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不信感しかない
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アレクシス「2人とも、立場をお考え下さい。妹の部屋の前で言い争えば、まるで彼女を取り合う男の様に見えます」
アラン「そんなことはないと思うよ。私はただ彼女にハンカチを返してもらいに行っただけだからね」
カーライル「同感だ。俺もただ用があって行っただけだ」
アランとカーライルはアレクシスからの注意にそんな馬鹿なと笑う。
レティシアーナ「……。」
3人の話を聞いて居ると、周囲からの評価を意識した振る舞いをすることを考えられて居ない王太子2人に、それを諫める兄という関係に同情する。自分と兄を困らせる2人に対しては不満しかない。どうして誰もこの2人を止めないのだろうか。
第一、何故2人は家に来る時に側近や護衛を連れて居ないのだろうか。それだけの信頼があると言えば聞こえは良いが、何か有ればランドール家の信用問題となる。
友人だと言うならば、それなりに兄を思って振る舞って欲しい。
毎回諫める兄を生意気だと言う大人達も出て来るだろう…いや、もしかすると自分が知らないだけで、既に兄は2人に振り回され、大人達から酷い事を言われ、心がお疲れなのではとレティシアーナは考える。
だから…私に素っ気なかったのかしら。
兄妹仲が良ければ、私まで殿下方と関わる機会が増えてランドール家の兄妹が殿下方を諫めていると話題になってしまう。諫める役目を任されているわけでもないのに世話を焼けば、出る杭は打たれる。
アラン「そう思わないかい、レティシアーナ嬢」
レティシアーナ「…え、」
考え事をして居たレティシアーナは、突然アランに意見を求められ焦った。
殿下方の友人でもなく、何の称号もないただの公爵令嬢である自分は王太子達に自分から話しかけられる立場ではない。向こうから発言を求められない限りは黙って居るしかないので「休む」という口実を助けに考え事をして居た。
どうしましょう、何も聞いて居なかったわ…。
アラン、カーライル、アレクシス3人の視線がレティシアーナに集まる。その視線にレティシアーナは「話を聞いて居なかったのか」と責められて居る様に感じた。
実際には、アランとカーライルは「自分達の話を聞いて居なかったのか」と不満になったが、アレクシスは妹の体調を気にした心配して視線を向けただけであった。
アレクシス「レティシアーナ、大丈夫か。体調が悪いのならば、無理をすることはない…ですよね、殿下方」
アラン「そうだね。レティシアーナ嬢、ハンカチは後日また伺うからその時に君から直接もらえるかな」
カーライル「俺は今日、お前とも話にしたくて来たんだがな。体調が悪い…というよりは、何か他の事を考えていて上の空だった様にも見えたがな」
アレクシスの妹を庇う言葉に今回もアランは素直に従った。しかし、カーライルはまるでレティシアーナのことを理解して居るように口端を少し上げて言い当てた。言い当てられたレティシアーナはカーライルの視線から目を逸らす。
アラン「ライル、レティシアーナ嬢は体調が悪いんだ。君が雑に連れて来たせいでね。怖がらせちゃいけないよ」
アランは、レティシアーナの方をチラリと見ながら、俯いた彼女を庇う様にカーライルを注意する。
ピンチの時に助けてもらうと女性はその男性を意識する。恋愛指南の鉄板だ、美幸のために勉強をしたが、こうやって恋愛感情を利用して操る予定の相手にも使えるのは無駄にならなくて良いことだ。
カーライル「言いたいことがあるならば、言えば良い。発言を許可する」
レティシアーナ「ありがとうございます…。では、何故お二方は庭園に戻ると仰って居ましたのに、私が部屋から出て階段を降りて居る際、後ろに居らっしゃったのでしょうか…」
考えて居たこととは別だが、こちらも気になって居たこと。声をかけられても出ていかなかったレティシアーナが、2人が居なくなった途端に部屋から出ると、居ないはずのアランとカーライルが現れた。
考えてみれば、ワザと居なくなったフリをしてレティシアーナを部屋から出て来させた。そして、出て来たところを狙って逃げられないように庭園まで連れて来る計画的な行動だったとも言える。
アラン「ランドール家の造りを全て知っているわけでは無いからね、少し迷ってしまったんだ」
カーライル「おい…、ただ景色を眺めて居ただけだろう」
レティシアーナ「……。」
迷ったと言われたが、庭園とレティシアーナの部屋を行き来するならば案内のために必ず使用人が付き添うはず。それに、レティシアーナの部屋から庭園までは、右に歩いて階段が見えたら降りて、降り切ったら再度右に曲がり、庭園へと続く扉まで歩くだけ。いくら屋敷がそれなりに広いとはいえ、アランとカーライルが覚えられないはずがない。
2人の言い訳が違って居ることも、カーライルが焦った様子で訂正ししたことも、アランの嘘を裏付ける。
微笑みながら優しい声で、顔色一つ変えず自然に嘘を吐く人間は信用してはならない。階段から足を踏み外しそうになったのは、タイミングを狙って…、担がれて居る時にも後ろから付いて来て居たはずだから降ろすタイミングも狙ったのではないかという考えが出て来た。
後ろから付いて来ながら…担がれて居る私を笑って楽しんで居たのかしら、最低ね。
この日、レティシアーナはアランに対して警戒を強め、カーライルには隙を見せないよう注意することを今後の課題として認識した。
3人は、レティシアーナとの距離を縮めるはずだったが、この会話の後、レティシアーナがアレクシスに体調が悪いからと部屋に退がったため、今回も失敗に終わった。
ランドール兄妹、アレクシスとレティシアーナの関係だけは良いものへと近付いた。
アラン「そんなことはないと思うよ。私はただ彼女にハンカチを返してもらいに行っただけだからね」
カーライル「同感だ。俺もただ用があって行っただけだ」
アランとカーライルはアレクシスからの注意にそんな馬鹿なと笑う。
レティシアーナ「……。」
3人の話を聞いて居ると、周囲からの評価を意識した振る舞いをすることを考えられて居ない王太子2人に、それを諫める兄という関係に同情する。自分と兄を困らせる2人に対しては不満しかない。どうして誰もこの2人を止めないのだろうか。
第一、何故2人は家に来る時に側近や護衛を連れて居ないのだろうか。それだけの信頼があると言えば聞こえは良いが、何か有ればランドール家の信用問題となる。
友人だと言うならば、それなりに兄を思って振る舞って欲しい。
毎回諫める兄を生意気だと言う大人達も出て来るだろう…いや、もしかすると自分が知らないだけで、既に兄は2人に振り回され、大人達から酷い事を言われ、心がお疲れなのではとレティシアーナは考える。
だから…私に素っ気なかったのかしら。
兄妹仲が良ければ、私まで殿下方と関わる機会が増えてランドール家の兄妹が殿下方を諫めていると話題になってしまう。諫める役目を任されているわけでもないのに世話を焼けば、出る杭は打たれる。
アラン「そう思わないかい、レティシアーナ嬢」
レティシアーナ「…え、」
考え事をして居たレティシアーナは、突然アランに意見を求められ焦った。
殿下方の友人でもなく、何の称号もないただの公爵令嬢である自分は王太子達に自分から話しかけられる立場ではない。向こうから発言を求められない限りは黙って居るしかないので「休む」という口実を助けに考え事をして居た。
どうしましょう、何も聞いて居なかったわ…。
アラン、カーライル、アレクシス3人の視線がレティシアーナに集まる。その視線にレティシアーナは「話を聞いて居なかったのか」と責められて居る様に感じた。
実際には、アランとカーライルは「自分達の話を聞いて居なかったのか」と不満になったが、アレクシスは妹の体調を気にした心配して視線を向けただけであった。
アレクシス「レティシアーナ、大丈夫か。体調が悪いのならば、無理をすることはない…ですよね、殿下方」
アラン「そうだね。レティシアーナ嬢、ハンカチは後日また伺うからその時に君から直接もらえるかな」
カーライル「俺は今日、お前とも話にしたくて来たんだがな。体調が悪い…というよりは、何か他の事を考えていて上の空だった様にも見えたがな」
アレクシスの妹を庇う言葉に今回もアランは素直に従った。しかし、カーライルはまるでレティシアーナのことを理解して居るように口端を少し上げて言い当てた。言い当てられたレティシアーナはカーライルの視線から目を逸らす。
アラン「ライル、レティシアーナ嬢は体調が悪いんだ。君が雑に連れて来たせいでね。怖がらせちゃいけないよ」
アランは、レティシアーナの方をチラリと見ながら、俯いた彼女を庇う様にカーライルを注意する。
ピンチの時に助けてもらうと女性はその男性を意識する。恋愛指南の鉄板だ、美幸のために勉強をしたが、こうやって恋愛感情を利用して操る予定の相手にも使えるのは無駄にならなくて良いことだ。
カーライル「言いたいことがあるならば、言えば良い。発言を許可する」
レティシアーナ「ありがとうございます…。では、何故お二方は庭園に戻ると仰って居ましたのに、私が部屋から出て階段を降りて居る際、後ろに居らっしゃったのでしょうか…」
考えて居たこととは別だが、こちらも気になって居たこと。声をかけられても出ていかなかったレティシアーナが、2人が居なくなった途端に部屋から出ると、居ないはずのアランとカーライルが現れた。
考えてみれば、ワザと居なくなったフリをしてレティシアーナを部屋から出て来させた。そして、出て来たところを狙って逃げられないように庭園まで連れて来る計画的な行動だったとも言える。
アラン「ランドール家の造りを全て知っているわけでは無いからね、少し迷ってしまったんだ」
カーライル「おい…、ただ景色を眺めて居ただけだろう」
レティシアーナ「……。」
迷ったと言われたが、庭園とレティシアーナの部屋を行き来するならば案内のために必ず使用人が付き添うはず。それに、レティシアーナの部屋から庭園までは、右に歩いて階段が見えたら降りて、降り切ったら再度右に曲がり、庭園へと続く扉まで歩くだけ。いくら屋敷がそれなりに広いとはいえ、アランとカーライルが覚えられないはずがない。
2人の言い訳が違って居ることも、カーライルが焦った様子で訂正ししたことも、アランの嘘を裏付ける。
微笑みながら優しい声で、顔色一つ変えず自然に嘘を吐く人間は信用してはならない。階段から足を踏み外しそうになったのは、タイミングを狙って…、担がれて居る時にも後ろから付いて来て居たはずだから降ろすタイミングも狙ったのではないかという考えが出て来た。
後ろから付いて来ながら…担がれて居る私を笑って楽しんで居たのかしら、最低ね。
この日、レティシアーナはアランに対して警戒を強め、カーライルには隙を見せないよう注意することを今後の課題として認識した。
3人は、レティシアーナとの距離を縮めるはずだったが、この会話の後、レティシアーナがアレクシスに体調が悪いからと部屋に退がったため、今回も失敗に終わった。
ランドール兄妹、アレクシスとレティシアーナの関係だけは良いものへと近付いた。
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