宵闇の魔法使いと薄明の王女

二章◆幕間

無冠の王 ２

　サイラスはその発作に悩まされていた。
　希望という名の手立てを得ることは出来たが、それをどう扱えばいいのか計りかねていた。


　このままずっとここに閉じ込めておこうか。
　美しい色をした“宝物”＿＿


　暗く落ち窪んだ瞳で彼はそれを眺めていた。
　その瞳と宝物は実は同じ色をしているのに、サイラスの双眸は輝きを失っていた。


　自分があるべき場所に帰るために必要な宝物は眩い光を放ち、
　無情にも彼の青ざめた顔を照らすだけだった。

　「うっ……！」

　突如、鳩尾のあたりに重苦しい痛みがやって来た。
　サイラスは腹を抑えながら息を整える。

　まずい、またあの渇いた感覚がやって来る。

　そろそろ準備をしなければ。


　この空腹を埋めるための。
　埋めるだけの、あの不快な行為を。