予測者~Prophet~

高ちゃん

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獣人族戦編

飛空狩人ホーク④

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瞬間移動する人間。
そいつとの激戦の末。
俺はこの氷の地に落ちてしまった。
そもそもこの氷の地は何だ?
俺の分身火落とし作戦が大失敗だ。
この作戦はあの日唯一壊されなかったものだ。
まあ本来は別の場所に落とす予定だったが。
それでも街に火をつければ大勝利できるはずだった。
「やっぱ、急ぎすぎなんだよ、エレファン」
準備期間があれば。
少なくとも少しずつ運んでいればこの火落としから侵攻を始めれたんだ。
「まあこの氷に邪魔されたんかねぇ」
まあ何言ってもたらればか。
俺は負けた。
獣人族四天王と呼ばれた俺が。
「…勝てたと思ったんだけどな」
能力勝負は結構理不尽だ。
能力次第では一撃で決まってしまう。
だからこそ能力を速く見極め対策する。
この速さで決まると言っていい。
その見極め対決は、明らか俺の勝ちだった。
さらに言えば、俺の元々のパワーが人間族に耐えられると思わなかった。
だが、結果は最後接戦だった。
どちらも捨て身の攻防での対決。
あちらが剣を持っているとはいえ、パワーの高い俺が有利だと思った。
だからこそ分身を捨ててまで戦ったのに。
「…俺は何回斬られた?」
腕、顔、胸、腹、足。
多くの斬られた箇所。
それを眺め、より実感が湧く。
俺は、正々堂々負けたんだと。
その時、俺が思う事は何だろうか。
ショック何だろうか。
「……おし」
痛みが大分治まっていく。
獣人族の、特に俺の生命力は本当に恐ろしい。
腹を貫かれてるし、全身ズタズタ。
遥か上空から落ちたというのに、もう動ける。
「さて、あいつはどこだ?」
あの人間族。
俺とあそこまで渡り合った人間族は。
しばらく探していると一瞬見える。
「あれは…女?」
人間族の女がいた。
「あぁ…そういえば何かしていたな」
まあ気づいていたさ。
氷の上で水を使って火を防いでた。
あの時何とかするべきかとも思った。
だが相手が瞬間移動の能力者だったこと。
俺が奴に背を向けた後斬られるんじゃないかと思ったらそれが出来なかった。
「あいつなら何か知っているか?」
俺は近づいてみる。
あっちも俺に気づいたみたいだ。
「…ホーク」
「俺のこと知ってんのか…お?」
俺は下の方にいる男に気づく。
あの瞬間移動野郎、眠ってやがる。
「…はは」
その姿を見て俺は思わず笑ってしまう。
腕はぐしゃぐしゃに曲がってる。
顔もパンパンに腫れている。
足も折れてんのか、見づらいが角度に違和感があるし多分そうだ。
目に見えているだけでもこんなにボロボロ。
それに俺は多分もっとやった。
もっと体内ボロボロになっているはず。
「…そいつに俺は…」
笑うしかない。
ボロボロの人間族と今普通に歩いている獣人族。
こんなの勝者は。
「ねえ、まだ戦うの?」
「ん?」
女が話しかけてきた。
「もしやるっていうなら私は…」
「いーや」
俺は大の字に寝っ転がる。
「もうやんねーよ、てか決着はついた」
「え?」
「俺の、負けだよ」
さっきショックだと思っていたけど。
違うわこれ。
清々しいわこれは。
なんつうか、こういうのだ。
俺は能力バトルより、こういう戦いが好みだわ。








「…がっ…うぅ…」
目が覚めると、体がしんどい。
主に痛みのせいだ。
「えーと確か…」
俺はホークと戦った末、体がボロボロになりながらここに寝転がっている。
「…ていうか、俺、生きてんだな」
全く動かない体。
さっき気を失った時、正確には失う前。
俺は死んだと思った。
諦めないとは言ったが、流石に無理だったかとは思った。
「生命力ってやつか…」
俺の心は諦めても体内は諦めなかった。
すごいものだ、本当に。
「お、やっと起きたか」
聞いたことある声が上からする。
この声は…。
「ホーク…」
まずい…。
こいつまだぴんぴんしてんのか。
俺の方はもう全身動かねーってのに。
ちょっと力入れただけで激痛だっつーのに。
くっそ、てか澪は?
あいつ大丈夫なんか?
「ああ心配すんな、俺はもう戦わねーよ」
「…え?」
意外な一言だった。
「さっきよ、下覗いたときビックリした」
「何の、話だ?」
「エレファンが死んでいた」
「…そうか」
未来か…。
あいつはやったんだな。
「それとタイガー、あいつから色々聞いたんだけどよ」
ホークは頭をかいた。
「…ぁあこの話はやっぱなしだ、ともかく俺らはもう終わりだ」
「…お前らこれからどうすんだ?」
「ん?」
「…お前らがやってきたこと、覗いたんなら見たんだろ」
「…あぁ」
そうだ、あの街の惨状。
生存者がどれぐらいかは分からないが、大分減ったであろう。
その戦いの結末が、俺の負けー終わりー何かで済むものか。
「俺は、俺の首を差し出すつもりだった」
「首…?」
「まあいわば、公開処刑ってやつだ」
結構軽く言われたが、公開処刑…。
その言葉は知っているが最早どんなものか想像すらできない。
だが、処刑…それは、もっと。
「そんなに、簡単に決めていいのか?」
「…まあ本当はそうしたくはないけどよ、そしたら俺以外の獣人族に迷惑がかかる」
その目は本気だった。
こいつなりに、仲間意識って言うのがあるんだな。
「まあでも、それが少し変わりそうだ」
「何?」
「…お前の仲間、ミライって言ったか?」
「未来がどうかしたのか?」
「あいつが、とある提案をした」
「提案…?」
「ああ、同盟というな」
「同盟…だと?」
それはつまり、人間族と獣人族が仲間になるという事だ。
「そんなことが可能なのか?」
今回の件で獣人族は恐らく、というか確実に恨まれている。
そんな中そいつらと同盟になりました、なんて納得できるのか?
現にこいつらに殺されたやつだって多数だってのに。
「えーと、それは色々複雑なんだが」
「複雑?」
「書類上の同盟ではなく、無利益無条件での協力関係というもの」
「えーと…?」
「まあ簡単に言えば、表向きは繋がってないけど裏では繋がってるよってこと」
「はぁ…」
何というか、本当にあっさりしている。
疲労と大けがっぷりから考えると、こんなんでいいのかってなる。
なるけど…。
「実際、頼もしくはあるんだよなぁ…」
こいつらが味方になってくれれば大分助かる場面は増えるだろう。
正直俺達の戦力は薄い。
今回の戦いでそれが身に染みた。
俺もボロボロになって勝ったが、何度もこんな目に合うのはごめんだ。
「…てかそれより」
「ん?」
「何でお前ここにいるんだ?」
こいつの話から推測すると、俺は大分長い間気絶していた。
というのも澪もいないし、何より話が大分進んでいる。
ということは大分長い時間のはずだが…。
「あぁそれは協力の一つ目をしにな」
「一つ目?」
「そう、ちょっと痛いぞ」
「ん?、あだだだだだ!!!」
俺のボロボロの体。
それを遠慮なく持ち上げやがった。
触られるたびに体中から悲鳴が鳴り響く。
声も出てしまう。
「よっと」
そしてホークはそのまま飛び立つ。
「なあ」
「な…んだ」
痛みでうまく喋れない。
「城の方、見れるか」
「城?」
氷の上から飛び立つとそこには。
「あっ」
あれは…マットか?
見えるぐらいには大きなもの。
明か俺に見えるように用意されていた。
「見えたか?」
「ああ…なるほど」
見えたか聞くってことは…そういうことか。
「お前の協力ってこれのことなんだな」
俺は事を察し、そのマットに向かってワープする。
フカフカの感触。
まあそれでも十分痛いが、それでも。
周りの皆を見て安心した。
「龍太!?」
理恵が俺の事を見て驚いている。
「そのケガ!?大丈夫なの!?」
「あはは、大丈夫…なわけはないっしょ」
この姿、どこに大丈夫要素があるんだか。
「理恵はアホだなー」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!急いで救急車を」
「落ち着け、この世界にそんなもんはない」
本当に慌てているな。
そういえば理恵がここにいるってことは。
俺はちらりと先ほどまでいた氷の膜を見上げる。
そこに氷の膜は無かった。
全て無かったように消えていた。
やっぱり理恵の能力だったんか…あれ?
だとすると不思議だ。
理恵の氷は手放した後、段々と溶けていく。
つまり少しは残るし、それに水になっていく。
そもそも触れた物を凍らす能力だから何かは残ってないといけないはず。
「…なあ理恵、氷のことなんだが」
「うおおおおおおお!!!」
「え!?」
「彼も東京人なのですね!?そのお方がこんなことに!?ああお労しい」
突然、タキシードを着た紳士風の男性が嘆きだした。
誰だこいつ!?
「あー、龍太、今思った以上にややこしいことになってる」
未来が補足するように説明してくれた。
「とりあえず、今はお前を救護室に運ぶ、話はそっからだ」
そういうとマットが浮いて動き出す。
「うぃぃぃぃぃんっと動くっすよー」
「あぁかりんちゃんか」
かりんちゃんの能力でマットが動いていたみたいだ。
なるほどな、これで緊急のタンカってわけか。
「…静かだな」
街は先ほどまで騒がしかった。
悲鳴や雄たけび、そんな音で大混乱だった。
「おおおおおおお嘆かわしい!!」
…まあこいつはうるさいが。
「…終わったんだな」
「…ああ」
俺は心底喜んだ。
安心した。
だがそれに答えた未来は。
どこか暗い顔だった。
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