アズアメ創作BL短編集

アズアメ

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71~80

(74)調薬師見習いと引退騎士

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サフィル・サリサ:騎士長を務めていたが先の戦で負傷し、辞める。その後、学園を手伝うことに。無口で厳しい一面もあるが、基本的に紳士。


クラーニャ・アリム:魔法学園薬学部の生徒。マッドサイエンティストのきらいがある。将来有望。


アリエス・セヴァッタ:召喚獣の「ウサギンちゃん」を溺愛。クラーニャとは恋仲にあるが……。

薬草採取のために入った森で、アリエスの召喚獣が迷子になる。サフィルが探しに向かうが、アクシデントが重なり、転んだはずみで「真実花」の花粉を吸ってしまう。しかし、後から来たクラーニャは、サフィルが「天邪鬼草」の匂いを嗅いだのだと勘違いして……。

薬の効果を確かめたい調薬師見習い君×うっかり元騎士長
真実しか言えなくなっちゃう+独白させられちゃう薬の効果で、言いたくないのに我慢できない受けって最高!
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『このイカヅチの森には特徴的な花が多く、花粉を吸い込んだだけで症状が表れることもあります。ので、普通の人は入れませんが、貴方たちのように国家資格を目指す者たちのため、特別に許可を頂いて開放してもらっているのです。くれぐれも粗相のないよう、慎んだ行動を心がけてください』
 国一番の魔法学園『サリェサイア』の女学園長が声高々に生徒に向かって話を聞かせる。私の親戚にあたる彼女は、記憶が正しければ確か、とうに六十を超えているはずだ。だが、その容姿は未だ瑞々しく、二十と言われても納得してしまうほどに若い。流石は魔法会のトップ、と言ったところだろうか。
『一番レアなのが天邪鬼草らしい』
『あれか、一定時間嘘しかつけなくなるってやつ』
『そこ、私語は慎む! とにかく、サフィルさんにも同伴してもらうので迷惑をお掛けしないように!』
 生徒たちを注意した流れで紹介に預かった私は、姿勢を正して一礼する。
『きゃ~。サフィル様、やっぱりかっこいい~!』『は~。サフィル様同伴とか、グッジョブ美魔女~!』『あ~、マジ採取とかどうでもいいからサフィル様にくっついてたい~!』
 黄色い声を聞きながら、美魔女と言われた親戚に目を配る。
『全く。人選をミスってしまったようね』
 肩を竦めてみせた彼女に、つられて私も苦笑する。
 私ことサフィル・サリサは軍人だ。ついこの間までこの国の最高騎士長を任されていたのだが、先の戦いで故障してしまい、呆気なく騎士としての生涯を終えた。そんな死んでしまったも同然の私に声を掛けてくれたのが彼女。親戚のよしみで、何かと仕事を振ってくれることにとても感謝している。勿論、貰ったからにはしっかりと仕事をするつもりだ。故障してしまったとはいえ、完全に剣の腕が鈍ってしまったわけではない。最近では、彼女に手伝ってもらいながら魔法の強化にも力を入れているため、まだまだ人を守ることはできる。ただ、世間の私に対する評価が未だに高いことには辟易してしまう。もっと強くならなければ。ここで折れている場合ではない。声援を受ける度、私は己を奮い立たせ、以前のように振る舞うのだった。

 薬学科の植物採取ピクニックは、土砂降りにより、呆気なく中止となった。
『げ~。まだちょっとしか採ってないのに!』『ひえ~。すごい雨!』『こんなの占いに出ていなかったのに~!』
『とにかく皆さん今日は残念ですが……』
 口々に愚痴を零す生徒を前に、学園長が中止を告げる。その中に一人、俯きながら震えている少女がいることに気づく。
「やっぱり、ワタシ、行かなきゃ……!」
『アリエスちゃん、ダメだってば!』
『何事です?』
「ワタシの召喚獣、ウサギンちゃんが、いなくて……!」
 友達に腕を取られて留まった少女は、学園長に問われた途端、その赤くなった瞳を濡らしながら弱々しく呟いた。
「森に、吸い込まれるように、跳ねて行っちゃって。それで……」
「なるほど。この匂いはウサタビの匂いだ。森の中に生えていることに気づいたんだろうな」
 少女、アリエス・セヴァッタの震える肩を抱き、彼女の幼馴染である少年は淡々と告げた。
『まずいですね。この森は雷がよく落ちることで有名。だからイカヅチの森と呼ばれているのです。早くしなくては……』
「ワタシ、早く、行かなくちゃ……」
 アリエスの真っ青になった顔を見て、すかさず手を上げる。
「私が行きます。先生は生徒の避難を」
『サフィル……。そうね。貴方なら大丈夫ね』
「……チッ」
 舌打ちをしてこちらを睨む少年、クラーニャ・アリムのことは気になったが、今は構っている場合ではない。
「サフィルさん……。ウサギンちゃんのこと、お願いします……!」
「ああ。任せておけ」
 アリエスの縋るような声を聞き、自分の役目に集中する。バケツをひっくり返したような雨は、止むどころか、雷を伴いその激しさを増してゆく。イカヅチが降り注ぐのと同時に、私は森へと駆け出した。

『きゃうう!』
 雷にすっかり怯えた召喚獣が、忙しなく辺りを跳ねまわる。意外と早く見つかったことに安堵したのも束の間。
「危ない!」
 その頭上に雷が降り注ぐより前に、天に向かって魔法をぶつけ、雷を相殺する。
『きゅお……』
「よし。もう大丈夫だ。こっちにおいで……」
 怯えたままの召喚獣を、無理やり抱きかかえる。そうしないと、再びどこかへ走っていきそうで……。
『きゃうあ!』
「あ、こら。暴れるな……、って」
 小動物の扱いに慣れていないこと。蹴られたのが、未だに痛む腕の古傷だったこと。そして、雨で足場が滑りやすくなっていたこと。それらが重なりあって、私は見事なまでにすっ転んだ。
「ったた……」
 しかし、自然現象は待ってはくれない。
『きゃう!』
 召喚獣の鳴き声にハッとする。再び襲い来る雷に、顔をしかめつつ魔法を放ち相殺する。
「ふう……。君は一足早くご主人の元に帰っていてくれ」
『きゃお?!』
 再び暴れ回りそうだった召喚獣に転移魔法を掛け、とりあえず任務を達成する。
「はぁ。私も落ちたものだな……」
 泥だらけになった服に嘆息しながら、そろそろと立ち上がる。が、しかし。
「っ……」
 急に気怠さを感じて、頭を押さえる。体が妙に熱い。頭がくらくらする。
「これは……。ああ、やはり……」
 足元を見つめると読み通り、淡く小さな花弁を開いた花があった。
 どうやら倒れた拍子に花粉を吸い込んだらしい。この体調不良は、こいつのせいというわけだ。
「くそ。とりあえず、連絡を……」
『ああ、サフィル! すごい雷だけど大丈夫なの?』
「こっちはまあ……。それより、召喚獣は無事ですか?」
『ええ。ウサギンちゃん、さっきアリエスの元に現れて。流石はサフィルね』
 声を伝達する魔法は、便利だが中々魔力の消耗が激しい。召喚獣の安否が確認できたところで、学園長との会話を切ろうとしたのだが。
『でもね。今度はどうも、クラーニャが森に入っていったみたいで……』
「クラーニャが?」
 思わぬ追報に聞き返すと、学園長がため息と共に言葉を吐き出す。
『あの子、どうにも行動が読めなくって。優秀なことに間違いはないんだけど、少し、逸脱しているというか……』
「わかりました。こちらで探してみますので、学園長先生は他の生徒たちと学園へお戻りください」
『ごめんなさいね。サフィル。まぁ、クラーニャならきっと大丈夫だから……』
「ええ、彼は優秀ですからね。私の助けなど要らないかもしれませんが」
『あら、珍しい。貴方が他人を褒めるなんて』
「……」
 口を押さえ、自分の発した言葉に気づく。学園長の言う通り、私が他人を誉めそやすことはまずない。特に、目下を甘やかすような言動は意識的に控えているのだが……。
 やはり、先ほど吸い込んだのは『真実花』の花粉か。
『サフィル?』
「ええと。とにかく、私が彼を探します。それでは」
 会話を終わらせ、頭を押さえる。
 真実花は『天邪鬼草』と同じく希少な花で、吸った者は漏れなく風邪のような発熱に見舞われる。だが、それはあくまで副症状。本当に怖い主症状は、数刻の間、真実しか口にできなくなるという厄介なものなのだ。
 こんな状態でクラーニャに会うのは気が滅入るが、どうしたものか。
 どっ。再び雷が落ちてくる。
「キリがないな……!」
 魔法で弾こうとした瞬間。一筋の光が後ろで煌き、雷を迎撃する。
 その鋭い光は、明らかに魔法によるものだった。それを得意としているのは……。
「あれ、騎士長さん。こんなとこに居たんですね」
「……」
 一番会いたくないと思ったクラーニャその人だった。
「あ、召喚獣はいましたか?」
「ああ。さっき転送した。だから君も早いところ帰るぞ。雨も雷も酷くなる一方だ」
「いや、僕はもう少し残って探しますけど」
「え。だから、召喚獣は見つかったと……」
「や、僕が探してるのは天邪鬼草ですよ、騎士長さん」
「は?」
 思わず彼に目を剥くと、彼は確かに、無感情な瞳を湛えつつ地面に目を配っていた。
「今、調合している薬に最適だなって気づいちゃって。天邪鬼草」
「いや、でも今日は諦めろ。また明日にでも来れば晴れているかもしれないし……」
「わかってないですね。今日できることは今日やらないと、僕の時間は有限なんですよ? そう思うと……。ああっ、早く新しい薬を試したいっ!」
 胸の前で手を組み恍惚とする彼は確かに逸脱していた。殊に、自分の研究に執心する様は、学園でも他の生徒に距離を置かれるほど凄まじい。でも、だからといって彼をこのままにしておくわけにもいくまい。
「クラーニャ、今は無理だ。諦めなさい」
 自分の仕事を追行するべく、努めて冷静な声音で彼の手を引く。が。
「そうやって僕の研究を邪魔するんですね」
「そういうわけでは……」
 鋭く睨まれた途端、弱気な声が口をつく。
「騎士長さん、僕のこと嫌ってますもんね」
「いや、そんなことはないが……」
「わかりますよ。いつも素っ気ない。特に僕に関しては、ね」
 棘のある彼の言葉に対し、再び当たり障りなく答えようと口を開いた瞬間――。
「確かに、君には特別そういう態度を取った」
 え……?
 勝手に動いた口に、血の気が引く。
 そうだ、私は真実花の影響で……。
 慌てて口元に手を持っていくが時遅く。
「君のことが好きだからね」
 はっきりと響く自分の本音。目を丸くするクラーニャ。
 まずい……。
「や、今のは……」
「どうしたんですか騎士長さん。貴方が冗談なんて」
「今、のは……」
 駄目だ。今、口を開いても誤魔化すどころか墓穴を掘ってしまうだろう。
 ずきずきと痛む頭を抱える。止む気配のない雨は、益々私の体力を奪う。
「頭痛いんですか? 薬、見繕いましょうか?」
「それより、早く帰らなくては……」
「だから、僕はまだ天邪鬼草を……って、あ」
 ふいに私の足元を見たクラーニャの動きが止まる。
「これ、天邪鬼草じゃないですか! こんなところにあったなんて……!」
 彼が飛びつき、興味深く観察しているそれは、確かに天邪鬼草だった。
「もしかして。騎士長さん、これ嗅いだとか……? なるほど。道理で僕が好きだなんて言うわけだ」
 どうやら彼は、天邪鬼草の横で雑草に混じってささやかに咲く、真実花には気がつかなかったらしい。
 誤解されるのは気持ち悪かったが、勘違いしてくれて正直助かった。
 知られるわけにはいかないのだ。自分でも気づかぬようずっと蓋をしていた気持ちを。それが今更こんな形で晒されようなんて。冗談じゃない。
「でもそれって結局、僕のことが嫌いだと言っているようなものですよね」
 酷いなぁ、と呟きながらクラーニャは天邪鬼草をせっせと摘み、鞄に仕舞う。
「さ。今日のところは帰りましょうか。正直、もう少し探索したかったんですけど、騎士長さんが一緒にいちゃ、こちとら集中できないんで」
「……ああ」
 彼が帰る気になったことに安堵すると同時に、アリエスのことを思う。
 彼が天邪鬼草を手に入れたいと思ったのは本心なのだろう。しかし、今日中に手に入れたいというのはいささか狂い過ぎではないだろうか。確かに、彼はマッドサイエンティストのきらいがある。だが、先の発言はどこか演技染みたものがあったのだ。
 いや、なんてことはない。実のところは召喚獣探しがメインだったのだろう。少し考えればわかることだ。なんせ、飼い主のアリエスと彼は誰もが知っている恋仲で、彼が彼女に入れ込んでいるのは端から見ていてよく分かるのだ。
 ああ、私はとんだ邪魔をしてしまったんじゃないだろうか。勿論、安全面を考えると、いち早く私が召喚獣を捕獲するに越したことはない。だが、彼の心情を考えると……。ああ、道理で舌打ちをされたわけだ。
 ぼんやりとした後悔が止まらない。彼女は本当に彼を信頼しているし、彼も彼女を寵愛している。将来有望な彼と可愛い彼女。お互い支え合いながら愛し合っているのがとても、とても……。あれ。これは、後悔だろうか? こんなのは、まるで……。
「……さん! 騎士長さん!」
「え?」
 どっ。醜い感情に支配され、油断していたところに雷が落ちる。
「わっ」
 耳を劈く轟音に驚いた私は、足を滑らせ盛大にこけた。
「ったく、何やってんですか」
「っ~。すまない……」
 羞恥を押し込め、差し伸べられた手を取る。
 駄目だ。さっきからどうも頭がぼんやりして……。
「っ!」
 立ち上がろうと足に力を込めた瞬間、痛みが走る。
「どうかしましたか?」
「……」
 何でもない、と言いそうになるのを飲み込む。今、口を開くと洗いざらいお喋りが止まらなくなりそうで……。
「無視ですか。ま、いいですけどね」
 白けたため息を吐く彼の目を盗んで、そっとズボンの裾を上げて足首を見る。転んだ拍子に枝に擦ったようで、傷口から血が流れている。
 くそ。いつもならこんな失態するはずもないのに。よりにもよって彼が見ているときにこんな……。いや、彼にとって私なぞどうでもいい存在なのだから、見栄を張るだけ無駄で……。
 どっ。再び雷が落ちる。
「っ」
 魔法で弾き返そうとするが、思うように力が入らなくて。
「大丈夫ですか?」
 横で雷を掻き消したクラーニャがこちらを見つめる。
「いや……」
 大丈夫だと言うつもりが、口を突いて出たのは消極的な言葉。
「それは大丈夫ということでいいんですか?」
「……それより、お前は早くアリエスのところに行ってやった方が」
「ああ。やっぱりそうなんだ」
「え?」
 嫌な予感がした。恨みを湛えた彼の目が私を射抜く。
「本当はアリエスと僕を引き合わせたくないんでしょう?」
「なんの話……」
「好きなんでしょう?」
 真っ直ぐに見つめられた途端、いよいよ頭が割れそうなほど痛くなる。
「どうしました? ほら、何とか言ったらどうですか?」
「……っ」
 ぐるぐるとぐらぐらと。湧き上がる数多の感情と痛み。歪み出した視界を閉ざし、頭を押さえて一歩後ろに下がったその時。怪我をした足が石を踏み、バランスを崩した体があっけなく傾く。
「あ……」
 ざまあないな。
「ざまあないね」
 冷たい雨音と共に耳朶に触れる彼の声。それに対して私は何を言うでもなく、あっさりと意識を手放した。

 目を覚ますと、洞窟らしき場所に横たわっていた。
 先ほどまで鳴っていた雷はいつの間にか止み、雨も小降りになっていた。
「ん……」
 気怠さを振り払い、頭に乗せられたハンカチを取り、起き上がる。
「あ、気がつきました? 騎士長さん」
「……」
 クラーニャの白々しい笑顔を見て、記憶が蘇る。
「どうやら天邪鬼草と一緒に感冒花の花粉も吸い込んだらしいですね」
 ああ、なるほど。そう勘違いするか。
 天邪鬼草には真実花のような風邪に似た副作用はない。が、言われてみれば、あの場所には感冒花もあった。つまり、彼がこの症状をその二つのせいだと決めつけてしまっても仕方のないこと。これで、私はただの風邪ひき天邪鬼ってわけだ。
「クラーニャ、その……」
「ああ、まだ動いちゃだめですよ。足も怪我してるんですから」
 言われてから己の足首を見ると、怪我がきちんと治療されていた。それに、頭痛も大分治まっている。
「さっきよりは気分が良くなったでしょう?」
「どうして……」
 どうして彼が私を看病してくれているのだろうか。
 私は彼に対して良い態度を取っていなかったし、彼が私のような人間に情けを掛けるとは思えない。
「質問、いいですか?」
「……」
 私の手からハンカチを取った彼の言葉に身構える。もし、もし私の気持ちが彼にバレているのだとすれば、私は……。
「いやね。前にこんな噂を聞きましてね。……貴方とアリエスがデキてる、って本当なんですか?」
「は?」
 突拍子のない言葉に、力が抜ける。噂ってなんだ? どうして私とアリエスが……? アリエスは確かに可愛いが……。さほど接点があるわけでもないし……。
「いい機会なんでね、確かめとかなきゃって」
 なるほど。だから甲斐甲斐しく看病をしてくれたわけか。だが。
「そんな噂、根も葉もない」
「それじゃあ貴方とアリエスは何もないと?」
「当たり前だ。全く何かと思えばそんなくだらない事を。気が済んだらさっさと……」
「なるほど、やっぱり。煙のないところに噂は立ちませんからねぇ」
「だから、違うって言って……」
「僕は、今の貴方が天邪鬼草を吸っていること知ってるんですが?」
「あ……」
 彼の勘違いに口を押えるが、彼の瞳は嗜虐的な光を帯びる。
「どうやら、もっと口を滑らせてもらわないといけないみたいだ」
 そう言って彼はおもむろに鞄から小瓶を取り出し、ハンカチに染み込ませる。良からぬ気配を感じ取り、彼の手を避けようとしたが。
「っ……」
 未だ体の不調が抜けきらない腕では彼を払いきれず、そのままハンカチを口に押し当てられる。
「んっ、んん……!」
 ハンカチからは独特の甘ったるい匂いがして、頭がじんわりと痺れてゆく。立ち上がりかけた足も力を失い力なく座り込む。
「ふふ、効いてきましたね」
「これ、何の……」
「何だと思います?」
「う、何か、喉が……」
 熱い。込み上げてくる熱全てを吐き出したくなるような……。
「それね、饒舌花を調合した薬なんです」
「饒舌花って……」
 嗅いだ者を暫く饒舌にするという厄介な花。そんなものを、今嗅いだら、私は……。
「ああ、ダメですよ。我慢すると体に障ります」
 今にも本音を吐き出してしまいそうになる口を押さえる。が、すぐに手首を取られ口から引き剥がされる。
「あ、ああ……」
「ふふ、喋りたくて仕方がないでしょう? いいですよ。それじゃあ改めて質問しましょう。貴方はアリエスの事が好きなんですか?」
「わ、わた、しは……」
 喉にせり上がる熱を必死で抑え込む。が。
「ほら、我慢しないで?」
「っ……。わ、私は、アリエスを、好きでは、ない……」
 耳朶を擽る甘い囁きに、唇を震わせながらも本音を零してしまう。
「あっはは。やっぱりだ。貴方はアリエスが好き! ああ、いい歳した大人のくせに!」
「っ、好きじゃないって言って……!」
「言ってるようなものですよ。貴方は天邪鬼草を吸ったんですから」
「私が吸ったのは天邪鬼草じゃない!」
「それも嘘?」
「嘘じゃ、ない……」
「天邪鬼」
「違う! 真実だ! 私は、真実花を吸ったからこの通り、真実しか話せなくてっ……」
「アリエスのどんなとこが好きなんですか?」
「違う、好きじゃない!」
「僕からアリエスを奪って楽しい?」
「違う……。そんなこと、そんな、私は……」
「そんなに僕らが羨ましかった?」
「う……」
 羨ましかった。少年少女らしく楽しそうに仲睦まじく話す彼らが。……彼に愛される彼女が。でも、私は……。
「邪魔する気なんて、ない……。本当だ。本心なんだ……。私は……。うう、も、許してくれ……」
 熱い。熱くてたまらない。喉が、焼けるように熱くて。吐き出したい。でも、飲み込まなくては。ずっと、そうしてきたから。だって、私は……。
「サフィル」
「っは……」
 ぼうっとする頭で最後の理性にしがみつきながら、彼を見つめる。駄目だ。彼の幸せに、私の意見など不要だ。私は狂っているんだ。どうしてなのかはわからない。だけど、この気持ちは伝えてはいけないもので……。
「言って?」
「あ……、やめ……」
 つつ、と彼の指が私の唇をなぞり、発言を促す。
「あ、ああ……。わ、たしは……、好、き……」
「好き?」
「っ、好き、だ……。私はッ、羨ましかったんだ……! ずっと、ずっと……!」
「それは、僕への嫉妬?」
「っ、違う、違うんだよ……。そうだったら、まだ、良かった……。だけど……」
「うん」
「浅ましく、こんな、こんなにも醜い嫉妬を……! 私はただ……、君を、遠くから見つめるだけで、良かったんだ……。なのにッ……」
「止めないで。全部吐き出して?」
 頬を優しく包まれ、余った親指で噛みしめたばかりの唇をなぞられる。
「あ、ああ……。私、は、クラーニャ、が……」
「言って? サフィル」
「う、やめろ……。そんなこと、言うな……。言いたく、なるっ。とめ、られな……」
「言っていいんですよ。サフィル。ほら、素直に全部吐き出したいでしょう?」
「あ、でもっ……」
「大丈夫。貴方は今、天邪鬼草を嗅いでいるんですから」
 ああ。そうだ。そうだった。それならきっと大丈夫だ。勘違いしている彼に私の本心はわからない。
「でも……」
 でも。私自身はどうだろうか。これ以上は、自分の気持ちを誤魔化せなくなってしまうのではないだろうか……?
「言え」
「い、やだ……」
 尚も抵抗する私に彼が苛立ったように言葉をぶつける。だが、私は間違えてはいけない。私は気づいてはいけない。彼は生徒で、私は大人で。だから、私のこんな気持ちは間違いで……。
「仕方ないですね」
「な、なに、す……、ッ!」
 喉を押さえて座り込んだ私の口に、容赦なくハンカチが押し当てられる。
「あ、熱い……」
 喉が。頭が。胸が。熱くて、全部、溶ける……。
「っ、たし、は……、っき、っあ……」
「サフィル」
「う、あ……。好き、なんだ……。お前のことが、ううっ、クラーニャが、好きで、好きで、どうしようもないくらい、好きで……。ひどく、愛、してるんだ……」
 ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。止めようと思っても、止まらない。涙も、言葉も、熱も。全部が馬鹿になって……。
「っ、こんなの、おかしいのにっ……。もう、止められなくてっ……。アリエスとのこと、応援したいのにっ、上手くできなくてっ……。ううっ、こんな、こんな……。だって、今までっ、恋なんてしたことなかった……、からっ、こんなに苦しいんだって知らなくてっ、痛い、胸が痛い……。苦しい、苦しいんだよ、クラーニャ……。君のことを考えるだけでっ、見つめるだけでっ、も、どうにかなりそうなくらいにっ……」
「ちょ、そんな泣かないでくださいよ」
「お願い、嫌わないでくれ……。お前に、嫌われるんだと思うと、すごく、苦しくてっ、涙、止めらんな、っ……」
「は~。なんでそんなに可愛いこと言えるんですか、ったく……」
 クラーニャの腕が私を包み込む。抱きしめられているんだと気づいたときには、私の意識は既に消えかかっていた。
「っ、クラーニャ、好き、だ……。君が私のことを好きではないことぐらい、知ってる。けど、もう、いい。私は、アリエスと君の恋路を、邪魔などしないから……。だから、私の言葉は、忘れてほしい……。どうか……」
「馬鹿ですね……」
 複雑な表情で呟いた彼の手を押しのけようとするが、上手くいかない。それどころか、視界がぐらりと傾いて……。
「悪い、もう、なんか、なに喋ってんのか、よく、わかんな……」
「サフィル!」
「ああ、クラーニャ、好き、だ……」
 うわ言のように呟いた言葉が、洞窟に響く。それは案の定、呪いのように私の心に浸透していった。


「ん……」
 頭が痛い。それに、目がすごく腫れぼったい。喉も渇いてるし。ここは一体どこだ?
「あ、サフィル。やっと起きた」
「クラーニャ……? ここ、どこだ……?」
「ああ、ここは僕の部屋ですよ。安心してください。それにしてもその顔。やっぱり覚えてないんですね、昨日のこと」
「昨日……?」
 思い出そうとするが、途端に頭が痛くなる。
「なんだ、自己防衛働いちゃったかな。薬盛り過ぎちゃったしなぁ」
「?」
「すみません。昨日はやりすぎました」
「は?」
「僕はただ確かめたかっただけなんですよ。僕の研究成果を」
「何?」
「惚れ薬ですよ」
「惚れ……?」
 どくり。心臓が嫌な音を立てて私を揺さぶる。
「今まで何人もの研究者が開発断念してきたそれを僕ならばと着手したはいいけど、実験台がいなくて。それで、丁度良く学園に現れた、恋愛なんて興味なさそうな貴方に目を付けたってわけです」
「実験台って……」
 まさか、そんな薬ごときに、この私が踊らされていたとでも言うのか……?
「だけど、貴方がこんなにも可愛くて愛おしいなんて。聞いてないです。知らなかった」
「かわ……?」
 クラーニャの手が頬に触れ、優しく撫でる。その心地よさに思わず身を委ねてしまいそうになるが、これも薬のせいだと思うと何だか息苦しい。
「僕はね、人一倍探究心が強いんですよ。だから、貴方のことをもっと知りたい」
「待て。勝手にそんな実験をされては困る。今すぐに解いてくれ。私は君に構っている時間など……」
「あれ。もしかして、まだ継続してます?」
「え?」
 眉を顰めたクラーニャの言葉に動きを止める。
「昨日まとめて解毒しといたんですけど……」
「え……?」
 まさか。それじゃあ、この気持ちは……。
「まさか本当に僕のことを好きになっちゃいました?」
 クラーニャの揶揄うような声に、今度は私が眉を顰める。
「……クラーニャ。君は、私にいつ惚れ薬を盛った?」
「いつって……。貴方に会って、一ヶ月くらい経った頃でしょうか。ほら、僕が貴方にお茶を出したことがあったでしょう? その時ですよ」
「ああ、なるほど。それじゃあ駄目だ」
「駄目? 一体どういう意味……」
「簡単なことだ。私は、君に薬を盛られる前から、君に恋をしていたんだよ」
「は?」
 ため息交じりの告白に、クラーニャが間の抜けた顔で私を見つめる。
 そう。簡単なことなのだ。私はクラーニャと出会ったときから、彼に惹かれていたのだ。
「あ……。今のは、忘れてくれ」
「いや、何なんですかそれ……。本当に薬切れてないとか?」
「や、多分薬は切れてる。けど、言いたくなってしまったから」
「だから、それって効果が切れてないからじゃ……」
「っ……。そういうことに、しておいてくれ」
 軽率に口走ってしまったことを後悔しつつ、クラーニャから目を逸らす。
「は? 何ですかそれ。てか、じゃあ僕の実験、思いっきり失敗してるじゃないですか。最初っからとか……」
「悪い」
「……どうして僕なんかを?」
「君は私を救ってくれたんだ」
「え?」
「正確には君の開発した薬が、だ。私は先の戦いで、生死を彷徨う程の大怪我を負った。本来ならば死んで当たり前の傷だったんだ。だが、私は死ななかった。他でもない、君が最近開発したばかりの薬により、私は一命を取り留めたんだ」
「僕の薬が……?」
「ああ。あの薬、君にとってはただの副産物に過ぎなかったのかもしれない。が、私にとっては幸いで。私にとっての君は、所謂命の恩人なんだ」
 クラーニャは少し前に素晴らしい傷薬を発明していた。それは彼が研究している薬の副産物だと聞いてはいたが、確かに私の命はそれによって救われたのだ。感情の薄い私でも、こればかりは特別な念を抱かないわけにはいられなかった。
「だからって、惚れるとか……」
「私だって、おかしいとは思うさ。でも、自分の命を救ってくれた少年が学園にいると知って。どうしても目に焼き付いてしまって。それで……」
「サフィラ……」
「勿論、君にはアリエラがいることぐらいわかっている。邪魔する気などどこにもない」
 あんなに可憐な少女と目の前の少年との間に割って入るほど、私は愚かではない。というか、そもそも私はこの気持ちを口にする気もなかったというのに……。
「あ~、いや。悪いんだけど。僕、アリエラのことは何とも思ってないっていうか……」
「は?」
 頬を掻きながら申し訳なさそうに呟くクラーニャを真顔で見つめる。
 この期に及んでこの少年は私に気を遣っているつもりなのだろうか?
「クラーニャ、私は君たちが仲睦まじいことを知っているんだが?」
 前にも言ったが、彼らは皆が認める恋仲だ。それは誤魔化しようのない事実で……。
「聞いてください。それもただの実験だったんです。貴方だけを被検体にするわけにはいかないから、僕自身も薬を飲んだわけで」
「君がアリエラに惚れていたのは薬のせいだと?」
「そういうこと。今は僕も解毒剤を飲んだから、きれいさっぱりそんな気持ちは吹き飛んだんだけど。信じられませんか?」
「信じられる訳がない……」
「これでも、ですか?」
「っ……!」
 ふいに唇を奪われ、のけ反った拍子に頭を壁に思い切りぶつける。
「ぷ。はは! 騎士長さんらしくないね」
「い、今の私はもう騎士長ではないんだ! それに、私はこういうのには慣れていなくてだな……」
「は~。可愛い。やっぱり僕、サフィラさんのことが好きみたいだ」
「なんだよ、それ……」
 ふいに自然に微笑んだ彼の言葉は、否応なしに私の頬を火照らせてゆく。
「確かにアリエラとは一応恋仲になりましたけど、僕は根っから研究熱心なんで、大してアリエラに構ってる暇はなかったんです」
「……」
 何て言っていいのか分からず、目を泳がせて押し黙る。嬉しく思ってしまう私は愚かなのだろう。
「でも、僕は今、貴方に構いたい。貴方だけは特別なんです。貴方をずっと側に置いておきたいし、貴方にもっと触れたい」
「いや、それは……」
 気のせいだ。間違っている。正しいことではない。そう思うのに、動機が酷くて口が上手く動かない。
「僕は貴方に負けました。貴方の気持ちに応えたい。僕は貴方を愛したい」
「いや、そんな、でも……」
「駄目、ですか?」
「それは……。嬉しい、けど……」
 手を取り、真っすぐに見つめてくるクラーニャに色んな感情を抱きながらも言葉を紡ぐ。
 嬉しい。言葉にすると、なんて愚かなことだろう。私は、確かに喜んでいるのだ。
「ふ。意外と素直なんですね」
「はあ。真実花で馬鹿になったのかも……」
 観念した私は、再びベッドに潜りこむ。しばらくは彼の顔をまともに見れないかもしれない。
「サフィラさん。僕ね、その傷、完全に治す薬を開発してみせますから。貴方にできる限りのことをしますから。だから、どうか僕から逃げないでくださいね?」
 そっぽを向いて目を瞑る私の髪に、クラーニャが口づけを落とす。
「馬鹿だな。私はそんな損得勘定でお前に恋をしたんじゃない。君こそ、取り消すなら今の内だ」
「言ったでしょ。僕は研究熱心なんです。僕自身に芽生えた恋、徹底的に味わい尽くしてみせますから。覚悟してくださいね」
「っ……」
 覆いかぶさるようにして私を抱きしめたクラーニャが、容赦なく口づけを落とす。そこからのことは、想像にお任せする。



 それから。私は相も変わらず学園の手伝いをしている。クラーニャは今まで以上に研究に取り組んでいるようだが、私と会う時間だけはばっちり確保してくれるからむず痒い。クラーニャとアリエラの交際は、あっさりと終わった。彼らを知る誰もが驚いたが、どうやらアリエラはクラーニャが薬の効果で自分に惚れているということを知っていたらしい。なんでも、ウサギンちゃんが教えてくれたそうだ。確かに、召喚獣は鼻が利くからあながち嘘でもなさそうだ。
「そもそも、ワタシはクラーニャのこと、何とも思ってません。だから、サフィラさんが気にすることは何にもないんですよ?」
「え……。じゃあ、どうして君はクラーニャと付き合うことを承諾したんだ?」
「だって。クラーニャが言ったんです。僕と付き合ってくれたら、ウサギンちゃんのために開発したウサタビモドキエキスをくれるって! そんなの、欲しいに決まってます! ね、ウサギンちゃん」
『んぎゅ!』
「ウサタビモドキエキス……」
 少女の目を見て、これも嘘ではないことを悟る。どうやら、彼女は付き合うことと引き換えに貰ったウサタビモドキエキスを独自に研究し、自分で作り上げるまで至ったので、クラーニャのことはお役御免だと思っていたらしい。前々から思っていたことだが、この学園の生徒は興味のある分野への執着がどうも強すぎる傾向にあるらしい。
「でもワタシ、二人のコト、応援してます! だって、サフィラさんはウサギンちゃんの恩人ですから!」
「……ありがとう」
 屈託なく笑う少女に、罪悪感が少し晴れる。勿論、この罪悪感を完全に晴らすことはできないだろうが……。
『あら、アタシだって二人のコトを応援してますよ?』
「えっ」
 どこからともなく現れた学園長が、全てを見透かす瞳を向けて妖艶に微笑む。
『なぁに? アタシが応援しちゃおかしいかしら?』
「いや、その。だって……。生徒に手を出すのはいかがなものかと……」
『ほほ。随分古い考え方をするのねサフィラ。アタシは別にそういう冒険も悪くはないと思います。ウチの子たちは自分の行動に責任が持てる心の強い子ばかりですからね。それに、手を出しているのはクラーニャの方でしょ? セーフよセーフ!』
「良かったですね、サフィラさん! 学園長公認ですよ!」『きゅ~』
「えっ。いや。うん……? いや、でも。他の生徒に示しがつかないというか……」
「ああ。多分それ、取り越し苦労かと。だって、学園のみんな、とっくに知ってますから。二人のコト」『んきゅ』
「え……?」
『なんせ、アタシもクラーニャも好き放題言いふらしてますから。心配ご無用ってね!』
 ほほほ、と口に手を当てて笑う学園長に思考が停止する。
「というか、あれだけクラーニャの研究室で過ごしてたら、言われなくてもわかると思いますよ。ね、ウサギンちゃん」『きゅ』
「確かに。牽制する意味なかったかもね」
「うわっ」
 後ろからいきなり抱き着かれ、声を上げる。そこに立っていたのは他でもない、クラーニャその人。
「うんうん。この“一定時間気配を消す薬”は成功だね。サフィラさんの驚く声も可愛かった」
「クラーニャ、君ね……」
「ああ、そんなに怒らないでくださいよ。これ、ほらサフィラさんの傷を治すための薬を作るためのプロセスの一つであってですね……」
「別に、そんな薬作ってくれなくたって、私は逃げないっていってるだろ」
「く~。稀に見るデレをごちそうさまです」
『ほんと、サフィラがここまで柔らかくなるとはね~』
「お幸せに、だねウサギンちゃん」『んっきゅ!』
 どうあれ、私は彼に救われて、人生で初めての恋をして。幸せ過ぎる程幸せだ。
「サフィラさん。続きは研究室で話しましょう?」
「……ああ」
 荒れたその手を取り、引かれるままに歩き出す。指を絡めて手の甲を引き寄せ、口づけを落とすと独特な薬草の匂いが香る。その匂いさえ段々と好きになってきている自分に苦笑していると、クラーニャが勘弁してくれ、と足を速める。たったそれだけで、心臓がうるさいほど主張し始める。勘弁してくれ、はこっちの台詞だ。
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