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タコパも終わり。
お風呂も入ってあとは寝るだけとなった。
着替えは佐藤のスウェットを借りた。
ぶかぶかのズボンを引きずって歩く私を見て、
佐藤が「脚、短っ」と言って笑いだした。
私の脚が短いんじゃなくて、あんたの脚が長いんだよ。
軽く酔った佐藤が、私を指さしてげらげら笑う。
そんな姿を見ていたら、ちょっと緊張してたのが馬鹿らしくなった。
へいへい、どうせ鈴木ですよ。
不貞腐れてソファでゴロゴロしていたら、
「なぁ、とりあえず、ベッド一緒でいいか?練習もかねて」
と、佐藤がそんなことを言い出した。
「なにそれ、練習いるの?」
添い寝の練習とか聞いたことないわ。
聞くと佐藤は首の後ろを掻いた。
「正直いうと布団出すのめんどい。付き合うんだからいいだろっ」
確かに布団の出し入れはめんどくさい。
理解できてしまったので、私は頷く他なかった。
了承したはいいが、ベッドはシングルベッド。
思ったより狭いし、妙に布団の中が温かい。
佐藤の指が微かに太ももに触れているし、すぐ傍で息を吸う音も聞こえる。
なんかちょっと緊張してきたかも。
頑張って意識を散らそうとしていると、「なあ」と声をかけられた。
心臓がひやりとした。
「な、なに?」
「……腕枕、するか?」
「は?え、いらない……」
言った後にハッとした。
今の反応はさすがに可愛げがない。
「いや、あの、腕枕って結構高さあるからさ。朝起きたら首が痛くなるんだよね」
と言い訳めいたことを言ったけれど、佐藤は「確かに」と納得した。
「男側からしても、朝起きたら手が取れたかと思うくらい感覚なくなるからなあ。いいことないよな、腕枕って……」
そうなんだ。男の人も大変だ。
「じゃぁ余計なくていいよ」と言うと、佐藤がわざわざリビングにクッションを取りに行ってくれた。
ちょっと高いけど枕が無いよりマシだ。
隣に佐藤が戻ってきて、布団を引き上げる。
ふわりと佐藤の匂いがした。
そういや、袖口からも佐藤の匂いがした。
お日様の匂いのような、赤ちゃんの匂いのような。すんすんと匂いを嗅ぐ。服も布団も、全部佐藤の匂いがした。
「さっきから、すんすんうるさい。犬かよ」
「どこもかしこも佐藤臭くって」
「は?加齢臭とかいうなよ?」
「加齢臭?ってどんなん?」
「逆にどんな匂いがするんだよ」
「あー赤ちゃんの匂い?」
「赤ちゃん?ミルクくさいってこと?」
佐藤が嫌そうな声を出した。薄暗くて佐藤の顔は見えないけど、多分顔をしかめているに違いない。
「微妙に違うけど、おじさん臭いよりいいでしょ?」
「全然嬉しくねぇ」
「いいじゃん。佐藤臭いの嫌いじゃないよ」
「くさいって付けんな」
はいはい、もう耳元でうるさいな。
私は横向きになって、佐藤に背を向けた。すると、首の後ろに、ひんやりとした何かが触れた。
「シャンプーとボディソープ、ちょっと甘い匂いがする。これが鈴木臭いか」
佐藤の低い声が首元で響いた。
「はやく寝なさい」
首元にいる佐藤を手で追い払った。
びっくりした。
私は心臓を抑えた。
背中に触れる気配が気になる。
相手は佐藤。佐藤。
私は目を瞑る。
今日は寝れないかもしれない、なんて思ったけれど、隣で聞こえてきた寝息と、佐藤の匂いが妙に心地よくて。
私の意識はあっさり闇の中に落ちた。
次に気づいたのは朝。
いつの間にか部屋の中は朝日で明るくなっていた。
ベッドの隣に佐藤はいない。
リビングへ向かうと、佐藤は何やら身体を捻っていた。
「なにやってんの?」
「柔軟?ってお前頭すげえな」
指をさされて頭を触る。重力に逆らって髪の毛がはね散らかしていた。佐藤がスマホを取り出して、写真を撮ろうとするので、ローキックをかましてやった。
「で、なんで柔軟してんの?」
「ベッド狭くて……身体痛いんだよ」
佐藤が呻いた。
確かに、昨日は狭かった。シングルベッドに大人二人はやはり無理がある。佐藤は身体がでっかいから寝返りもろくに出来なかったに違いない。
「ベッド買い替えるか。キングサイズとか」
「どこの豪邸だよ。部屋に入らないでしょ」
「じゃあ、部屋ごと替えるか」
「は? 引っ越すの?」
「どうせ結婚したら部屋数が欲しくなるだろ。なら今のうちに探したほうが楽じゃね?」
言われてみると、そんな気もしてきた。
「家具とか食器も、この際まとめて買い替えるか?」
「なんでそんな急に」
「変化あったほうが、鈴木も実感が湧くだろ」
「まぁないよりは湧くかな」
「じゃ、買い物行くか」
「今日?」
本日は土曜日。会社も休みだ。
「なんか予定あったか」
「ないけどさー……」
どんどん進む話についていけない。ちょっと息継ぎが欲しかった。
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