隘路

振り返る

学校にて

警察のお兄さんに着いていった後、俺はお兄さんに話しかけられた。

「ぼく、知らない人には着いて行っちゃダメだよ。」
幸次「でも、おっちゃんはいい人で…」

「ううん、それでもダメだよ。世の中には、そうやって子どもを騙す悪い人が沢山いるんだから。気を付けるんだよ。分かった？」

話し終わった後、すぐに母さんと父さんが交番に駆け込んできて、一直線に俺の方へ走ってきた。

「幸次！」

母さんは俺の事を力一杯抱き締めると、今度はビンタを食らった。

「あんたは本当にもう…バカ！あんたが無事でよかったけど、もし連れ去られたらどうすんのよ！」

幸次「母さん…ごめん」
「知らない人には着いていっちゃだめって、何回も言ったでしょ！もう…」

母さんは泣きながら説教をしてきた。
その後ろで父さんも静かに涙を流していた。
しばらく交番にいた後、警察と母さん達の話が終わったらしく、家に帰れる事になった。

家に帰る途中で、父さんが話し始めた。

「幸次、お前が着いていった人が誰だか分かるか？」

幸次「知らない…でも野球が好きでよく話してくれたよ」

「そうか…そいつはな、お前みたいな子どもを何回もあの公園で拐ってた悪いやつだ。」

大人はみんなあのおっちゃんを悪い人だって言った。
でも勝手に知らない人の家に着いていったのは俺だし、悪いのは俺なんじゃないの？

───────

そうだ。
この公園は、俺が誘拐されかけたところだ。
だからここを通る度にどことなく嫌な気分になるんだ。
あの時は何も知らなかった…だが、成長するにつれて、あの時に助かったのは奇跡だったんだと痛感した。
こんなとこ、早く通りすぎてしまおう。
俺は乗っているバイクを飛ばし、公園のある道を通りすぎた。

ここを右に曲がると確か…あぁ見えた見えた。
奥に見えるのは、俺が通ってた小学校だ。
今も生徒が多くいて、毎年運動会の期間は子ども達の練習する声が聞こえてくる。
懐かしいな…この小学校では色々あった。
だが、誘拐されかけた事もあって、低学年の頃はいい思い出が少ない…

そうだ、あの時、のりとたっちゃんはどうしたんだっけ？