予測者~Prophet~

高ちゃん

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覚醒編

二週間レポート

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この世界に来てから二週間が経った。
戦いはまだ起きておらず、基本的には情報収集して過ごしていた。
僕は羽ペンを持ち、ここに記していく。

『まず現状について。
僕ら八人は特殊精鋭のルイン隊に所属し、王城にて過ごしている。
それぞれ役割を持ち、東京に戻るまでの共同生活をしている。

調査係
高橋未来 佐奈田理恵 鳳凰嶺華凜
買出係
神条龍太 白峰澪 
家事係
獅童継 宮垣雛 喜多島ゆうき 

調査係の仕事として、僕らは各々情報を手に入れてきてそれを3人で話し合いまとめる。
そして夕食時に今日の成果を発表するというものだ。
以下手に入れた情報例。
・種族は全部で7種族『人間族、獣人族、魔族、魚人族、竜族、吸血族、石人族』
・人間族は獣人族、魔族と交戦経験あり
・この街はステレス能力によって他の種族から身を隠している
・能力は主に一人一つであり、種類は選べず才能によって決まる
・ただし竜族のみ、多能力の者もいる
・書庫には予言以外僕らの世界に繋がる情報は無し
・物理法則及び現象については能力を抜けば僕らの世界とあまり変わらない
以下のような情報が集まった。
また他に追記する情報もあるためそちらは省く。

次に人物。
この世界で僕が関わる人物。
それについてまとめていく。
まずはこちらの世界の住人。

ルイン・ストフィリア
銀等級騎士シルバーランクナイト 年齢:19 能力:高速移動 通称:戦闘姫ヴァルキュリア
以下備考
僕らの隊長を務める。
銀等級シルバーランクは本来上から二番目のランクだが、金等級ゴールドランクは魔族との戦いによって死亡。
よって現在トップである。
元々ルイン隊は存在していたが、獣人族との戦いによって壊滅。
八割の戦死と生き残った者もPTSDにより脱退。
そのため僕らが入ることとなった。
能力は高速移動。
その名の通り素早く行動できる能力。
元々は少し早くなる程度のものだったらしいが、努力により目に見えない斬撃を繰り出せるようになった。
それゆえ、1VS1タイマン及び接近戦においては最強である。
が、移動を速くしながら、斬撃を早くすることは不可能らしく、高速で近づいて高速で斬るようなことはできないらしい。


ガマラ・エルドラド
人間族の王 年齢:55 能力:不明(声を遠くに届けていたが、それ以外にもできることはありそう)
以下備考
人間族を統べる王。
元々王族の生まれで父の後をそのまま継いだらしい。
基本的には慎重な性格で、大体の事は城に引きこもり行っている。
戦闘向けの能力ではないらしく、何もできない現状に嫌気がさしている。



次に東京の者。
ここからは来た順に記述する。

佐奈田 理恵
大学生 年齢:20 能力:急速冷凍 
以下備考
連続殺人最初の被害者にして、最初にこの世界に来た。
冷静に物事を思考、判断する力はあるが、龍太が絡むと赤面しててんぱってポンコツになる。
個人的には有能の部類ではあるがそこが残念だ。
一応最初に来たためかこの世界に僕らよりは慣れており、既に戦闘経験もあるらしい。
能力は急速冷凍と言い、触れたものを一瞬にして凍らせるらしい。
また道具を手にし、その道具越しに触れた場合も凍らせられる。
だが、触れている間しか凍らせられないらしく、そこから離れた後は自然に溶けていくらしい。


神条 龍太
大学生 年齢:20 能力:瞬間移動
以下備考
二人目の被害者。
元々長距離走選手であり体力がある。
また僕らの中で一番の力持ちである。
…ルインさんに腕相撲で負けてはいたが。
慣れ慣れしい性格に僕はうんざりしているが、どうもリーダーシップ性、カリスマ性は高くそこは評価している。
能力は瞬間移動。
目に見えるところならどこにでも一瞬でワープできるらしい。
試したところ空でも可能だったそうだ。
だが目に見えないところにはどうやってもワープできないらしく、例えば目隠ししたり、狭い部屋に閉じ込められたりしたら何もできないらしい。
この世界では剣を持って戦っており、瞬間移動して切るスタイルである。


獅童 継
ゲーマー 年齢17 能力:暗躍
以下備考
三人目の被害者。
高校を中退し、ゲーマーとして活動していたらしい。
それゆえRPGの勘のようなものがあるらしく、たまにそれが鋭いときがある。
最初は調査係だったが、さぼりが目立ち、根性を鍛えなおすと家事係にされる。
めんどくさがりやで基本的には寝っ転がって本を読んでたりする。
能力は暗躍。
暗いところでもよく見える暗視ができる、また身体能力も段違いに上がるらしい。
暗いの条件は案外緩いらしく、洞窟に火がついている状態でもそれは発揮されたらしい。
僕は見たことないが龍太曰く、暗いところで勝てるやつはいないほど強いらしい。
だが明るいところでは無能力なのは残念なところだ。


鳳凰嶺 華凜
お嬢様 年齢:18 能力:非生物命令
以下備考
四人目の被害者。
鳳凰嶺の娘らしくない凡人かと思ったが、思考力や発想力、応用力に長けており調査係に任命される。
奇抜な恰好やバカっぽい喋り方をなぜしてるのか遠まわしに聞いたことがあるのだが
「かたっくるしいのより、こっちの方が良くね?」
とウインクで返された。
変な奴だが、一応有能な部類、というか僕より自頭はよさそうだ。
能力は非生物命令であり、生き物以外に命令し行動させる能力。
実例として包丁にこのリンゴを切れと命令したら、包丁は一人でに動き、そこにあったリンゴを切り始めた。
その時切り方は頭の中で想像していたらしく、ウサギリンゴに切る、みたいな細かいことも可能らしい。
ただ、重いと命令できないらしく、最大30kgまで。
それ以上のものは無理だが、逆にそれ以下の物は合計30kgになるまで命令可能。
現に20枚ぐらいのコインが僕の周りを飛んでいた。


喜多島 ゆうき
中学生 年齢:14 能力:弱点把握
以下備考
五人目の被害者。
最年少ゆえに一番かわいがられている。
からかい好きの一面があり、特に龍太絡みの理恵にはよくする。
だが本当に傷つけることをしない辺りはまあ良心的と言えるだろう。
能力は弱点把握。
本人曰く、相手をじっと見ていると光る部分があり、そこが弱点らしい。
例えばすねや目などはもちろんのこと、その人が腹痛の時は腹が光る。
他種族においても通用するらしく今後の戦いに使えそうだ。
だが先ほどじっと見るととあったが、このじっとの時間の法則は把握してないらしく、早いときもあれば遅いときもあるらしい。
今後観察し、法則を見つけ出したいところだ。


宮垣 雛
イラストレーター 年齢:19 能力:血毒
以下備考
六人目の被害者。
いわゆる腐女子。
しかもリアルの人間でもいけるし早口になるタイプの、少し怖いタイプだ。
だが他の人に布教したりせず、自分だけで楽しむ。
趣味を押し付けないというのは評価する。
時々部屋で絵を描いているらしく、たまたま見たゆうきが少し目覚めかけたことはあったが…。
能力は血毒。
自分の血に触れた後そこに毒性の成分を混ぜることが可能らしく、つけるだけで激痛及び皮膚が溶けたりする猛毒になるらしい。
血の見た目は普通の血と変わりが無いため、間違えて触るのは気を付けてと忠告を受けた。
血はいつでも出せると言っていたが…理由は聞かないことにした。


白峰 澪
高校生 年齢:18 能力:硬軟変化
以下備考
七人目の被害者。
普段からフワフワ喋っており、聞いていると力が抜ける。
色々なものに動じない性格で慌てているところを見たことが無い。
ネットニュースでは友人を守ってとあったが、そんな勇ましい様子が感じられない。
ほめる点としてはコミュニケーション能力が高く、どんな人とも仲良くなれる。
現に既にこの街の数人と仲良くなっていた。
能力は硬軟変化といい、触れているものの硬さをまたは柔らかさを変える能力。
レンガをクッションにすることも可能だし、ワタを鈍器に変えることもできる。
だが離れた瞬間元の材質に戻るのと一つ硬軟変化をしていたら、それを解除しなければ別の者を変えられない欠点がある。


僕が現在大きく関わっている人物は以上である。
最後に現状だ。

人間族の戦力はとても少ない。
部隊はルイン隊、ドルマ隊、隠密部隊のセラミ隊、以上である。
本当はもっとあったらしいが、先の戦いにより減少状態にあり。

街の現状。
意外と平和そうである。
ステレスで見えなくしているのは分かるが、戦時中とは思えない緩さを感じる。

新制ルイン隊の初陣。
恐らくもうすぐである。
タウロスの死が獣人族に知れ渡り対策を練っているとセラミ隊から連絡が入る。
十中八九獣人族戦となる。

生活について。
僕らは王城の部屋をそれぞれ個室にして暮らしている。
基本的には自由行動だが、報告会も兼ねた夕食時間だけ大食堂で19:30と決められている。』



さてこんなところか…。
描いた内容を改めて読み返し、考察にふける。
だが今のところ手に入れたもの以上のものが手に入る感じはしなかった。
まあこれについてはいいか。
さて次だが。
僕は新しい紙を用意する。
再びペンをとり書き出す。


『共有できない情報

8人目の被害者
僕の前に死んでいた人の存在。
今だこの街にはいない。
門番に確認したが、近くにそのような人物はいなかったらしい。
一週間たっており飢え死にしている可能性もあり。
現在も調査中。


内通者
八つの力という予言があっている体で考えたとき、被害者が一人多いという謎が生まれる。
もし仮にそいつが僕ら被害者にとっての敵対勢力ならば、そいつを内通者と呼ぶことにする。
内通者候補を少し上げる。

①佐奈田理恵
最初の被害者である。
一番最初にこの世界に来て、二番目の龍太以降僕らを監視している可能性があると考えている。

②獅童継
三番目の被害者。
あまり喋らないということと、唯一部屋で殺されたという共通点から外れた存在であるため疑っている。
ただし根拠は薄い。

③鳳凰嶺華凜
四番目の被害者。
連続殺人犯は堂々とした犯行ながらも何故か逃げ切っている。
もしこれが警察関係に睨みをきかせるほどの権力を持つ鳳凰嶺なら可能なのではと思って怪しむ。

以上三人を怪しむ。
引き続き観察する。
また、他に可能性があるかもしれないためそちらも思考を止めず、怪しむ予定。』

僕にとってこちらの方が重要だ。
何故内通者がいるのかそもそも人数が多い事態が何故起きているのか。
その疑問に答えを出せるほど僕は目的を分かっていない。
故に内通者の思い通りに誘導され、最終的には酷い目に合う事だって考えられる。
場合によっては今度こそちゃんと殺される可能性だってある。
ならば誰よりも早くこの事態に対するアンサーは出しとかなければならない。
これが思い過ごしならそれでもいい。
だがもし敵対勢力なら…逆に寝首をかいてやる。
僕は歯をぎりっとならし覚悟を決める。
そんな時だ。
キーーーーーン。
頭の中で音が鳴る。
「…っ…伝令か」
一週間たっても慣れないその音。
それは王の御言葉だ。
『緊急連絡だ、至急王座に集まってほしい』
…あぁついにか。
『獣人族に、攻撃をしかける』

近々始まるであろう獣人族戦。
暗躍部隊の知らせを聞いた時から起こると思っていた。
タウロスはどうやら、自分の有利なフィールドで戦い戦果を収めていたらしい。
つまり獣人族の戦い方は、能力を有利にするフィールドを整えてから戦うというものなのではという予測は立った。
そこで僕はあることを提案した。
「あちらの準備中に攻め入りましょう」
こちらには強めの能力者は多くいる。
それと来るべき日に備え、獣人族の記録もある。
そして何より、こちらが獣人族によって壊滅状態であること。
ならばあちらは攻め入る可能性を少なく、そして舐めかかっているのではないかとも予測した。
それを全てプレゼンし、結果今の言葉だ。
「さて、やるからにはやらなければな」
正直戦争は今でも嫌だ。
だがいつまでも王城でのほほんと暮らせるほど、この世界は恐らく大人しくない。
もしこの街を攻め入れられ、滅ぼされたら僕らの帰る方法が無くなる可能性がある。
ならば覚悟を決めるしかない。
「全て予測しきってやるよ、この戦いを」
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