妻と浮気と調査と葛藤

pusuga

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予兆はテンプレート

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 (遂にこの日が来たか……)

 見上げる眼前にそびえ立つ、長方形のコンクリート。外観はともかく裁きを下す公共施設の様だ。

 さあどうする?
 このまま意を決して突入か?

 そもそも探偵に依頼したのは自分じゃないか。疑惑から確信に変わる己の心の瞬間を目の当たりにしたじゃないか。迷いなんてないはずだ。今の所、結果は神のみぞ知る状態。どんな結果であれ、それを受け止める心の準備を着々と進めて来た。

 さあ入るぞ。

 妻の浮気の予兆に気付いたのは3ヶ月前の忘れもしない10月29日。
 
 ①携帯を肌見離さず持つ様になった
 ②自分の外見を気にする様になった
 ③急に友人と付き合いが多くなった
 ④スキンシップを避ける様になった
 ⑤帰宅の時間を気にする様になった

 浮気の兆候のテンプレートを炸裂しまくった挙げ句、積み上げられた賽の河原の石はその三日後、遂に無惨にも蹴飛ばされガラガラと崩れ落ちる。

 (年明けに友人との旅行だと?)
 随分と舐められた物だ。

 意を決して探偵事務所がある5階に向かう為、エレベーターの上昇ボタンを押す。
 なんだ?五階に止まっていたのか。普通誰も乗ってないエレベーターは自動で一階に待機するんじゃないのか?
 スピードアップをする訳でもないがカチャカチャと何度も上昇ボタンを押して催促する。これじゃあ精神分析が好きな人から見たら気が短い人だとドヤ顔で判定されてしまうだろう。

 落ち着こう。
 約束の時間まであと30分もある。一度建物の外に出る。

 もし他の依頼人がいたら待たされる可能性がある。探偵事務所の個室で一人悶々として待たされるのは御免だ。     同じ悶々と考えるなら、ビルの隙間で考えよう。

 ここは路上喫煙禁止取締重点区域ではない。ビルとビルの隙間でタバコに火をつける。

(あーそう言えば、婚約中に空き缶を灰皿替わりにして怒ってたなアイツは)
 それ以来携帯灰皿は俺の必需品になっていた。
 もう結果は出ているがポイ捨てなんかしたら、罰があたり未来が改変される……訳はないんだがここは自重せねばならない。

 フーッ。

 (ちょっと待て?もし結果がシロ、つまり浮気していない、本当に友達と遊びに行ってただけだったら?)

 結婚して三年。子供には恵まれなかった。
 俺は少し妻の……いや、結婚して三年専業主婦である女性の気持ちを考えてみる事にした。
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