予測者~Prophet~

高ちゃん

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獣人族戦編

優勢

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獣人族との戦いは二日目に突入。
僕らは有利状態にさせないよう崩すことに成功した。
本来であれば体制を立て直す前に攻め切るのが強いだろう。
だが少数精鋭で戦っている現在、体力がもたない。
「あぁ…もういいや…」
現に獅童はぐったりと床に寝転んでいる。
「あんた、よく床に寝てられるね」
理恵が椅子に座って獅童を見下ろしている。
「まあ…本来ならベッドがいいんだけどね…」
「いやそれもそうだけど、それよりも」
理恵が見まわす。
ゆうき、澪、理恵。
やはり戦いというのもあり、少しは緊張状態なのか皆座りながらも背筋が伸びている。
「あんたぐらいよグダっとできてるのは」
「えぇ…宮垣さんだって寝てるじゃん…」
「あの子は能力上貧血になりやすいから」
宮垣は現在医務室で寝ている。
幸せそうな顔しているが、まあ顔色も悪かったので休ませている。
「まあ獅童ほどとは言わないが、やはり多少は疲れもあるはずだ、少し休んでていいぞ」
僕は皆に指示する。
「いいのー?私は嬉しいけどー」
「当たり前だ、僕たちはまだ第一段階をクリアしただけ」
正直ここで無理されてに支障が出るほうが困る。
「だから休んでもいいというよりは
その思いから命令調に変えた。
皆はそれじゃあと言わんばかりにだらけたり、だべり始めた。
そしてそれぞれこの部屋から出て各々解散した。
それにしても、僕の結構無茶な作戦をよくここまで達成してくれたものだ。
というのもまず相手の罠設置場所にあらかじめ向かうという場面だが、その距離もそこまで近いものではない。
平気で移動に数時間かかるところもある。
慣れてる場所ならまだしも初めての、慣れてない場所での数時間は相当疲労するはず。
更にそこから戦闘も行う。
戦うというだけでも大変だが、更にきついことがある。
相手をだ。
僕らは当然だが殺しに慣れていない。
むしろ嫌悪感や罪悪感を覚えたりするはずだ。
なので当然躊躇することもあるはずだが、その一瞬でこちらがやられる可能性がある。
命のやり取り。
それほど心身共に疲労するものはないだろう。
それぐらいは知らないジャンルとはいえ察しがつく。
なので僕はこの作戦はもっとうまくいかないものだと思っていた。
作戦達成率10%でも行けば僕の予測通りだった。
その10%が失敗するだけでも困る相手がいるはず。
そいつを起点に戦っていくつもりだった。
それ前提の無茶な作戦だった。
だが、実際の達成率は90%だった。
皆の士気を下げないよう、余裕ぶったり作戦通りのような顔をしているが正直予測をはるかに超えすぎていて今予測しなおしている。
それは結構焦ることだ。
僕は知らなかった。
彼らは僕が来る前に結構修羅場をくぐってきたらしい。
知らない世界で、知らない状況。
何かを殺して食べる、殺されそうになったら反撃し殺し返す。
そんなこともあったという。
僕も十分修羅場を乗り越えたつもりだったが、一番軽い方だった。
だから彼らは慣れている。
命のやり取り、戦争の基本を。
「……恐ろしいな」
僕はまだ殺しというものはしていない。
だから自分がそれをやれと言われたら、絶対いやだと思うだろう。
今司令官の立場でそれを誰かにやらせている。
それだけでも本当は嫌だった。
だが、段々その感覚は慣れてきた。
自分の言葉で誰かが死ぬということに、半日経った頃には慣れていた。
あの連続殺人犯もそうだったのかな?
「…っと無駄な考えノイズが長すぎたな」
僕はロードマップに目を通す。
現在獣人族の10部隊は作戦に支障が出ているはず。
その場合次はどんな行動をとるだろうか。
そんなことを考えている時だ。
ドアをドカンと開く音が聞こえる。
「ただいまー!!」
龍太だ。
普段は耳障りなぐらいうるさい声だが今は安心する。
「丸一日帰ってこなかったから心配したぞ」
「いやー、ギリギリだったんよ途中さ」
「ギリギリ?大丈夫だったか?」
「おうよ全然平気だ!」
余裕のピースと笑顔を見せる。
「ちゃんと、
本当にこいつらは作戦をこなしてくれる。
彼らの評価を改めるべきだろうな。
「それにしても、セラミさんは?」
「ん?」
「いや、セラミさんと一緒に行っていただろう?どこにいるんだ?」
「は?いやそこにいるだろ」
龍太は僕の左側を指さす。
「ん?うわ!?」
そこには全身黒のローブの男がいた。
「あはは…ミライ君どーも…」
笑いながらも生気のない声で不気味。
そんな風に喋るのが隠密部隊隊長セラミさんだ。
「ビックリさせてごめんね…普通に入ったつもりだったんだけど…」
「いや本当にすいません」
「あぁいいんだよ、むしろ気づかれないって…仕事上誉め言葉だからね…」
アハハと自虐的に笑う。
この人は本当に影が薄い。
身長は175cmと全然低くない。
だが何故か、しっかり目にするまでそこにいるという事が分からないのだ。
そして一番恐ろしいことが一つ。
それが能力ではないということ。
この人自身の特性だという事だ。
それを聞いた時理由などを予測してみたが、というか今もしているが全く分からない。
それがこのセラミさんだ。
「それよりミライ君…私とリュウタ君の成果を聞いてほしい…」
あーそうだった。
結構大事な事を忘れるほどのインパクトだった。
「じゃあロードマップを見せてほしいんだけど」
龍太が部屋に入っていき、一部を指を指す。
「ここに作戦本部、拠点がある、間違いない」
そこは特段何かあるわけではないセレダ平原。
そこの人間族にとって奥側の方を指す。
「なるほどな、それで拠点の様子は」
「えーと…あぁ…うーん…」
崩壊拳デストロイヤーのエレファンが指揮担当、その他四名の部下と連携をとっていたね」
上手く喋れなさそうな龍太を見かね、すぐにセラミさんが話してくれた。
「エレファンか…」
実際に見たことはないが資料は多く残っていたので知っている。
崩壊拳デストロイヤーという二つ名通り、その拳で多くの物を破壊してきた獣人族の四天王の一人。
四天王関連の資料は大方目を通したが、恐らくこいつが一番強敵だ。
というのもこいつだけ能力が明かされていない。
弱い能力が明かされていないとかならありがたいが、自分の5倍でかい岩山も破壊できるほどの力らしい。
恐らく少しでも読み間違えれば死ぬことは間違いなし。
そんなやつの能力が分からないというのは怖いのだが。
「指揮官に回しているのか…」
そいつが前線に出られるというのが想定の中で一番嫌なことだったのだが。
「やはり、あちらのお偉いさん方は凡人、いや無能だったっぽいな」
今までの戦いを見るに、獣人族は戦士それぞれが意思、または考えを持ち、戦うのが多い。
それほど上がグダグダ、もしくは雑なのだろうな。
「それにしても、よく戦わず引いてくれたな」
僕はそこに一番安堵した。
指揮拠点がもし弱そうだったら潰してもらってほしいと頼んでいた。
その方が絶対にいいからだ。
だがそんな奴が相手だったのなら逃げた方が正解だ。
「いやー俺はやろうとしたんだけどな」
「おい」
龍太は悔しそうにしている。
「流石に止めたよ…それよりもう一つの事をだって…」
「もう一つ…?」
「私たちは…獣人族の街を発見した…」
「ほう」
それはありがたい。
あらかた予想はついていたとはいえ、予測で書いた円は半径50km圏内。
その辺のどこかというすごい曖昧なものだったからこれではっきりするのは助かる。
「それでどの辺にあるんだ?」
「それがね…ここなんだ…」
「な!?」
僕は驚いた。
僕が書いた円、それより遥か後方の方を指さしていた。
「まさか、こっちじゃなかったのか」
「そう…僕らもたまたま見つけたんだけど驚きだったよ…」
「あぁそれに、未来がつけた丸のところに爆薬仕込まれてた」
「…そうか」
どうやら罠仕掛け位置から大体の位置がバレることは予測済みだったらしい。
まんまとそのに僕は考えてしまったようだ。
屈辱だ。
「っ…やるねぇ誰か知らないけど」
さっきお偉いが無能と言ったが、どうやら有能もいるらしい。
やはり予測は必要な力だ。
予測を上回ったほうが戦いに勝つ。
それはいつの世も同じだ。
「いいだろう油断せず戦ってやる」
僕は覚悟を決めた。
「それでミライ君、報告はこっからなんだけど…」
「ん?」
どうやらまだ先があるらしい。
そういえばさっき龍太がギリギリって言ってたな。
それについてか…?
そんなことを考えている時だ。
『上から超微量な水分感知』『上に誰かいる』
「上!?」
「「!?」」
僕の突然の大声に二人がびっくりする。
何が起きたか分からないが、突然能力が発生した。
ということは命の危機だということ。
『上から何か迫る音』『今すぐテーブルの下へ』
「っ!?」
僕は急いで机の下にもぐる。
多少頭ぶつけたが恐らく気にしている場合ではない。
さてその後起きた光景は一瞬では理解できなかった。
僕が机にもぐっているそんな上空でクッションのようなものがパンと破裂した。
あのクッションは、ああそうだセラミさんの能力のやつだ。
セラミさんは汎発性のあるクッションのようなものを作る能力があり、恐らく何かを感じ取ったセラミさんが急いで僕の上に投げてくれたのだろう。
だが、それが突然破裂とは一体…?
『獣人族四天王』『該当能力者あり』
「え…まさか…」
もしその予測通りなら最悪の展開だ。
「すまないミライ君、これは私達の大失態だ」
セラミさんが真剣な表情で謝る。
なんてこった、最悪の予測通りだ。
先ほど言っていたギリギリ、恐らく敵におそわれたのだろう。
理由は獣人族の街を発見したこと。
そこからずっと攻撃し続け、そこから何とか巻いてきた。
それがギリギリだったということだろう。
だがそれがギリギリどころかアウトだったのかもしれない。
ずっとかわして、ある時攻撃が止んだら、まあ逃げ切ったと思うだろう。
だがだけでその敵はずっとついてきていた。
そんな芸当ができる獣人族は、『色彩変化』の能力の持ち主。
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そいつがこの部屋にいるというのか…。
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