17 / 19
閑話
アティス・ノーデン
しおりを挟むアティス伯爵家にノーデンが誕生した日は、とても暖かく色とりどりの綺麗な花が咲き誇る麗らかな日だった。
「世界から祝福された子だ!」と、誰もが喜んだ。
ノーデンは二人の姉と共に、優しい両親の元すくすくと育った。
彼がたまにする悪戯さへも、皆が優しく見守っていた。
彼が眠る時も彼がぐずる時も、少し垂れたその目尻に母はキスをした。
「ノーディ、貴方は神に愛された子」と、優しく呟きながら。
彼の黄金色に輝く髪と碧い瞳は、幼い頃からその甘いマスクを際立たせていた。加えてその垂れた目尻は、愛くるしさを滲ませていた。
もちろん彼も自分の愛される容姿を自覚するのに、時間などかからなかった。
そして末子であることから、無自覚に愛される性格が備わっていた。
そんな彼は母に連れられて参加した簡単なお茶会で、忘れられない出会いを果たすことになる。
それが、ミューゼン・ルーベルトである。
五歳の彼にとってみれば、小高い丘の上にある小さな村が全てであった。
つまりそれは、伯爵家に生まれた男児である自分が一番だったのだ。
しかし、その考えは僅か五歳で崩れ落ちる。
「明日はルーベルト公爵夫人から誘って頂いた、大切なお茶会なのよ」
そんな風に言う母に対して、彼は不思議に感じた。
「何故ルーベルト公爵夫人に誘って頂くと、大切なお茶会になるの?」
この時は流石に、母親であるミシェル・アティスも顔を痙攣つらせた。
愛しい我が子とは言え、もう少し勉強をさせなくてはいけないと誓った日だった。
「公爵家と言うのは、私たち伯爵家よりも上流階級の方なのよ。同じだと思ってはいけないわ」
自分たちの上にいるのは、国王様たち王家の方以外にいないと信じていた彼は驚きを隠せなかった。
お父様は伯爵様と呼ばれているけど、公爵家はその上なのかと驚いた。
その日はいつも優しい執事から、爵位の意味を厳しく教えられた。それでも貴族である彼にとって、避けては通れない勉強である。
その中で教えられたルーベルト公爵は、彼が誰よりも興味を惹かれた。
この小さな村とは違い、大きな領地を与えられた公爵。五歳の彼にとって、惹かれるのは当然だった。
しかもルーベルト公爵には、彼と同じ歳の息子がいると聞いたから尚更だ。
「公爵の息子は公爵になるの?」
「左様でございます。ノーデン坊ちゃんがいずれ伯爵様になる様に、公爵様の御子息は公爵様になられます」
公爵様の息子ってどんな子なんだろう、彼は純粋に思っていた。
自分よりも偉い人になる子に対する、子供ながらの興味だった。
「公爵様の子とも、お茶会で会えるかな?」
「その予定と伺っております」
「友達になれるかな?」
子供が言った言葉と分かりながらも、爵位の差を物ともせずに言う彼に、執事が驚いたのは一瞬の事だった。
「そうなれますことを、私も願っております」
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる