りを見渡す。
(俺、あんなところから落ちてきたのか。てか、この金貨、大発見じゃないのか?)
辺りを見渡すと大きさはちょうど小学校ほどの空間であり、金色の炎に覆われた壁と大穴が開いた天井。
悠は数枚の金貨をポケットに詰めながら、この空間からの脱出方法を思案する。そんなことを考えながらぼんやりと見ていたが、急に辺りが振動し始める。
(えっ、えっ)
金貨の山が鳴動し、盛り上がり、崩れ落ちる。
現れたのは人間1人を飲み込むことなど造作もない大きな体躯を持つ紅き龍。
「えっ、ド、ドラゴンッ!?」
紅き鱗に、黄金の装飾品を体に巻き付けた深紅の龍。ゲームやマンガでよく見るようなそのままのドラゴンがそこには居た。
その紅き龍の真っ赤な眼光が、悠に向けられていたのだった。
振り返ると、見る間に小さくなっていく自身が落ちてきた洞窟の入り口を見ながらぼんやりと思う。
(ああ、あんな洞窟なんて覗き込むんじゃなかった)
気晴らしにやってきた人気のない、山間の渓流。 夕間詰めを過ぎ、夕日も落ちかけて薄暗くなった渓流の釣り帰りから、ふと目についた洞窟。それをほんの少しだけ覗き込んだ結果、足を滑らせて闇の中へと転げ落ちたのだ。
悠は浮遊感を感じながらも、帽子と背に掛けたロッドケース、そしてたんまり中身の詰まったクーラーボックスを離さないように体に巻き込みながら闇の中に落ちていく。そして主水の脳裏に浮かぶのは、人生の走馬燈。母子家庭の一人っ子で育ち、平凡な学生生活を送り、そして工場の隅で働いてきた10年間の記憶。
(俺は、俺はいつまで落ちるんだ)
走馬燈が4回目に突入した頃、悠はいつまでも体に来ない衝撃に辺りを見渡す。
先ほどまでは底すら見えぬ闇の中。だが、いつの間にか辺りには小さく輝いていた。まるでそれは 天の川のように、小さいがはっきりとした光を放っていた。
(なんて、綺麗なんだ)
そう、悠が思ったのもつかの間。
顔に当たる、小さな砂粒。その砂粒に気を取られたと同時に体のあちこちに石が何個もぶつかり始める。
「痛ってぇっ!?? 何だ!?」
遠くに小さい粒が見え、痛みから一瞬だけ目を閉じる蒲生。次に眼を開けた瞬間、視界いっぱいに迫る大きな岩。それは岩と言うよりもまるで隕石。
幾重もの隕石群が、悠に迫っていたのだった。
「ああああっ!??」
蒲生は大きな叫びを上げて身をこわばらせる。
眼前に大岩が迫り、ぶつかるかと思った瞬間。
(……えっ)
先ほどまで凄まじい勢いで迫って大岩が、ゆっくりとした速度になっていた。
頭からぶつかる体勢だったのを宙返りすることで、足から隕石に”着地”する。
(えっ、何がっ!?)
理解出来ないままに着地をしたと同時に、周囲の速度も元に戻る。
隕石は弾丸の様に飛び、隕石同士がぶつかることで生じた破片が頬のギリギリの所を掠める。
破片が掠った頬から血が重力に逆らって宙に舞い、次々と降り注ぐ破片を両の手で必死になって身を守る。
(夢ならっ、早くっ、覚めてくれっ!)
腕や肩、背中から走る痛みに耐えながら祈るようにうずくまる。
そうして悠が少しばかりの時間、その痛みに耐えた頃。辺りが急に眩く光り輝き始める。
「まぶしっ!?」
と同時に大きな衝撃が悠の体を包み込む。
深い、深い闇の底。底には眩い、眩い黄金の輝き。悠は隕石群と一緒になって黄金の海へと落ちていく。
「うおぉぉぉっ!???」
黄金の海にぶつかる瞬間、再度悠の視界はスローモーションになる。
ゆっくりした時間の中で黄金の海をよく見ると、それらは小さな黄金の硬貨であった。『金貨がクッションになるかもしれない』と、乗ってきた隕石を蹴飛ばすと、できる限りの力で少しでも遠くへと跳躍する。
「死にたくねぇええええっ!!!」
悠が金貨の海へと飛び込むと同時に、ちょうど金貨が山のようになっている離れた場所に隕石がいくつも落ちる。
大きく重い音が辺りに響き、悠の額には冷や汗が滴り落ちる。そして冷や汗を拭いながら、辺りを見渡す。
(俺、あんなところから落ちてきたのか。てか、この金貨、大発見じゃないのか?)
辺りを見渡すと大きさはちょうど小学校ほどの空間であり、金色の炎に覆われた壁と大穴が開いた天井。
悠は数枚の金貨をポケットに詰めながら、この空間からの脱出方法を思案する。そんなことを考えながらぼんやりと見ていたが、急に辺りが振動し始める。
(えっ、えっ)
金貨の山が鳴動し、盛り上がり、崩れ落ちる。
現れたのは人間1人を飲み込むことなど造作もない大きな体躯を持つ紅き龍。
「えっ、ド、ドラゴンッ!?」
紅き鱗に、黄金の装飾品を体に巻き付けた深紅の龍。ゲームやマンガでよく見るようなそのままのドラゴンがそこには居た。
その紅き龍の真っ赤な眼光が、悠に向けられていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる