孤児が皇后陛下と呼ばれるまで

香月みまり

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1章

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「なんだ?櫛か?欲しいのか?」

買い物を終えて、古着屋を出ると、夕食の調達にはまだ少し早い時間だった。

小さな村育ちの苓はもちろんだが、周もこれほど大きな街を散策するのは初めてな様子で、二人でぶらぶらと露天をひやかしていると。
不意に女性の装飾品を取り扱う店の軒先が目に入った。


そこに並べられている、色とりどりの簪や紐飾りの中に、母が形見に残した櫛と同じようなデザインのものが並べられているのが目について、ついそちらに近づいてしまったのだ。

あまりにも吸い寄せられるように向かってしまったせいか、横を歩いていた周は、苓がなにか気に入ったものがあったのだろうかと勘違いしたらしい。

「違うの、母の形見の櫛があるのだけど、結構上等なものみたいなのだけど、いまいち価値がわからなくて。同じようなものがあれば、なんとなくの価値が分かるんじゃないかと思って」


そう言って、櫛の一つを手に取ると、母のものよりも随分軽くて、そして装飾もよく見ると飾り石の輝きはない。
値段を見れば、苓にとっては高いとも思えるが、一般的に男性が女性に贈るには妥当な値頃なのかもしれない。

しかしどうやら母の形見はこれよりも価値の高い物らしい。

ざっと見渡すが、この店にはこの値頃の商品しかないようだったので、櫛をもとの場所に戻して、店を離れる。

「母さんの形見って・・・例の項さんに見せれば良いって言われたやつか?」

後ろを追ってきた周に聞かれて、頷く。

「それよ。でもどうもあれよりは高いものみたいね。そんな高価なものをなぜ母が持ってたのか本当に謎だわ」

ただの小さな農村に身を寄せる農婦に過ぎなかった母は、いったいどんな秘密を持っているのだろうか。そしてなぜ遺言を残しておいて詳しい事は何一つとして教えてくれなかったのだろう。

「あの櫛の価値が分かれば、なんとなく予想がつくと思ったのだけど」

現段階ではお手上げだと、肩をすくめて見せると、周が眉間にしわを寄せる。

「なぁ苓?それ宿に戻ったら見せてもらえねぇか?」

「え?櫛?」

意外な申し出に、ぽかんとすると、「まあそうだよな」と苦笑した周が所在なさげに頭を掻いた。

「もしかしたら、分かるかもしれねぇ」

「は?」
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