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(53)人魚のあぶく
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美しい人魚が恋をしたのは一国の王子様。けれど、王子に恋をしたのは彼女だけではありませんでした。
ノイン×あぶくにしようと思ったんですが、悲恋です。童話的な悲劇が好きです。NL寄りだけど焦点はBLです。
ノイン
あぶくを助けてくれた青年
ロゼイア・シュリッヒ王子
あぶくが恋した王子様
あぶく
海の魔法使いと呼ばれる男の人魚
セレン
あぶくの弟子。女の人魚
名前の由来はノイローゼと泡とセイレーン。
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あるところに人魚がいました。彼女の名前は『セレン』といい、とても美しくとても綺麗な声で、あっという間に国の王子である『ロゼイア・シュリッヒ』さえも虜にしてしまいました。
ロゼイアとセレンは、毎日海辺で愛を語り合い、充実した毎日を送っていました。が、ある日。それを妬んだ男の人魚『あぶく』が、セレンを電気ウナギに変えてしまったのです。
呪いは、姿だけではありませんでした。愛する者がその身に触れると、電気が流れてしまうのです。ロゼイアは怖くなって、セレンの元を訪れなくなってしまいました。
そうして、セレンが寂しい思いをしている間に、あぶくはロゼイアに近づいて、自慢の歌声で彼を魅了してしまいました。そう。ロゼイアに惚れていたのは、あぶくも同じだったのです。
しかし、あぶくの愛は長く続きませんでした。なぜなら、ウナギにされたセレンが復讐にと、あぶくの声を呪いで潰してしまったのです。
ロゼイアはその醜い声を忌み嫌い、あぶくのことを避けました。あぶくは悲しみに染まりました。でも、あぶくがどんなに嘆いても、声は全く戻りません。
ついにどうしようもなくなって、術者であるセレンに直接解いてもらうために、あぶくはセレンの元を訪ねました。するとどうでしょう。
セレンは、何事もなかったかのように、その美しい姿を取り戻し、ロゼイアと抱き合っていました。
「何故だ……。呪いは継続しているはずなのに……。いや、違う。あれは、呪いが解けているんだ……。ロゼイア王子は受け入れたんだ……。愛する者にその醜さを受け入れられると、愛の力で人魚の呪いは解けるから、だから……」
だから、二人が愛し合っているのはよくわかってしまいました。
「だったら……」
愛する者の命と引き換えに呪いを解く。それが、あぶくにとって一番実行しやすい答えでした。
しかし。
「う……」
あぶくは、陸に上がるのを躊躇いました。
セレンのように人間の足を得るためには、声と引き換えにする必要がありました。でも、今のあぶくの汚い声では、とても代償にはなりません。ヒレを引き摺って進む以外の方法はないのです。
こうなったら、いよいよ自分が惨めになって……。
(ああ、私はなんて愚かなんだ。セレンに嫉妬して。敵うはずなかったのに。醜くも呪いなんかかけて。まるで悪い魔女じゃないか)
あぶくは、海の中でさめざめと泣きました。が。
『おい魔法使い! 汚い声で泣くんじゃない!』『海が塩辛くなっちまう!』『迷惑だ! 今すぐ出て行け! 卑怯者!』
あぶくの前に海の魚たちが立ち塞がって、次々に文句を言いました。
「お前たちはセレンの肩を持つというのか?」
『そうだ!』
「海の魔法使いである私に逆らっていいと思っているのか?」
あぶくは、魚たちを睨みました。
海で長く暮らす中で、あぶくは魔法の研究に勤しんできました。元々、人魚には特別な力があるのですが、あぶくは海にある海藻や貝殻なんかを使って、魔法をより大きなものに変えることができるようになりました。海に暮らすものは、いつしかあぶくのことを『海の魔法使い』と呼ぶようになり、困ったことがあると彼に頼るようになりました。
『お前がいなくたって、セレンがいればいい!』『お前の代わりに、セレンを海の魔女にすればいい!』
魚たちは、怯みもせずにあぶくに言い放ちました。
セレンは、あぶくの弟子でした。魚たちの病気を治すあぶくを見た彼女は、自分も魔法を習いたいのだと、無理を言ってあぶくの弟子になったのです。最初は全く魔法の使えなかった彼女も、今ではたくさんの魔法を知り、師を追い越す勢いで力を蓄えていったのです。
『お前のような悪魔はいらない!』『偉そうにしやがって!』『セレンをウナギにするなんてどうかしてるよ!』『出て行け!』『出て行け!』『出て行け!』
そうして、魚たちに追い詰められたあぶくは、陸に上がるより他はありませんでした。
(恩知らずどもめ……!)
そう心の中で呟いたあぶくは、ふとセレンの顔を思い浮かべました。
「そういえば、私も……。セレンによく食べ物を分けてもらっていたんだ……」
もっぱら引きこもって魔法の研究をしていたあぶくは、食料を調達するのが苦手でした。それを見かねたセレンが、魔法を教えてもらっているお礼だと気を使ってくれたおかげで、あぶくは健康でいられたのです。
「ああ。恩知らずは誰だろうか……」
(魚たちに関しても、別に偉そうな態度を取った覚えはなかったが……。確かに愛想は良くなかった。私は、自分の恋と研究結果しか見ていなかった。みんなに嫌われて当然だ。今更気づくなんて、どうかしている……)
あぶくは、己の過ちを悔い始めました。しかし、全てはもう遅いのです。
(片想いでも、そっと王子のことを見つめているだけだったあの頃が一番幸せだったんだ。それなのに。セレンが王子と結ばれてしまうだなんて。思いもしないじゃないか。気づいたら妨害していたんだ。自分の恋を叶えようとしていたんだ……)
それはあぶくにとって、初めての恋でした。だから、あぶくにはどうしてよいのかわからなかったのです。だから、ただ感情の赴くままに、まるで子どものように、残酷な魔法を弟子に掛けてしまったのです。
(ああ、私はもう戻れないんだ)
陸に上がり、足ヒレを引き摺りながら砂の上を這う異様な生物に、人間が気づかないはずがありません。
『おい、アレって人魚だろ?!』『マジかよ! アレ、食べると不老不死になるって』『高く売れるんじゃね?』
「あ……」
近づいてくる人間たちに、あぶくはあっという間に腕を取られてしまいました。
(怖い、怖い……!)
『おい、妙な真似される前にさっさと殺せよ?』『あ~。確か人魚って魔法使えるんだっけ?』『いや、大丈夫だろ。コイツ、めちゃくちゃビビってるし。とりま、腕の肉でも削いで……』
「嫌だ、やめろ、やめろ……!!」
あぶくの腕にナイフが触れようとした途端、耳を塞ぎたくなるような不快な声が人間たちを襲いました。
『うわっ、何だこの音!』『気持ち悪い!』『耳が……!』
それは、あぶくの呪われた声でした。あぶくは、人間たちが怯んだ隙に何とか森へ逃げました。が、しかし。やはり人間は追ってくるのです。
『どこ行った、あの化け物!』『見ろ、これ引きずった跡だ。はは、わかりやす』『所詮人魚、馬鹿だな』
あぶくは、隠れながらガチガチと歯を震わせました。
(寒い……。海の底なんかよりもずっと、森の空気は冷たくて怖い……。それに、体が重い。皮膚が渇いて、ひりつく……。ああ……)
海に帰りたい。あぶくは、その言葉だけを飲み込んで、前を見据えました。でも、前進しようとする腕や鱗は土だらけ。引きずったせいで所々が擦り切れていて、腕には痛々しいほど血が滲んでいました。
『いたぞ!』
逃げようとしたあぶくでしたが、尾ひれを掴まれ、草陰から引き摺り出されてしまいました。いくら土を掴んでも、人間の力を止めることはできず……。
(ああ、私はここで終わるのか……)
パンッ!
あぶくが抵抗を止め、大人しく目を瞑ろうとした瞬間、銃声が響きました。
「お前ら、俺のシマで何してんの」
『ひっ……』『ノイン様……』
「なんだ。俺のこと知ってんじゃん。だったら、わかるよな?」
『い、行こうぜ……』
威嚇射撃と睨みを利かせて現れた青年ノインに、男たちは血相を変えて逃げてゆきました。
(一体コイツは何だ……?)
「ん……? アンタ、人魚か!」
「……!」
あぶくは、ノインと目が合った瞬間、体を強張らせました。
「人魚ってさ、声綺麗なんだろ? 聞かせてくれよ」
「……」
期待に満ちた瞳を受けて、あぶくは、ただただ俯きました。
「なんだ、ケチだな。まぁいい。ここにいても干乾びちまう。ウチに来な」
あぶくは、伸ばされた手に後ずさりました。腕を使って這ったとしても、当然逃げられそうにありません。
「ああ、歩けないのか」
ノインは、傷ついたあぶくの腕を一瞥すると、その体をひょいと持ち上げました。
「や、やめ……!」
「わ、なんだそのガラガラな声」
「っ……!」
「あ、ごめん。気に障ったか」
一瞬傷ついた顔をしたあぶくに、ノインは素直に謝りました。
「……」
あぶくは、ノインの耳元で思い切り叫んでやろうとも思いましたが、虚しくなってやめました。
「可哀想に。こんなに怪我をして」
「っ……!」
腕を撫でながら囁くノインに、あぶくは身をよじって抵抗しましたが、抱きしめる力はまるで緩みません。
「大丈夫。すぐに治療してやるからな」
しばらくして森の奥にある小屋に着くと、ノインはあぶくを椅子に降ろしました。
「そこ、座ってな」
「あの……」
「ん?」
「治療、なら、自分で……」
「ごめん、何て?」
「っ……」
あぶくは、汚い声が恥ずかしくて、つい小声になってしまう自分が嫌で俯きました。
(ああ。海に帰れば魔法が使えるのに……。こんなことなら、いくらか海藻を持ってくるんだった。魔法が使えるといっても、材料がなければ何もできない。何が海の魔法使いか、情けない。ああ、やはり、さっきの人間どもに肉を裂かれて死んだ方が幸せだったか……?)
「ちょっと滲みるからな」
「いっ……!」
ひた、と傷口に当てられたガーゼに、あぶくは悶絶しました。
(人間の薬は、程度が低すぎる……!)
「ごめん、我慢して」
痛がるあぶくの腕を取り、まるで幼子をあやすかのように、ノインはあぶくの額に口づけを落としました。
(ああ、この男、少しあの王子に似ているな……)
あぶくは、呆然としながらそんなことを思いました。身なりこそ違えども、ノインのその整った顔立ちと整然と輝く瞳には、気品を感じるのです。
(ロゼイア王子のことを最初に見たとき、私は驚いた。人間にもあんなに綺麗な者がいるのか、と。人間は汚い者ばかりだと思っていた。けれど、ロゼイア王子は怪我をした私を見て、駆け寄ってきてくれた。ロゼイア王子は心も見た目も綺麗で。私は恋に落ちたのだ)
あぶくは、目の前の青年と想い人を重ねてしまったことを悔いました。そして、恋などという不幸の種を払う決意を固めました。
夜。ノインが寝るのを見計らい、あぶくは黙って小屋から出てゆきました。
城へ向かい、ロゼイア王子を殺すために。
そう。あぶくは愛する者を殺し、自分の呪いを解こうとしているのです。
(海から追い出されて、城を目指すつもりがとんだ寄り道をした。おかげでこんな森を這うことになるとは)
枝や小石が、治療したばかりの腕に新たな傷を作ってゆきました。でも、その痛みすらもが今のあぶくにとっては、生きる糧なのです。
(この姿で陸に上がるなんて、出来ることではないと思っていたけれど。意外と出来るものだ。私はもう海に帰れない。ならば、王子を殺すしかないのだ。声の呪いを解いて、美しい声を対価に足を作る。そうすれば、こんなに痛い思いをする必要もなくなる。そうして人間として生きるのも悪くはないはずだ。それに……。それに、王子を殺せばセレンへの復讐にもなる。だから……)
自分を励まし続け、ようやく森を抜けたあぶくは、城の入り口に辿り着きました。
監視の目を掻い潜り、バルコニーに近づいてみると、その二人は見つめ合い、愛を語り合っていました。
吐き気を抑えながらも、あぶくはナイフを握り締め、気づかれないようにじり寄ってゆきました。そして。
「~♪」
不意にセレンが歌い出しました。その声は澄み切っていて、幸せな希望に満ち溢れていました。単純な歌唱力ならば、前のあぶくの方が上でしたが、その歌声はあぶくには出せない何かを秘めているようでした。
「どうして……」
セレンは、声と引き換えに足を得たはずでした。それなのに、何故彼女は今こうして歌うことができているのでしょう。
「ああ。そうか。これも愛の力か」
人魚が人間と本当に愛し合うことができたとき、その尾ひれは本物の足になるのだと聞いたことがありました。彼らは愛し合っているのです。魔法などで誤魔化す必要がないのです。
「彼女は、すっかり人間になってしまったのか……」
隣で彼女の歌を聞くロゼイア王子は、とても幸せそうでした。二人は、満ち足りた笑顔で互いを見つめ合いました。
あぶくは、そっとナイフを仕舞うと、来た道を引き返しました。
本当はわかっていたのです。好きだった男と、教え子。それを自分が不幸にできないことぐらい。いくら嫉妬して魔法を掛けようとも、彼らの愛はそれを上回ってしまうことも。自分がすごく惨めだということさえも。
(まったく。お似合いじゃないか。絵本の中のように幸せな二人。悪い魔女である私がどうこうできるわけがない。でも。ならば。私はこれから一体どうするべきだろうか)
あぶくは、じっと地面を見つめました。来た道は、ぼろぼろの腕から流れ出た血で汚れていました。
(海に帰りたい……)
その腕で自分の体を支えることも辛くなったあぶくは、その場で仰向けになって寝ころびました。
目に映る夜空は、海の中から見たものよりずっと綺麗で。手を伸ばしてみても、まるで届きそうにありません。
「馬鹿々々しい……」
滲みだす視界に、慌てて拳を握りしめ、身を起こそうとしたその時……。
『ガア!』
弱り切った人魚を食べようと、カラスが襲いかかってきました。
「くそ!」
あぶくは力を振り絞って、襲ってきたカラスを尾ひれで叩きつけました。
『ガアガア!』『ガアガアガア!』
「やめろ!」
すると、瞬く間に他のカラスが集まってきて、復讐だと言わんばかりにあぶくを突き始めました。
「やめろって、言ってるだろ!」
カラスと同じぐらい、いやそれ以上に掠れた汚い声であぶくが叫ぶと、カラスたちは怒ったようにあぶくに爪を立てました。
(ああ、なんて惨めなんだ。この声はカラスをも不快にさせてしまうのか。一体、私は何をもって人魚なのだろうか……)
カラスのくちばしが、瞳に向かって来るのを見て、あぶくは静かに目を閉じました。
(こんな出来損ないでいいなら、くれてやるさ)
あぶくは死を選びました。カラスに食いちぎられて死ぬなんて、本当は嫌でした。けれど、自分にはお似合いの最期だとあぶくは思ったのです。
でも……。
「こらっ!」
『ガア!?』
突然襲い掛かってきた剣に驚いたカラスたちは、バサバサと音を立てて一斉に逃げてゆきました。
「は……?」
「お前な、何してんだよ。全く」
剣を手慣れた手つきで仕舞ったノインは、あぶくに手を差し伸べました。カラスを追い払ってくれたのは、あぶくを追ってきたノインだったのです。
「どうして君がここにいるんだ」
「どうしてって。お前が急にいなくなるからだろう?」
「私のことは放っておいてくれ」
「こんな怪我した奴を放っとけるかよ」
「君はお人好しなのか?」
「ただの気まぐれだよ。俺がそうしたかったから。人魚なんて珍しいし」
「そうだな。人魚のまま陸に上がる馬鹿などいないだろうからな」
「なら、なんでお前は……」
「なぁ。人魚の肉は食べると不老不死になれるんだ。知ってるだろう?」
「それ、本当なのか?」
「本当かどうかなんて。どちらでもいいことさ。私たちの肉が欲しい金持ちなんていっぱいいる」
あぶくはノインの手を弾くと、腰に刺さった剣を抜き、自分に当てがいました。
「何を……」
「私を売ったら金になる。君は幸運だ」
「お前は、死にたいのか?」
「そうだ。残念ながら、君が私を助けたのは間違っているんだよ。二度も邪魔をされて、こちとらうんざりだ!」
(そう。私が生きていても仕方がない。誰にも必要とされず疎まれ。声も心も汚くて。自分でさえ当の昔に自分が嫌いで。こんな私が、生きていて良い訳が……)
「だったら。俺のために生きてくれ」
「は……?」
ノインは、あぶくの手から剣を引き剥がすと、その色の悪い唇に口づけを落としました。
それはまるで、あぶくの傷を癒す魔法のように染み渡り、彼に希望を与えました。
愚かな人魚は、またしても恋に落ちてしまったのです。それが、悪いものだと知りながらも。気持ちを止めることなどできなかったのです。
行く宛てのないあぶくは、ノインと暮らすことになりました。ぼろぼろだった体も、ノインの治療のおかげで大分マシになりました。
ノインは時々、確かめるようにキスをしてあぶくの体を撫でました。あぶくは、そうされる度に、自分を恥じました。目元の深い隈も、真っ黒い髪も、真っ白い体も、ぼろぼろの鱗も、醜い心も。全てが情けなくて、涙を浮かべました。そうすると、ノインは決まってあぶくの涙を優しく撫でて、その細い体を抱きしめてあやしました。
あぶくは、そんな生活が嫌いになれませんでした。まるで、自分が人間になったかのような気がしたのです。だから、二人の時間がずうっと続けばいいと思っていました。
でも、あぶくにはわかっていました。こんなものは偽りなのだということが。
ある静かな夜のことです。二人の暮らす小屋の戸が叩かれ、とある男が入ってきました。
「やあ。兄さん、久しぶり」
「……来ると思ったよ、ロゼ」
「……?」
(こんな時間に来客だなんて。それに、この声は……)
あぶくは、寝たふりをしながら二人の会話を盗み聞きしました。
「兄さんってば、僕に黙って新しい恋人を作るなんて。兄さんがセレンを好きになったから、僕はあれを一時的に本当に愛して、必死で落としたのに」
「……!」
その男は、間違いなくロゼイア王子でした。
(どうして王子がここに……。いや、兄さんということは、ノインはまさか……)
「なあロゼ。俺に執着するのはもうやめてくれ。お前は俺にとって可愛い弟で……」
「やめてよ! 僕は兄さんのそんな愛情が欲しいわけじゃない! ねえ兄さん、いい加減僕を見てよ……」
「悪いが今は見ての通り。コイツと一緒にいるもんでな」
甘い台詞を受けたあぶくは、ぞわりと身を震わせました。それは、形容しがたい恐怖でした。
「やめてくれ……」
「あぶく……! 聞いていたのか!」
悪夢を振り払うように絞り出したあぶくの声に、ノインが気づき、その身をロゼイアから庇うようにして抱き寄せました。
「やめてよ! 兄さん! 兄さんには僕がいるのに!」
「ロゼイア王子は、セレンが好きなはずでは……」
「まさか。あんな人魚お断りさ。でも……。君は別だよ、あぶく。君の歌は素晴らしかった。だから、僕も本気で魅了されかけていた。今だってそれは変わらない」
「馬鹿なことを。私の声は、この通りガラガラで……」
「違うんだよ。これを。君のために、あの女から奪ってきたんだ」
「奪ってきたって……」
ロゼイアの手には、人魚の心臓が握られていました。
「呪いを解くには4つの方法があるはずだ。術者に直接解いてもらうか、愛する人に受け入れられるか、愛する人をその手で殺すか、術者をその手で殺すか」
「やめろ、あぶく……」
「どうして兄さんがそんなに青い顔するんだよ。愛しい人魚が折角声を取り戻そうってんだよ? 応援してあげなきゃ」
「待て、あぶく……。やめろ……」
「ノイン……。ごめん……。私は……」
「やめろって言ってるだろうが!」
「ぐ……」
あぶくが心臓に手を伸ばした途端、ノインはあぶくを突き飛ばして心臓を抱きかかえました。
「……はは。やっぱりそうなんだな、ノイン」
「っ……」
睨みつけるノインに、あぶくは力なく笑いました。
「安心しなよ。私はセレンを殺す気はない。あれは私の可愛い弟子だ。殺すなど、できるはずがない。だから、最初っからそんな選択肢は用意していなかったというのに」
「あっはっは! 兄さんってば馬鹿だね~! やっぱりそっちの人魚の方が本命じゃん」
「……」
「僕がセレンに興味を失くすよう、兄さんはわざと次の恋を演じたんでしょ? ああ、可哀想な人魚くん。君はただ、利用されただけなんだよ。でも、君は賢いから、きっと気づいてたんでしょ?」
「……愛する者に受け入れられているのならば、声の呪いはとっくに解けているはずだからね」
「ごめん。あぶく……」
あぶくにとって、その謝罪は虚しいだけでした。だって、全く心が籠もっていないのです。
「あはは! 兄さん、よぉく見ていてくれよ。兄さんが愛した人魚と、兄さんを愛した人魚が、兄さんのせいで死ぬところをさ!」
「頼む! やめてくれ! セレンは、セレンだけは……!」
「嫌だね。兄さんを愛する者は僕だけで十分。だから……死ね!」
「させないよ」
あぶくが静かに呟いた途端、地面に紋章が浮かび上がり、そこから生まれた光がセレンの心臓を包み込みました。
「な……」
驚くノインを他所に、セレンの心臓の周りには肉がつき、徐々にセレンを形作ってゆきました。一方で、紋章から光が生まれた後に生まれた闇が、茨となってロゼイアを包みました。
「なんだよ、これ……! お前、僕を愛しているはずだろう!? だったら、どうして!」
「ええ。ロゼイア王子を愛していましたとも。だけど、今は違う。今の私は、誰も愛していません……」
「くそ! 裏切者! だから人魚は嫌いなんだ! あの女も、結局僕に落ちたじゃないか! 人魚の愛なんて、所詮はお遊びだ! 兄さん、だから、僕を愛してくれ! 僕は兄さんを裏切ったりしない! さあ、僕を助けてくれ!」
「……それでも。俺は、セレンのことが好きだ」
「それでいい」
ノインの言葉を聞いたあぶくは、やんわりと微笑みました。
「よくない! よくないよくないよくない! どうしてだよ! お前だって悔しいはずだろうが!」
「ロゼイア王子。セレンを蘇らせる禁術の対価は、貴方の悪意です。悪魔たちには貴方の腐りきった心が好物ですから。でも」
あぶくは、ロゼイアに巻き付く茨にそっと触れました。その瞬間、茨はロゼイアを捨てると、勢いよくあぶくに巻き付きました。
「なに……?」
「ロゼイア王子のその酷い嫉妬は、紛れもなくセレンの呪いです。恐らく、セレンにはわかっていたのでしょう。ロゼイア王子が二人を邪魔するであろうことが。だから」
「だから、アタシは邪魔される前に、ロゼイア王子の心を闇に染め上げた。熟しきった頃、悪魔に食われるように、ね」
「セレン……」
あぶくが顔を上げると、体を取り戻したセレンが、目の前に立っていました。
「アタシはただ、ノインと結ばれたかっただけなのに。ロゼイアも、師匠も、アタシの邪魔をするから……」
「ウナギの呪いが解けたのは、ウナギの姿の君をノインが受け入れたから、なんだね?」
「ああ……、そうだ」
負い目からか、ノインは気まずそうにあぶくから目を逸らしました。
「おかしいと思ったんだよ。ロゼイア王子の本性を知った時、彼が本当にセレンのことを愛せるわけがないって。そんなんで呪いが解けるわけがないって。セレン、もう呪いを使ってはいけないよ」
「何よ、自分こそ散々人のことを呪っておいて!」
「ああ。私は知らなかったんだよ。自分がこんなにも嫉妬深いことを。恋にだらしがないことを。本当に、人魚はみんなこうなのかもしれない。恋に狂ってしまう生き物なのかも。今だって、君たちのことが憎い」
「あぶく……」
「でもね。それでも、私は運命に逆らうよ。私は魔法の申し子だ。恋なんかに私を壊させはしない。壊れるぐらいなら……」
いつしか、あぶくの目からは血が溢れ、ボロボロと剥げた鱗は色を失っていました。そして。
茨はあぶくを包み込むと、地面に描かれた紋章に吸い込まれてゆきました。それと同時に、セレンを包んでいた光が解け、ロゼイアは意識を失って倒れ込みました。地面に描かれた紋章は、血をたっぷり吸いこんだ鱗と共に消えてゆきました。
「あぶく……!」「師匠……!」
「セレン、ノイン。幸せに、なるんだよ……?」
その声は、どこまでも透き通った美しい声でした。
残された二人は、己の過ちに気づき、その場で泣き崩れました。でも、もう全てが遅いのです。
そうして、全ての罪を被った海の魔法使いは死にました。彼の消えた後に残った泡は、海に還されて、今も海を不思議な力で守っているとか。
ノイン×あぶくにしようと思ったんですが、悲恋です。童話的な悲劇が好きです。NL寄りだけど焦点はBLです。
ノイン
あぶくを助けてくれた青年
ロゼイア・シュリッヒ王子
あぶくが恋した王子様
あぶく
海の魔法使いと呼ばれる男の人魚
セレン
あぶくの弟子。女の人魚
名前の由来はノイローゼと泡とセイレーン。
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あるところに人魚がいました。彼女の名前は『セレン』といい、とても美しくとても綺麗な声で、あっという間に国の王子である『ロゼイア・シュリッヒ』さえも虜にしてしまいました。
ロゼイアとセレンは、毎日海辺で愛を語り合い、充実した毎日を送っていました。が、ある日。それを妬んだ男の人魚『あぶく』が、セレンを電気ウナギに変えてしまったのです。
呪いは、姿だけではありませんでした。愛する者がその身に触れると、電気が流れてしまうのです。ロゼイアは怖くなって、セレンの元を訪れなくなってしまいました。
そうして、セレンが寂しい思いをしている間に、あぶくはロゼイアに近づいて、自慢の歌声で彼を魅了してしまいました。そう。ロゼイアに惚れていたのは、あぶくも同じだったのです。
しかし、あぶくの愛は長く続きませんでした。なぜなら、ウナギにされたセレンが復讐にと、あぶくの声を呪いで潰してしまったのです。
ロゼイアはその醜い声を忌み嫌い、あぶくのことを避けました。あぶくは悲しみに染まりました。でも、あぶくがどんなに嘆いても、声は全く戻りません。
ついにどうしようもなくなって、術者であるセレンに直接解いてもらうために、あぶくはセレンの元を訪ねました。するとどうでしょう。
セレンは、何事もなかったかのように、その美しい姿を取り戻し、ロゼイアと抱き合っていました。
「何故だ……。呪いは継続しているはずなのに……。いや、違う。あれは、呪いが解けているんだ……。ロゼイア王子は受け入れたんだ……。愛する者にその醜さを受け入れられると、愛の力で人魚の呪いは解けるから、だから……」
だから、二人が愛し合っているのはよくわかってしまいました。
「だったら……」
愛する者の命と引き換えに呪いを解く。それが、あぶくにとって一番実行しやすい答えでした。
しかし。
「う……」
あぶくは、陸に上がるのを躊躇いました。
セレンのように人間の足を得るためには、声と引き換えにする必要がありました。でも、今のあぶくの汚い声では、とても代償にはなりません。ヒレを引き摺って進む以外の方法はないのです。
こうなったら、いよいよ自分が惨めになって……。
(ああ、私はなんて愚かなんだ。セレンに嫉妬して。敵うはずなかったのに。醜くも呪いなんかかけて。まるで悪い魔女じゃないか)
あぶくは、海の中でさめざめと泣きました。が。
『おい魔法使い! 汚い声で泣くんじゃない!』『海が塩辛くなっちまう!』『迷惑だ! 今すぐ出て行け! 卑怯者!』
あぶくの前に海の魚たちが立ち塞がって、次々に文句を言いました。
「お前たちはセレンの肩を持つというのか?」
『そうだ!』
「海の魔法使いである私に逆らっていいと思っているのか?」
あぶくは、魚たちを睨みました。
海で長く暮らす中で、あぶくは魔法の研究に勤しんできました。元々、人魚には特別な力があるのですが、あぶくは海にある海藻や貝殻なんかを使って、魔法をより大きなものに変えることができるようになりました。海に暮らすものは、いつしかあぶくのことを『海の魔法使い』と呼ぶようになり、困ったことがあると彼に頼るようになりました。
『お前がいなくたって、セレンがいればいい!』『お前の代わりに、セレンを海の魔女にすればいい!』
魚たちは、怯みもせずにあぶくに言い放ちました。
セレンは、あぶくの弟子でした。魚たちの病気を治すあぶくを見た彼女は、自分も魔法を習いたいのだと、無理を言ってあぶくの弟子になったのです。最初は全く魔法の使えなかった彼女も、今ではたくさんの魔法を知り、師を追い越す勢いで力を蓄えていったのです。
『お前のような悪魔はいらない!』『偉そうにしやがって!』『セレンをウナギにするなんてどうかしてるよ!』『出て行け!』『出て行け!』『出て行け!』
そうして、魚たちに追い詰められたあぶくは、陸に上がるより他はありませんでした。
(恩知らずどもめ……!)
そう心の中で呟いたあぶくは、ふとセレンの顔を思い浮かべました。
「そういえば、私も……。セレンによく食べ物を分けてもらっていたんだ……」
もっぱら引きこもって魔法の研究をしていたあぶくは、食料を調達するのが苦手でした。それを見かねたセレンが、魔法を教えてもらっているお礼だと気を使ってくれたおかげで、あぶくは健康でいられたのです。
「ああ。恩知らずは誰だろうか……」
(魚たちに関しても、別に偉そうな態度を取った覚えはなかったが……。確かに愛想は良くなかった。私は、自分の恋と研究結果しか見ていなかった。みんなに嫌われて当然だ。今更気づくなんて、どうかしている……)
あぶくは、己の過ちを悔い始めました。しかし、全てはもう遅いのです。
(片想いでも、そっと王子のことを見つめているだけだったあの頃が一番幸せだったんだ。それなのに。セレンが王子と結ばれてしまうだなんて。思いもしないじゃないか。気づいたら妨害していたんだ。自分の恋を叶えようとしていたんだ……)
それはあぶくにとって、初めての恋でした。だから、あぶくにはどうしてよいのかわからなかったのです。だから、ただ感情の赴くままに、まるで子どものように、残酷な魔法を弟子に掛けてしまったのです。
(ああ、私はもう戻れないんだ)
陸に上がり、足ヒレを引き摺りながら砂の上を這う異様な生物に、人間が気づかないはずがありません。
『おい、アレって人魚だろ?!』『マジかよ! アレ、食べると不老不死になるって』『高く売れるんじゃね?』
「あ……」
近づいてくる人間たちに、あぶくはあっという間に腕を取られてしまいました。
(怖い、怖い……!)
『おい、妙な真似される前にさっさと殺せよ?』『あ~。確か人魚って魔法使えるんだっけ?』『いや、大丈夫だろ。コイツ、めちゃくちゃビビってるし。とりま、腕の肉でも削いで……』
「嫌だ、やめろ、やめろ……!!」
あぶくの腕にナイフが触れようとした途端、耳を塞ぎたくなるような不快な声が人間たちを襲いました。
『うわっ、何だこの音!』『気持ち悪い!』『耳が……!』
それは、あぶくの呪われた声でした。あぶくは、人間たちが怯んだ隙に何とか森へ逃げました。が、しかし。やはり人間は追ってくるのです。
『どこ行った、あの化け物!』『見ろ、これ引きずった跡だ。はは、わかりやす』『所詮人魚、馬鹿だな』
あぶくは、隠れながらガチガチと歯を震わせました。
(寒い……。海の底なんかよりもずっと、森の空気は冷たくて怖い……。それに、体が重い。皮膚が渇いて、ひりつく……。ああ……)
海に帰りたい。あぶくは、その言葉だけを飲み込んで、前を見据えました。でも、前進しようとする腕や鱗は土だらけ。引きずったせいで所々が擦り切れていて、腕には痛々しいほど血が滲んでいました。
『いたぞ!』
逃げようとしたあぶくでしたが、尾ひれを掴まれ、草陰から引き摺り出されてしまいました。いくら土を掴んでも、人間の力を止めることはできず……。
(ああ、私はここで終わるのか……)
パンッ!
あぶくが抵抗を止め、大人しく目を瞑ろうとした瞬間、銃声が響きました。
「お前ら、俺のシマで何してんの」
『ひっ……』『ノイン様……』
「なんだ。俺のこと知ってんじゃん。だったら、わかるよな?」
『い、行こうぜ……』
威嚇射撃と睨みを利かせて現れた青年ノインに、男たちは血相を変えて逃げてゆきました。
(一体コイツは何だ……?)
「ん……? アンタ、人魚か!」
「……!」
あぶくは、ノインと目が合った瞬間、体を強張らせました。
「人魚ってさ、声綺麗なんだろ? 聞かせてくれよ」
「……」
期待に満ちた瞳を受けて、あぶくは、ただただ俯きました。
「なんだ、ケチだな。まぁいい。ここにいても干乾びちまう。ウチに来な」
あぶくは、伸ばされた手に後ずさりました。腕を使って這ったとしても、当然逃げられそうにありません。
「ああ、歩けないのか」
ノインは、傷ついたあぶくの腕を一瞥すると、その体をひょいと持ち上げました。
「や、やめ……!」
「わ、なんだそのガラガラな声」
「っ……!」
「あ、ごめん。気に障ったか」
一瞬傷ついた顔をしたあぶくに、ノインは素直に謝りました。
「……」
あぶくは、ノインの耳元で思い切り叫んでやろうとも思いましたが、虚しくなってやめました。
「可哀想に。こんなに怪我をして」
「っ……!」
腕を撫でながら囁くノインに、あぶくは身をよじって抵抗しましたが、抱きしめる力はまるで緩みません。
「大丈夫。すぐに治療してやるからな」
しばらくして森の奥にある小屋に着くと、ノインはあぶくを椅子に降ろしました。
「そこ、座ってな」
「あの……」
「ん?」
「治療、なら、自分で……」
「ごめん、何て?」
「っ……」
あぶくは、汚い声が恥ずかしくて、つい小声になってしまう自分が嫌で俯きました。
(ああ。海に帰れば魔法が使えるのに……。こんなことなら、いくらか海藻を持ってくるんだった。魔法が使えるといっても、材料がなければ何もできない。何が海の魔法使いか、情けない。ああ、やはり、さっきの人間どもに肉を裂かれて死んだ方が幸せだったか……?)
「ちょっと滲みるからな」
「いっ……!」
ひた、と傷口に当てられたガーゼに、あぶくは悶絶しました。
(人間の薬は、程度が低すぎる……!)
「ごめん、我慢して」
痛がるあぶくの腕を取り、まるで幼子をあやすかのように、ノインはあぶくの額に口づけを落としました。
(ああ、この男、少しあの王子に似ているな……)
あぶくは、呆然としながらそんなことを思いました。身なりこそ違えども、ノインのその整った顔立ちと整然と輝く瞳には、気品を感じるのです。
(ロゼイア王子のことを最初に見たとき、私は驚いた。人間にもあんなに綺麗な者がいるのか、と。人間は汚い者ばかりだと思っていた。けれど、ロゼイア王子は怪我をした私を見て、駆け寄ってきてくれた。ロゼイア王子は心も見た目も綺麗で。私は恋に落ちたのだ)
あぶくは、目の前の青年と想い人を重ねてしまったことを悔いました。そして、恋などという不幸の種を払う決意を固めました。
夜。ノインが寝るのを見計らい、あぶくは黙って小屋から出てゆきました。
城へ向かい、ロゼイア王子を殺すために。
そう。あぶくは愛する者を殺し、自分の呪いを解こうとしているのです。
(海から追い出されて、城を目指すつもりがとんだ寄り道をした。おかげでこんな森を這うことになるとは)
枝や小石が、治療したばかりの腕に新たな傷を作ってゆきました。でも、その痛みすらもが今のあぶくにとっては、生きる糧なのです。
(この姿で陸に上がるなんて、出来ることではないと思っていたけれど。意外と出来るものだ。私はもう海に帰れない。ならば、王子を殺すしかないのだ。声の呪いを解いて、美しい声を対価に足を作る。そうすれば、こんなに痛い思いをする必要もなくなる。そうして人間として生きるのも悪くはないはずだ。それに……。それに、王子を殺せばセレンへの復讐にもなる。だから……)
自分を励まし続け、ようやく森を抜けたあぶくは、城の入り口に辿り着きました。
監視の目を掻い潜り、バルコニーに近づいてみると、その二人は見つめ合い、愛を語り合っていました。
吐き気を抑えながらも、あぶくはナイフを握り締め、気づかれないようにじり寄ってゆきました。そして。
「~♪」
不意にセレンが歌い出しました。その声は澄み切っていて、幸せな希望に満ち溢れていました。単純な歌唱力ならば、前のあぶくの方が上でしたが、その歌声はあぶくには出せない何かを秘めているようでした。
「どうして……」
セレンは、声と引き換えに足を得たはずでした。それなのに、何故彼女は今こうして歌うことができているのでしょう。
「ああ。そうか。これも愛の力か」
人魚が人間と本当に愛し合うことができたとき、その尾ひれは本物の足になるのだと聞いたことがありました。彼らは愛し合っているのです。魔法などで誤魔化す必要がないのです。
「彼女は、すっかり人間になってしまったのか……」
隣で彼女の歌を聞くロゼイア王子は、とても幸せそうでした。二人は、満ち足りた笑顔で互いを見つめ合いました。
あぶくは、そっとナイフを仕舞うと、来た道を引き返しました。
本当はわかっていたのです。好きだった男と、教え子。それを自分が不幸にできないことぐらい。いくら嫉妬して魔法を掛けようとも、彼らの愛はそれを上回ってしまうことも。自分がすごく惨めだということさえも。
(まったく。お似合いじゃないか。絵本の中のように幸せな二人。悪い魔女である私がどうこうできるわけがない。でも。ならば。私はこれから一体どうするべきだろうか)
あぶくは、じっと地面を見つめました。来た道は、ぼろぼろの腕から流れ出た血で汚れていました。
(海に帰りたい……)
その腕で自分の体を支えることも辛くなったあぶくは、その場で仰向けになって寝ころびました。
目に映る夜空は、海の中から見たものよりずっと綺麗で。手を伸ばしてみても、まるで届きそうにありません。
「馬鹿々々しい……」
滲みだす視界に、慌てて拳を握りしめ、身を起こそうとしたその時……。
『ガア!』
弱り切った人魚を食べようと、カラスが襲いかかってきました。
「くそ!」
あぶくは力を振り絞って、襲ってきたカラスを尾ひれで叩きつけました。
『ガアガア!』『ガアガアガア!』
「やめろ!」
すると、瞬く間に他のカラスが集まってきて、復讐だと言わんばかりにあぶくを突き始めました。
「やめろって、言ってるだろ!」
カラスと同じぐらい、いやそれ以上に掠れた汚い声であぶくが叫ぶと、カラスたちは怒ったようにあぶくに爪を立てました。
(ああ、なんて惨めなんだ。この声はカラスをも不快にさせてしまうのか。一体、私は何をもって人魚なのだろうか……)
カラスのくちばしが、瞳に向かって来るのを見て、あぶくは静かに目を閉じました。
(こんな出来損ないでいいなら、くれてやるさ)
あぶくは死を選びました。カラスに食いちぎられて死ぬなんて、本当は嫌でした。けれど、自分にはお似合いの最期だとあぶくは思ったのです。
でも……。
「こらっ!」
『ガア!?』
突然襲い掛かってきた剣に驚いたカラスたちは、バサバサと音を立てて一斉に逃げてゆきました。
「は……?」
「お前な、何してんだよ。全く」
剣を手慣れた手つきで仕舞ったノインは、あぶくに手を差し伸べました。カラスを追い払ってくれたのは、あぶくを追ってきたノインだったのです。
「どうして君がここにいるんだ」
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「そうだな。人魚のまま陸に上がる馬鹿などいないだろうからな」
「なら、なんでお前は……」
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「本当かどうかなんて。どちらでもいいことさ。私たちの肉が欲しい金持ちなんていっぱいいる」
あぶくはノインの手を弾くと、腰に刺さった剣を抜き、自分に当てがいました。
「何を……」
「私を売ったら金になる。君は幸運だ」
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(そう。私が生きていても仕方がない。誰にも必要とされず疎まれ。声も心も汚くて。自分でさえ当の昔に自分が嫌いで。こんな私が、生きていて良い訳が……)
「だったら。俺のために生きてくれ」
「は……?」
ノインは、あぶくの手から剣を引き剥がすと、その色の悪い唇に口づけを落としました。
それはまるで、あぶくの傷を癒す魔法のように染み渡り、彼に希望を与えました。
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行く宛てのないあぶくは、ノインと暮らすことになりました。ぼろぼろだった体も、ノインの治療のおかげで大分マシになりました。
ノインは時々、確かめるようにキスをしてあぶくの体を撫でました。あぶくは、そうされる度に、自分を恥じました。目元の深い隈も、真っ黒い髪も、真っ白い体も、ぼろぼろの鱗も、醜い心も。全てが情けなくて、涙を浮かべました。そうすると、ノインは決まってあぶくの涙を優しく撫でて、その細い体を抱きしめてあやしました。
あぶくは、そんな生活が嫌いになれませんでした。まるで、自分が人間になったかのような気がしたのです。だから、二人の時間がずうっと続けばいいと思っていました。
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「……来ると思ったよ、ロゼ」
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あぶくは、寝たふりをしながら二人の会話を盗み聞きしました。
「兄さんってば、僕に黙って新しい恋人を作るなんて。兄さんがセレンを好きになったから、僕はあれを一時的に本当に愛して、必死で落としたのに」
「……!」
その男は、間違いなくロゼイア王子でした。
(どうして王子がここに……。いや、兄さんということは、ノインはまさか……)
「なあロゼ。俺に執着するのはもうやめてくれ。お前は俺にとって可愛い弟で……」
「やめてよ! 僕は兄さんのそんな愛情が欲しいわけじゃない! ねえ兄さん、いい加減僕を見てよ……」
「悪いが今は見ての通り。コイツと一緒にいるもんでな」
甘い台詞を受けたあぶくは、ぞわりと身を震わせました。それは、形容しがたい恐怖でした。
「やめてくれ……」
「あぶく……! 聞いていたのか!」
悪夢を振り払うように絞り出したあぶくの声に、ノインが気づき、その身をロゼイアから庇うようにして抱き寄せました。
「やめてよ! 兄さん! 兄さんには僕がいるのに!」
「ロゼイア王子は、セレンが好きなはずでは……」
「まさか。あんな人魚お断りさ。でも……。君は別だよ、あぶく。君の歌は素晴らしかった。だから、僕も本気で魅了されかけていた。今だってそれは変わらない」
「馬鹿なことを。私の声は、この通りガラガラで……」
「違うんだよ。これを。君のために、あの女から奪ってきたんだ」
「奪ってきたって……」
ロゼイアの手には、人魚の心臓が握られていました。
「呪いを解くには4つの方法があるはずだ。術者に直接解いてもらうか、愛する人に受け入れられるか、愛する人をその手で殺すか、術者をその手で殺すか」
「やめろ、あぶく……」
「どうして兄さんがそんなに青い顔するんだよ。愛しい人魚が折角声を取り戻そうってんだよ? 応援してあげなきゃ」
「待て、あぶく……。やめろ……」
「ノイン……。ごめん……。私は……」
「やめろって言ってるだろうが!」
「ぐ……」
あぶくが心臓に手を伸ばした途端、ノインはあぶくを突き飛ばして心臓を抱きかかえました。
「……はは。やっぱりそうなんだな、ノイン」
「っ……」
睨みつけるノインに、あぶくは力なく笑いました。
「安心しなよ。私はセレンを殺す気はない。あれは私の可愛い弟子だ。殺すなど、できるはずがない。だから、最初っからそんな選択肢は用意していなかったというのに」
「あっはっは! 兄さんってば馬鹿だね~! やっぱりそっちの人魚の方が本命じゃん」
「……」
「僕がセレンに興味を失くすよう、兄さんはわざと次の恋を演じたんでしょ? ああ、可哀想な人魚くん。君はただ、利用されただけなんだよ。でも、君は賢いから、きっと気づいてたんでしょ?」
「……愛する者に受け入れられているのならば、声の呪いはとっくに解けているはずだからね」
「ごめん。あぶく……」
あぶくにとって、その謝罪は虚しいだけでした。だって、全く心が籠もっていないのです。
「あはは! 兄さん、よぉく見ていてくれよ。兄さんが愛した人魚と、兄さんを愛した人魚が、兄さんのせいで死ぬところをさ!」
「頼む! やめてくれ! セレンは、セレンだけは……!」
「嫌だね。兄さんを愛する者は僕だけで十分。だから……死ね!」
「させないよ」
あぶくが静かに呟いた途端、地面に紋章が浮かび上がり、そこから生まれた光がセレンの心臓を包み込みました。
「な……」
驚くノインを他所に、セレンの心臓の周りには肉がつき、徐々にセレンを形作ってゆきました。一方で、紋章から光が生まれた後に生まれた闇が、茨となってロゼイアを包みました。
「なんだよ、これ……! お前、僕を愛しているはずだろう!? だったら、どうして!」
「ええ。ロゼイア王子を愛していましたとも。だけど、今は違う。今の私は、誰も愛していません……」
「くそ! 裏切者! だから人魚は嫌いなんだ! あの女も、結局僕に落ちたじゃないか! 人魚の愛なんて、所詮はお遊びだ! 兄さん、だから、僕を愛してくれ! 僕は兄さんを裏切ったりしない! さあ、僕を助けてくれ!」
「……それでも。俺は、セレンのことが好きだ」
「それでいい」
ノインの言葉を聞いたあぶくは、やんわりと微笑みました。
「よくない! よくないよくないよくない! どうしてだよ! お前だって悔しいはずだろうが!」
「ロゼイア王子。セレンを蘇らせる禁術の対価は、貴方の悪意です。悪魔たちには貴方の腐りきった心が好物ですから。でも」
あぶくは、ロゼイアに巻き付く茨にそっと触れました。その瞬間、茨はロゼイアを捨てると、勢いよくあぶくに巻き付きました。
「なに……?」
「ロゼイア王子のその酷い嫉妬は、紛れもなくセレンの呪いです。恐らく、セレンにはわかっていたのでしょう。ロゼイア王子が二人を邪魔するであろうことが。だから」
「だから、アタシは邪魔される前に、ロゼイア王子の心を闇に染め上げた。熟しきった頃、悪魔に食われるように、ね」
「セレン……」
あぶくが顔を上げると、体を取り戻したセレンが、目の前に立っていました。
「アタシはただ、ノインと結ばれたかっただけなのに。ロゼイアも、師匠も、アタシの邪魔をするから……」
「ウナギの呪いが解けたのは、ウナギの姿の君をノインが受け入れたから、なんだね?」
「ああ……、そうだ」
負い目からか、ノインは気まずそうにあぶくから目を逸らしました。
「おかしいと思ったんだよ。ロゼイア王子の本性を知った時、彼が本当にセレンのことを愛せるわけがないって。そんなんで呪いが解けるわけがないって。セレン、もう呪いを使ってはいけないよ」
「何よ、自分こそ散々人のことを呪っておいて!」
「ああ。私は知らなかったんだよ。自分がこんなにも嫉妬深いことを。恋にだらしがないことを。本当に、人魚はみんなこうなのかもしれない。恋に狂ってしまう生き物なのかも。今だって、君たちのことが憎い」
「あぶく……」
「でもね。それでも、私は運命に逆らうよ。私は魔法の申し子だ。恋なんかに私を壊させはしない。壊れるぐらいなら……」
いつしか、あぶくの目からは血が溢れ、ボロボロと剥げた鱗は色を失っていました。そして。
茨はあぶくを包み込むと、地面に描かれた紋章に吸い込まれてゆきました。それと同時に、セレンを包んでいた光が解け、ロゼイアは意識を失って倒れ込みました。地面に描かれた紋章は、血をたっぷり吸いこんだ鱗と共に消えてゆきました。
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