だいすきなひと

高塚しをん

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#5

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沸き立つクラスメートたち。
「さよならー!」とか「また来てくださーい!」とか言う声が聞こえる。
「やばい、めっちゃカッコいい…」とかまで。

沙絵先輩が去った後、悪い予感が的中した。
席に戻ろうとした私のところにクラスメート数名が詰め寄る。

「ねぇねぇ、沙絵先輩と知り合い?」

「なんの繋がり?」

「仲いいの?」

「紹介して!」

いやいやいやいや。ほんと、マジでそんなんじゃないですから。

「ちょっと借り物してただけ。ほんとそんだけ」

「LINEとか知ってる?」

「知らない知らない」

とりあえずクラスメートたちを適当に流し、席についた。


あー怖い、女子。
こんな私も女子ではあるんだけど、なんだろう、人種の違いを感じると言うか。人にこんなにも興味を持てるのが女子だとしたら、私はもう男子ってことでいい。


「え、何…?」

席につくと、晴香が声を潜めて私に言った。
おい、お前もその類か。

「や、マジでなんもないんだよ」

「なんもない訳ないでしょーがよ」

「だからさ、昨日傘借りたんだよ。
んで、今朝傘立てに返しといた。
そしたら何故か教室まで来た」

「ちょ、端的すぎやしないか」

「長々とする話じゃない」

「ふーん。そうなんだ」

こんな瞬間は、何で私女子校に来てしまったのかなって、ちょっとウンザリする。
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