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驚愕のおかえりなさい
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「以上が身上調査報告です。当探偵事務所の見解としては、もし芥川様の依頼が婚姻前であれば結婚相手として奥様は全く問題ないと言わざるを得ません」
「……なるほど」
「芥川様。今までの内容の中で、一つだけ継続調査に値すると思われる件があります」
「え?あ、はい」
「最初にご報告させて頂きました、期間中の外出の件ですが……」
「外出の件?ああ、一日だけ同性の友人との昼食の事ですね?」
「そうです。その女性の方は事前に頂きました交友関係のリストには掲載されていなかった方でした」
まあ、それはあり得る事だろう。友達と言う一つの括りで片付けてしまえば、妻がわざわざ名前を俺に報告、もしくは俺が詮索する必要はないからな。ましては同性であるのだから。
「その同性の友人と思われる方も念の為に調査させて頂きましたが、期間中では、お住まいはわかりましたが氏名はわかりませんでした」
「そうですか」
これはわざとわからないと伝えて、継続調査させ追加の費用を請求すると言った手法か?まあどこの業界でもある営業テクニックと言った所か。別に構わないが。
「念の為、その友人の方の賃貸マンションの契約者を調べさせて頂きましたが、契約者名義は男性でした。私共としては親御さんか交際している男性であるかと推察しましたが、親御さんは該当人物がいませんでした。但し交際している男性か、または別の交友関係の方を名義人とされている可能性があります。けれども、この事は芥川様の今回の依頼とは無関係案件だと判断し、それ以上の調査は行いませんでした」
確かにそうだ。同性の友人が住んでいるマンションの契約者が誰であろうと関係ない。氏名がわからないとは言え、その後調査する必要もないとする判断は妥当だと俺も思う。むしろ契約者まで調査した。これで十分だ。良心的な探偵事務所じゃないか。
「どうされましょう?この友人と思われる方の調査を身元が判明するまで続けますか?」
「いや、しなくて大………」
しなくて大丈夫と言いかけたが、外堀は全て埋める、疑問は小さな事も解消する。そう決めたじゃないか。
このままわからない状態でいれば、あの友人は誰だ?と疑う様な聞き方で妻に質問する可能性もある。ほぼ関係ないと思うが、まあここまで乗りかかった船だ。
「いえ。失礼。念の為に調べて下さい。今後の調査に関しては妻が行くと言ってた年明けの旅行まで続行して下さい。追加費用に関しては遠慮なく請求して下さい」
第三者の調査で現時点では妻が真っ白だと判明した。しかし、何故か俺の疑念はテンプレートと言う脆弱な物の為に消えない。別に意固地になっているわけではないのだ。
その後、再度調査契約書にサインをし探偵事務所を後にする。本日は11月15日だ。最後の報告は少し先の1月10日に設定。
朝の暖かさから一変し冷え込んでいたが寒さは感じなかった。疑いの気持ちはとりあえず棚上げしておき、妻とは普通に接する事にすると自分を納得させた。
今日は妻を抱いてみるかな?
安堵なのか、現実逃避だかわからない、やり場のない時に発生する男の性欲が自然と湧き出た。こんな気持ちで妻を抱くのは、ただのはけ口と思われなくもない。何も知らない妻に失礼だ。
それにそもそも無理だ。
最後の愛しあった夜を過ごした日から、テンプレートの一つであるスキンシップを嫌がられるようなって、約3ヶ月が経過していた。
くどい様だが、そもそも浮気を確信した忘れもしない10月29日。
それは理由の一つでもあるじゃないか?馬鹿か俺は?
まだ調査は終わってない。それまでは、スキンシップなど求めず、疑念のままで構わないから夫婦であることの喜びを噛みしめる事にしよう。
「ただいま」
「おかえりなさい。半休取ったって言ってたけど遅かったのね?」
うん。いつもと変わりない『おかえりなさい』だ。もう何がなんだかわからない。
「ああ。なかなか帰りづらくてな」
「出来たよ!」
「ああ、あのワニのぬいぐるみか?苦戦してたもんな」
「何言ってんの?違うよ!赤ちゃんだよ!」
「………え?」
嘘偽りのない、満面の笑みで俺に愛想を振り撒く妻に新たな疑念が生まれた瞬間だった。同時に新たに生まれた自己嫌悪の感情とが激しく俺の心の中で戦い始めた。
「……なるほど」
「芥川様。今までの内容の中で、一つだけ継続調査に値すると思われる件があります」
「え?あ、はい」
「最初にご報告させて頂きました、期間中の外出の件ですが……」
「外出の件?ああ、一日だけ同性の友人との昼食の事ですね?」
「そうです。その女性の方は事前に頂きました交友関係のリストには掲載されていなかった方でした」
まあ、それはあり得る事だろう。友達と言う一つの括りで片付けてしまえば、妻がわざわざ名前を俺に報告、もしくは俺が詮索する必要はないからな。ましては同性であるのだから。
「その同性の友人と思われる方も念の為に調査させて頂きましたが、期間中では、お住まいはわかりましたが氏名はわかりませんでした」
「そうですか」
これはわざとわからないと伝えて、継続調査させ追加の費用を請求すると言った手法か?まあどこの業界でもある営業テクニックと言った所か。別に構わないが。
「念の為、その友人の方の賃貸マンションの契約者を調べさせて頂きましたが、契約者名義は男性でした。私共としては親御さんか交際している男性であるかと推察しましたが、親御さんは該当人物がいませんでした。但し交際している男性か、または別の交友関係の方を名義人とされている可能性があります。けれども、この事は芥川様の今回の依頼とは無関係案件だと判断し、それ以上の調査は行いませんでした」
確かにそうだ。同性の友人が住んでいるマンションの契約者が誰であろうと関係ない。氏名がわからないとは言え、その後調査する必要もないとする判断は妥当だと俺も思う。むしろ契約者まで調査した。これで十分だ。良心的な探偵事務所じゃないか。
「どうされましょう?この友人と思われる方の調査を身元が判明するまで続けますか?」
「いや、しなくて大………」
しなくて大丈夫と言いかけたが、外堀は全て埋める、疑問は小さな事も解消する。そう決めたじゃないか。
このままわからない状態でいれば、あの友人は誰だ?と疑う様な聞き方で妻に質問する可能性もある。ほぼ関係ないと思うが、まあここまで乗りかかった船だ。
「いえ。失礼。念の為に調べて下さい。今後の調査に関しては妻が行くと言ってた年明けの旅行まで続行して下さい。追加費用に関しては遠慮なく請求して下さい」
第三者の調査で現時点では妻が真っ白だと判明した。しかし、何故か俺の疑念はテンプレートと言う脆弱な物の為に消えない。別に意固地になっているわけではないのだ。
その後、再度調査契約書にサインをし探偵事務所を後にする。本日は11月15日だ。最後の報告は少し先の1月10日に設定。
朝の暖かさから一変し冷え込んでいたが寒さは感じなかった。疑いの気持ちはとりあえず棚上げしておき、妻とは普通に接する事にすると自分を納得させた。
今日は妻を抱いてみるかな?
安堵なのか、現実逃避だかわからない、やり場のない時に発生する男の性欲が自然と湧き出た。こんな気持ちで妻を抱くのは、ただのはけ口と思われなくもない。何も知らない妻に失礼だ。
それにそもそも無理だ。
最後の愛しあった夜を過ごした日から、テンプレートの一つであるスキンシップを嫌がられるようなって、約3ヶ月が経過していた。
くどい様だが、そもそも浮気を確信した忘れもしない10月29日。
それは理由の一つでもあるじゃないか?馬鹿か俺は?
まだ調査は終わってない。それまでは、スキンシップなど求めず、疑念のままで構わないから夫婦であることの喜びを噛みしめる事にしよう。
「ただいま」
「おかえりなさい。半休取ったって言ってたけど遅かったのね?」
うん。いつもと変わりない『おかえりなさい』だ。もう何がなんだかわからない。
「ああ。なかなか帰りづらくてな」
「出来たよ!」
「ああ、あのワニのぬいぐるみか?苦戦してたもんな」
「何言ってんの?違うよ!赤ちゃんだよ!」
「………え?」
嘘偽りのない、満面の笑みで俺に愛想を振り撒く妻に新たな疑念が生まれた瞬間だった。同時に新たに生まれた自己嫌悪の感情とが激しく俺の心の中で戦い始めた。
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